キリンホールディングスは、電気の力で塩味やうま味を増強するエレキソルトスプーンを発表、今月より予約販売の受付を開始した。
明治大学・総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室との共同研究で開発されたもので、塩分を減らした食品でも、塩味を約1.5倍に増強させる独自の電流波形技術を搭載している。
エレキソルトスプーンの開発は、「減塩の重要性はわかるけど、なかなか辛くて続けられない」という声が出発点となっている。
日本人成人の食塩摂取量はWHO(世界保健機関)推奨値の約2倍となる。キリンの調査では、塩分を減らした食品を取りたくても味に不満を持つ割合が全体の約8割を占めるという。
5年以上をかけて開発されたエレキソルトスプーンは、減塩の開始や継続に難しさを感じている人が、食事を楽しみながら、塩分を減らした食事をとることをサポートするフードテックソリューションとなる。
キリンが減塩をサポートするエレキソルトスプーンを発売
スプーンの強度は4段階から調整できる。スプーンを取り付け、電源を入れた段階では最も弱い強度となっている。ボタンを押すと強度を変えられ、ライトの色や点滅によって強度を判別する。
使用方法は通常のスプーンと同じだが、手がスプーン背面の電極パネルに触れるように持つようにする。スプーンが口に触れると、食べ物を介して微弱な電流が流れ、塩味やうま味など味わいのふくらみを感じられる仕組みだ。
もう少し深掘りすると、微弱な電流を流すことで、口の中で分散している塩味のもととなるナトリウムイオンを、舌の方に引き寄せて塩味を感じさせやすくしている。
0.5秒ほどかけてゆっくり食べることで電気が十分作用し、効果を実感しやすくなるという。使用後はスプーン部分を取り外し、通常の食器と同じように洗えばよい(持ち手部分は水洗い禁止)。
実際にエレキソルトスプーンを体験した人からは、「塩味だけでなく、全体的な味の濃さやうまみなども強く感じた」など、塩味だけでなくおいしさそのものも増強されたという声が届いているという。
キリンはエレキソルトの商品化に向けて、箸やお椀といった食器の開発も続けてきたが、ニーズの高い食事内容や技術特性から、最初の開発形態をスプーンとした。
初回販売台数は200台で、今月20日から6月2日まで販売を受け付けている。価格は19,800円(税込)。6月以降も販売を予定しているほか、ハンズ新宿店、ハンズ梅田店、ハンズ博多店でも6月中旬から数量限定で販売する予定だ。
デバイスから代替塩まで:減塩ソリューションの多様化
健康に配慮しながら美味しい食事を楽しみたいニーズに対し、さまざまな減塩ソリューションが登場している。アメリカでもエレキソルトと似たソリューションが開発されている。
SpoonTEKは電気刺激と舌の感覚を組み合わせ、イオンセンサー技術を使用したスプーンを開発した。SpoonTEKは塩味だけでなく、甘味を増強したり、後味を消したりする効果も期待でき、現在29ドル(約4500円)でオンライン販売されている。
オランダのFooditiveは独自技術で天然塩の2倍の塩味となる低ナトリウム塩「LowSalt」を開発している。
アメリカのMicroSaltは、通常の半分の量で、同じ塩味を可能とする「MicroSalt」を開発した。同社は代替塩Salt Shakerと代替塩を使用したポテトチップ製品SaltMeをB2Cでオンライン販売しているほか、B2Bでの卸売販売も行っている。
参考記事
電気の力で減塩食品の塩味やうま味を増強する※1「エレキソルト スプーン」5月20日(月)より公式オンラインストアにて数量限定で販売を開始
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アイキャッチ画像の出典:キリンホールディングス