代替プロテイン

米SCiFi Foodsが培養牛肉の最初の商用生産を完了、来年培養ハイブリッド牛肉の上市へ

 

培養牛肉を開発するアメリカのSCiFi Foodsは先月、同社初の商用工場の建設、試運転が完了したことを発表した

この工場はカリフォルニア州サンリアンドロに設置され、アメリカ食品医薬品局(FDA)、アメリカ農務省(USDA)の検査に合格するよう一から設計されたものだという。

SCiFi Foodsは過去数ヵ月間にわたり、工場の試運転を実施し、このほど500Lバイオリアクターで最初の運転を完了した。これは、同社が規制当局の認可を取得次第、商品化で使用するのと同規模のバイオリアクターとなる。

プレスリリースによると、動物血清を一切使用しないプロセスにより、1回の運転で数キログラムの培養牛肉を生成できるという。

SCiFi Foodsが最初に目指すのは、培養ハイブリッド牛肉製品の上市だ。最初の製品は、培養牛ひき肉を10%、植物成分を90%使用したものとなる。同社の生産工場で月数千個の培養バーガー製品を製造できる見込みだという。

SCiFi Foodsが培養牛肉の最初の商用生産を完了

出典:SCiFi Foods

2019年設立のSCiFi Foodsは単細胞懸濁液で増殖する牛細胞株を保有する世界で唯一の企業だと述べている。

単細胞懸濁液で増殖する細胞株の利点として、標準的な撹拌型バイオリアクターで培養できることを挙げている。ベンチスケールから500Lバイオリアクターへの移行では、スケールアップに問題はなく、小型のバイオリアクターよりも高い収率を認められたという。

生産プロセスではマイクロキャリアや足場は使用しない。同社は、費用対効果の高いスケールアップの実現には、マイクロキャリアや足場の不使用が不可欠だとしている。

同社は2022年の時点で、遺伝子編集技術CRISPRを用いて単細胞懸濁液で増殖する牛細胞株の開発に成功していた。これにより大規模なバイオリアクターでの製造が可能になり、通常の牛肉細胞と比較して1000倍の生産コスト削減が可能なったという

SCiFi Foodsは2022年7月、シリーズAラウンドで約30億円を調達した。同年12月には、培養牛肉製品について初となるライフサイクルアセスメント(LCA)を実施し、培養肉と畜産肉の環境への影響を比較した査読付き論文を発表した

この研究では水・土地利用だけでなく、気候変動への影響における培養肉の利点を明らかにする狙いがあった。結果、温室効果ガス排出量、エネルギー、土地利用、水使用など消費に関する全評価項目において、SCiFiのバーガーは牛肉バーガーよりも環境負荷が少ないことが示された。

論文の最後では、同バーガーが従来の牛肉よりも大幅に環境改善できることが実証された書かれている

出典:SCiFi Foods

2024年1月の時点で、培養肉の販売が認められているのはアメリカ(GOOD Meat、Upside Foods)、シンガポール(GOOD Meat)、イスラエル(Aleph Farms)となる。

アメリカ、シンガポールでは培養鶏肉の認可だが、イスラエルでは先月、世界で初めて培養牛肉が認可された。Green queenの報道によると、SCiFi Foodsは2025年初頭にアメリカでの発売を目指している。

 

参考記事

Launching into the Future: Our First Commercial-Scale Production of Cultivated Beef

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:SCiFi Foods

 

関連記事

  1. 植物性ペットフードV-planetが日本、韓国で発売を開始
  2. 植物分子農業でジャガイモから卵白タンパク質を開発するPoLoPo…
  3. AIエンジンで代替タンパク質を開発するThe Live Gree…
  4. ミツバチを使わない「本物のハチミツ」を開発する米MeliBio
  5. 培養肉企業21社の生産工場・稼働状況まとめ-2022年11月時点…
  6. イスラエルの培養肉企業Believer Meats、アブダビでの…
  7. 中国の培養肉企業CellXが培養肉のパイロット工場建設を発表
  8. Helaina、精密発酵によるラクトフェリンの商用化へ移行、機能…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

米Oobliが精密発酵による甘味タンパク質でGRAS認証を取得

精密発酵で甘味タンパク質を開発する米Oobli(旧称Joywell Foods)…

代替肉はなぜ必要なのか?代替肉の必要性、分類、現状をわかりやすく解説

ベジタリアン、ヴィーガンでないなら代替肉は必要ないのでは? 日本は…

タイソンの植物肉ブランドRaised & Rootedが100%植物ベースの新商品を発売

タイソンフーズが植物肉への取り組みを強化する。自社の植物性ブランドRai…

培養肉用の食用足場を開発する米Matrix Meatsがシードラウンドで資金調達を実施

このニュースのポイント●米国Matrix Mea…

分子農業で代替タンパク質と成長因子を開発するスタートアップ企業4社

分子農業(Molecular Farming)とは、植物を「バイオリアクター」「…

培養肉企業Meatableがオランダに新しいパイロット工場を開設

オランダの培養肉企業Meatableは今月、オランダ、ライデンにあるバイオサイエ…

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(07/26 13:09時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/26 22:36時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/27 02:20時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/26 19:03時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/26 11:34時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(07/26 22:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP