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米培養肉Upside Foods、カリフォルニアに培養肉工場を開設

 

アメリカの培養肉企業Upside Foodsは、培養肉などさまざまな細胞農業製品を生産する施設が完成し、開設したことを発表した。

カリフォルニア州エメリービルに設置された工場は、年間約22トン(50000ポンド)の生産規模だが、今後は約180トン(40万ポンド)まで生産量を拡大する。

Upside Foodsが培養肉工場を開設、広さはコンビニ50店舗分

出典:Upside Foods

2015年に設立されたUpside Foods(元メンフィスミーツ)は、年末までにアメリカでの販売許可取得を目指している。現在は培養鶏肉の開発に焦点をあてているが、これまでに鶏肉、シーフード、鴨肉、ミートボールなどさまざまな製品開発に取り組んできた。

食肉加工大手タイソンフーズ、ソフトバンク、カーギルなど名だたる企業から出資を受け、これまでの調達総額は2億600万ドル(約233億円)となる。

カリフォルニア州の工場は「工学、生産、イノベーションセンター(Engineering, Production, and Innovation Center, EPIC)」という名称で、広さは53,000平方フィート(約4900㎡)。概ね、コンビニ50店舗分に相当する。

住宅、レストランが立ち並ぶ市街地に位置し、近隣の住民は培養肉がどのように生産されるかを直接見ることができる。

工場ではシーフード、家禽類などさまざまな種の培養肉を、動物から採取した細胞を培養して直接生産する。

出典:UPSIDE Foods

最初に市販化する商品は培養鶏肉となるが、Upside Foodsはこれまでに牛肉、鴨肉などほかの培養肉を開発している。同じ種の培養肉でも、ひき肉からブロック肉までさまざまな質感の食肉を生産する予定だという。この工場では新しい商品、生産プロセスの開発も手掛ける。

新工場開設に伴い、施設内のさまざまな機器、機能を管理・保守するためにエンジニア、専門家など新たに50名を雇用する必要があるという。

「2015年にUpside Foodsを設立したとき、当社は懐疑的な見方であふれる世界でただ1つの培養肉企業でした。(培養肉)生産を拡大するという夢について語った時、それはまさに夢でした。本日、その夢が現実になります。小さな細胞からこの工場までの道のりは信じられないものでした。私たちはまだ開始したばかりです」

(創業者・CEOのUma Valeti氏)

今後は年間約180トン(1日500kg)の培養肉を生産

出典:Upside Foods

この工場は、現時点では年間約22トン(50000ポンド)の生産量だが、最終的には年間約180トン(40万ポンド)、つまり1日500kgの生産量に拡大する予定

施設の中心には、肉を培養する巨大なバイオリアクターが立ち並ぶ培養室がある。バイオリアクターの周囲には細い銀色のパイプが迷路のように張り巡らされている。装置の状態を報告するための測定装置が従業員から見える位置に設置され、通路によっては作業スタッフは、側面と上部からバイオリアクターをモニタリングできるようになっている。

出典:Upside Foods

Upside Foodsの施設には、食肉生産装置のほか、従来の食肉処理や加工施設に共通する機能も備わっている。例えば、製品が安全であることを確認するための品質保証室や、当局スタッフがプロセスを監督するためのオフィスなどがある。試食のための近代的なキッチンや、従業員が利用するオフィスや会議室も併設されている。

2022年1月には一般消費者向けのツアーを実施する予定。

培養肉工場はアメリカ、イスラエル、カタール、シンガポール、ベルギーに

出典:Upside Foods

今回の新施設発表は、Upside Foodsによる培養肉の市販化に向けた動きの中で最新のニュースとなる。5月にはホールフーズCEOが出資に参加。9月にはサンフランシスコでレストランを経営するミシュラン星付きシェフとの提携を発表した。

今年、培養肉用の工場建設を新たに発表した企業はUpside Foodsだけではない。

世界で初めて培養肉をシンガポールで販売したイート・ジャストは9月、カタールに生産施設の建設を発表した。

出典:Upside Foods

イスラエルのFuture Meatは同国に1日に500kgを生産できる生産施設を建設、7月にはネスレと協業、最近ではイスラエルのアイザック・ヘルツォーク大統領が同社の培養肉を試食した。

培養肉企業として最初にナスダック上場を実現したイスラエルのMeaTechはベルギーに培養油脂の実証プラントを建設することを発表している。

培養魚を開発する香港のAvant Meatsは、来年シンガポールに実証プラントを建設する。

Upside Foodsは現在、規制当局の審査待ちの状態にある。年内にアメリカで培養鶏肉の販売を目指しているが、許認可を取得できるか否かにより、今後の動向が注目される。

 

参考記事

UPSIDE Foods Opens Cultivated Meat Engineering, Production, and Innovation Center (EPIC) as next step in commercialization journey

UPSIDE Foods’ New ‘EPIC’ Facility Can Make 400,000 Pounds of Cultivated Meat a Year

Upside Foods opens plant capable of making 50K pounds of cultivated meat a year

 

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アイキャッチ画像の出典:Upside Foods

 

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