「食品開発展2023」が10月4日から3日間、東京ビッグサイトで開催されている。4つのテーマの1つ、ヘルスイングリディエンツジャパン(Hi)ではプラントベース食品に関連した展示も複数見られた。
今回時間が限られていたため、ごく一部となるが、展示されていた内容をご紹介したい。
フード3Dプリンター×介護食の可能性
三菱商事ライフサイエンス・十文字学園女子大学のブースでは、フード3Dプリンターの実演が行われた。
武蔵エンジニアリングのフード3Dプリンターで出力しているのは、プラントベースうなぎ。皮、身毎に異なる植物性フードインクを使用して、皮、身から構成される代替ウナギを3Dプリンティングしている。会場で展示されたのは装置ではノズルは1つタイプだが、実際はマルチノズルで出力する。
身のフードインクには、えんどう豆、おから、オートミール、カードラン、植物油など、皮のフードインクにはデンプン、カードランなどを使用。出力されたプラントベースうなぎを電子レンジで加熱すると、インク中のカードランが固まるという。レシピは三菱商事ライフサイエンスが開発した。
カードランとは、アグロバクテリウム属菌という微生物がブドウ糖からつくる多糖類で、加熱すると固まる性質をもつ増粘剤だ。濃度によって様々な食感のゲルを作ることができる。
フード3Dプリンターを活用して介護食などを作る際、フードインク中のカードランの濃度を変えることで出力後の仕上がりを調整できるため、利用者に応じた介護食を作れるようになる。
同ブースには、十文字学園女子大学の学生らが開発したフードインクを使用した食品サンプルも展示されていた。これらのフードインクは粉末状で、水に溶かして使用する。
介護現場へのフード3Dプリンターの導入はまだ実現していないという。しかし、プラントベースうなぎのように、形状を本物に近づけたペースト食品は、嚥下機能が低下した高齢者だけでなく、幼児用の食品開発にも応用できる可能性を秘めている。
スペインで歴史ある植物ミルクを日本へ
オーツ麦、えんどう豆、大豆などの植物由来ミルクはよく知られているが、珍しい植物ミルクがあった。製菓原材料を取り扱う前田商店のブースで展示されていた「Chufa Milk(チュファミルク)」だ。
「Chufa Milk」は原材料にじゃがいものように土の中で育つ塊茎植物であるタイガーナッツ(チュファ、カヤツリグサともいう)を使用している。「Chufa Milk」を水で5倍に希釈するとミルクのような乳白色になる。
「Chufa Milk」は、スペインで古くから愛されている植物性ミルク、オルチャータ(Horchata)を日本向けにした製品名だ。
原材料にショ糖が含まれているため、飲んでみると甘味がある。コーヒーと混ぜたものを飲んでみると、コーヒー牛乳に近く、こちらの方が初めて飲む人には飲みやすいかもしれない。
前田商店のブースでは、100%植物性のチョコレート製品「NXT」も展示されていた。「NXT」は、粉乳の代わりに前述の「Chufa Milk」を使用している。
「NXT」は販売されているが、「Chufa Milk」はこれから。スペインで人気の植物性ミルク・オルチャータに対し、日本の消費者はどんな反応を示すだろうか。
水処理と醸造技術から生まれた金色のユーグレナ
神鋼環境ソリューションのブースにあったのは、金色のユーグレナ。
ユーグレナといえば「藻」の仲間で緑色のイメージだが、同社のユーグレナは光合成させずにタンクの中で栄養を与えて培養したユーグレナ(EOD-1株)だ。そのため、緑色ではなく金色をしている。
神鋼環境ソリューションが発見したこのユーグレナには、パラミロンという食物繊維が豊富に含まれている。パラミロンはユーグレナだけが生成する成分といわれるが、従来の緑色のユーグレナは含有率が10%ほどであるのに対し、金色のユーグレナには70%以上含まれているという。
京都府立医科大学などと行った研究によると、パラミロンには風邪症状の発生を抑制する作用が確認されたという。
神鋼環境ソリューションはもともと、水処理事業を展開してきた。なぜ、ユーグレナなのか。
きっかけは、1990年代に始まった水の浄化に微生物を活用しようという試みだった。微生物を使った浄水処理技術を日本で初めて開発した同社は、その後、微生物の可能性をさらに探求する過程で、ユーグレナEOD-1株を発見するにいたる(詳しい開発ヒストリーはこちらから)。
ユーグレナEOD-1株の本格培養には、創業以来続いてきたもう1つの柱、醸造用タンク製造で培った撹拌技術が生かされているという。
金色のユーグレナは、今年7月、みるく饅頭「月化粧」に使用され、機能性表示食品として発売された。
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