この記事の要点
●YPCテクノロジーズが約1億4千万円を調達
●同時に複数の料理が可能な多才料理ロボット
●ターゲットは老人ホーム、病院など業務厨房
●2021年半ばまでにパイロット生産・運用へ
モントリオールを拠点とするYPCテクノロジーズ(YPC Technologies)は、シードラウンドで136万ドル(約1億4千万円)の資金調達に成功した。
AI特化型ベンチャーキャプタルのハイクベンチャーズ、カナダのテック企業を支援するReal Ventures、トヨタグループのベンチャーキャピタルファンドToyota AI Ventures、Uphill Capitalなどがラウンドに参加した。
YPCテクノロジーズの料理ロボットは多才だ。
独立型で、自動で料理し、作れるレシピは1000種類以上。ピザに特化したPAZZI、パスタに特化したDaVinci Kitchenなどと異なり、スープ、シチュー、リゾット、ブフ・ブルギニョン、シャーベットなど複数の料理を作れる。
なぜ多種類の料理が可能なロボットにしたのか?
きっかけは、共同創業者のGunnar Grassが老人ホームでみた光景だった。配膳された料理のほとんどが、少し食べただけ、あるいはほとんど手をつけずに厨房に戻されていた。入居者の好みや食事制限による食べ残しだった。
料理ロボットの活躍の場は、ファーストフードで大量処理できるものに限らない。客数は少なくても、固定客に幅広い料理を提供するときにも料理ロボットを活用できるとYPCは考えた。ピザやバーガーに特化したファーストフード領域でフードロボットのイノベーションが行われているなか、YPCは業務用厨房に狙いを定めた。
同社料理ロボットは、ロボットアームがそれぞれの容器から材料を取り出し、異なる料理を作る。容器の蓋を開けて、必要な分量を複数の料理鍋に投入し、切り刻む、混ぜる、煮るなどの操作が可能だ。現行タイプは1時間に30の料理が可能だが、新型タイプは1時間あたり100の料理が可能になるという。
YPCが提供するのは完全に独立したロボットではない。材料を容器に補充したり、最後の味付けをしたりなど、人の介入は必要だ。いずれは料理全体の6割を自動化したいという。
YPCのターゲット企業は、老人ホーム、病院、コワーキングスペースなど。導入の障壁を低くするために、ロボットを設置するにあたり追加で換気を設ける必要はないという。
新型コロナのために感染防止策の強化が求められる施設にとっては、YPCのロボット導入により、料理中の人の介在を減らせるというメリットがある。人手不足解消にも有効だ。また、オフィスから移動せずにおいしい食事を食べたいという需要を満たせる点で、コワーキングスペースも理想的な導入先だという。
YPCは今回の資金調達を受けて、2021年半ばまでに非公表の多国籍食品企業とパイロット生産・運用を行いたいとしている。
YPCは2016年にカナダのモントリオールに設立された。これまでに総額190万ドル(約1億9千万円)を調達している。
参考記事
YPC Raises $1.8 Million (CAD) for its Versatile Robot Cooking Kiosk
YPC Wants to Bring Fast Food Robotics to Fresh Food Cooking
Crunchbase.com/organization/ypc-technologies
アイキャッチ画像の出典:YPC Technologies