フードロス

香港IXON社が肉を2年間常温保存できるASAP技術を開発

 

香港のスタートアップIXON Food Technology画期的な食品保存方法を発表した。

ASAPと呼ばれるこの手法を使うと、低温調理肉をおいしい状態で最長2年間保存できるという。しかも、冷蔵庫や保存料を使わないというから驚きだ。

缶などほかの保存方法では、食品を高温滅菌するが、滅菌によって食品の水分や風味が失われてしまう。IXONの技術を使うと、缶よりも穏やかな60度で食品を滅菌することで、食品の水分と風味を保持できるという。

保存料は一切使用していない。保存料なしで2年間常温保存できる秘密は、特許出願中のASAP技術にある。

出典:IXON

ASAP技術をひとことでいうと、部位によって滅菌アプローチを変えている

滅菌する部位を、

●肉の表面

●肉内部のコア部分

●包装パック内の液体ソース

●包装材

と異なる構成部位に分け、それぞれに対し異なる滅菌アプローチを施している。

特許(CN110024936A)によると、ASAPの手順は具体的に次のようになる。

特許明細書(CN110024936A)をもとに、Foovo運営者がIXONのASAP技術を図解したもの

 

①肉表面を高温で処理する(181℃で10秒)

 

②液体ソースを121℃で20分~60分処理する

 

③包装材を121℃で15分間滅菌する

 

④肉を包装材に入れる

 

⑤80~95℃の環境下で肉が入った包装材に液体ソースを投入する

 

⑥肉と液体ソースを含んだ包装材を密封し、60~80℃で1~24時間、熱処理する

 

 

つまり、対象部位によって滅菌温度を変えることで、おいしさ・風味を損なうことなく保存に成功している。

IXONのASAP技術には次のようなメリットがあり、商用化されたら画期的な技術になるだろう。

●フードロス削減

●冷蔵・輸送に必要なエネルギー節約

●サステイナブル

●料理の効率向上

 

冷蔵する場合と比べ80%缶による保存と比べ30%のエネルギーを節約できる。

冷蔵を必要としないため、冷蔵庫のない地域の長期保存に役立つほか、輸送に必要な冷蔵コストを削減できる。

IXONはクラウドファンディング・キックスターターで134万円の目標額を大幅に上回る394万円を調達しており、米国、欧州、中国で特許・商標登録を出願中。

IXONのほかにも、食品の保存期間延長に取り組む企業はある。野菜・果物の鮮度を保持するコーティング技術を開発したApeelは今月約31億円を調達しているが、IXONのように肉の保存期間延長に焦点をあてている企業は珍しい。

IXONが扱う肉は本物の肉で、植物をベースにしたり、細胞から培養する代替肉ではないが、IXONの技術が商用化されれば、フードロス問題に一石を投じることは間違いない。

 

 

参考記事

A Revolutionary Way to Preserve Meat: IXON Food Technology Develops Innovative Energy-Efficient Method to Safely Keep Meat Fresh For Up to Two Years

IXON特許明細書:CN110024936A(用于制备食物的方法)

IXON Food Technology Claims to Keeps Meat Fresh For Two Years

 

 

関連記事

  1. Impact Snacksが世界初のカーボンポジティブな植物性ス…
  2. 食品ロスに取り組むFlashfoodが約14.7億円を調達、アメ…
  3. 誰もが食べられるグルテンを開発するUkko、食品アレルギーにパラ…
  4. 世界初|MeliBioがミツバチを使わない「本物のハチミツ」を試…
  5. 精密発酵でアロマを開発するデンマークのEvodiaBioが約11…
  6. Big Idea Venturesの第3コホートに参加する15社…
  7. 廃棄パンからクラフトビールを作る香港企業Breer、4名の香港大…
  8. 機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億240…

おすすめ記事

Nature’s Fyndが菌類由来の代替肉を米ホールフーズで発売、来年には大規模工場を稼働

微生物発酵により代替肉や代替乳製品を開発するアメリカ企業Nature's Fyn…

「大食物観」とは何か―中国政策文書の変化から読み解く中国のフードテック戦略

2025年4月5日更新中国では近年、政府が発表する政策文書の中で、培養肉や発酵食品など代替タ…

米Atlantic Fish Co、世界初の培養ブラックシーバスを発表

アメリカの培養シーフード企業Atlantic Fish Coは今月、世界で初めて…

米Brown Foodsが培養全乳「UnReal Milk」を発表|研究室での生成に成功

2025年3月7日更新2021年に創業したボストンに拠点を置くスタートア…

フランスのVital Meat、初の培養肉試食会をシンガポールで開催|シンプルなアプローチで培養鶏肉の早期市場投入を目指す

フランスの培養肉企業Vital Meatは、シンプルなペースト状の培養鶏肉を活用…

フードロスに取り組む米Apeel Sciencesが約274億円を調達

フードロスに取り組む米Apeel SciencesがシリーズEラウンドで2億50…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(06/19 15:20時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/20 01:16時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/19 05:15時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/19 21:22時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/19 13:25時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(06/20 00:28時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP