アメリカの培養肉企業Upside Foods(アップサイド・フーズ)がシリーズCラウンドで業界史上最大となる4億ドル(約510億円)を調達した。
今回の大型資金調達は培養肉量産への道を開くもので、Upside Foodsの評価額は10億ドル以上となった。規制当局の承認を得られ次第、今年後半にアメリカで培養肉製品を販売する。
業界史上最大の資金調達で培養肉のスケールアップを前進
Upside Foodsは調達した資金で、年産数千万ポンドの培養肉生産工場を建設することを発表した。1000万ポンドは約4,500トンに換算されるため、年産4,500トン~40,000トン規模の生産施設になると推定される。
この工場ではひき肉からブロック肉まであらゆる種類の肉を生産できるが、最初は鶏肉に焦点をあてるという。また、調達した資金を使い、コスト削減と生産のスケールアップに重要な細胞用培地成分の安定したサプライチェーンを構築する。
Upside Foodsは昨年、イノベーションセンターを併設した培養肉生産施設EPICをオープンし、生産プロセスから動物成分を除去することに成功している。EPICは年産最大40万ポンドであることから、新工場はEPICの少なくとも25倍以上の規模となり、供給量の大幅な増大が見込める。
今回の大型資金調達により、培養肉のスケールアップに必要な生産体制、サプライチェーンの強化を図るほか、消費者への啓蒙活動、次世代培養肉の研究開発に対する投資、チーム拡充も優先事項として挙げている。
「歴史的な転換点に到達」
今回のラウンドはシンガポールの政府系ファンドテマセクと新規投資家のAbu Dhabi Growth Fundが主導した。
スイスの世界最大の香料メーカージボダンや資産運用会社ベイリー・ギフォードなどの新しい投資家に加え、カーギル、タイソン・フーズ、ビル・ゲイツ氏、電通ベンチャーズ(日本)、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2(英国)、Indie BIo、グローバルなベンチャーキャピタルNorwest Venture Partnersなどの既存投資家も多数参加した。
Upside Foodsの創業者兼CEOのウマ・バレティ氏は「Upsideは研究開発から商用化へ移行し、歴史的な転換点に到達した。世界クラスの投資家のみなさんと協力して、美味しくて持続可能で人道的な肉を世界中の消費者に届けることを楽しみにしている」とコメントしている。
培養肉工場の見学ツアーを開始
Upside Foodsは培養肉生産のスケールアップ前進を図るとともに、市販化後を見据えた活動も積極的に展開している。
同社は先月、カリフォルニアの生産工場EPICで初となる公開ツアーを主催した。約4900㎡の広さ(コンビニ50店舗分)のEPICは住宅やレストランが立ち並ぶ都市部に設置され、あらゆる種類の肉、魚介類をさまざまな形態で生産できる。
バレティ氏は「培養肉が世界にプラスの影響を与えるためには、消費者がこれを理解し、受け入れる必要がある」と述べ、培養肉生産の透明性を高め、消費者に正しい認識を持ってもらう必要性を強調している。
さらに、「このツアーは肉の培養と生産を見られる前例のないものだ。初めて、美味しくて持続可能な肉を都市部の真ん中で、消費者が見学できる形で、1つの屋根の下で生産できるようになった」とコメントしている。
Upside Foodsが昨年実施した調査によると、培養肉購入を検討すると回答したアメリカ人は、2020年の43%から50%に増えている。
この調査では、培養肉の生産プロセス、動物福祉、環境のメリットなど培養肉に対して最も理解のある人がまた、最も熱心であることがわかっている。また、回答者の61%が培養肉と植物肉を混同していたことからも、培養肉産業の発展のために、消費者を対象とした見学ツアーの実施が重要であることがわかる。
Upside Foodsは今後四半期ごとにEPICの見学ツアー開催を計画している。興味のある人は順番待ちリストに登録することで、見学ツアーに参加できる。
▼EPIC(カリフォルニア) この生産施設をはるかに上回る工場が建設されることが発表された
参考記事
UPSIDE Foods Raises a $400M Series C Round to Commercialize Cultivated Meat at Scale
UPSIDE Foods Hosts First Public Tour of its Cultivated Meat Production Facility
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アイキャッチ画像の出典:Upside Foods