培養肉

培養肉企業モサミートが約20億円を調達、三菱商事も出資に参加

 

このニュースのポイント

 

●培養肉パイオニアのモサミートが約20億円を調達

新たな出資者に三菱商事が加わる

●2021年上半期に欧州当局に承認申請を開始

2022年末までに欧州市場投入を目指す

 

 

オランダを拠点とする培養肉企業モサミートが新たに1630万ユーロ(約20億円)を資金調達した。

同社は9月にも約58億円を調達しており、今回の調達で、シリーズBラウンドの調達額は総額6300万ユーロ(約79億円)となった。

今回のラウンドで注目したいのは、新たに三菱商事が出資者に加わったことだ。

ほかの出資者には、スイスのベンチャーキャピタルであり本ラウンドを主導するBlue Horizon Ventures、トロントを拠点とするArcTern VenturesRubio Impact Venturersなどがいる。

モサミートは世界に先駆けて細胞から培養肉ハンバーガーを作った培養肉のパイオニア的存在

マーク・ポスト教授が培養肉ハンバーガーを持つこの写真を見たことある人もいるだろう。7年前、世界に初めて登場した培養肉バーガーは3500万円もする高価なものだった。

約3500万円するバーガーを持つマーク・ポスト教授 出典:Mosa Meat

当時、培養肉が食卓に並ぶのはまだ遠い先のことに思えた。しかし、先週シンガポールが世界で初めて培養肉の販売を許可したニュースに続き、香港発のAvant Meatsの資金調達、モサミートの新たな資金調達ニュースによって、より現実のものとなってきた。

欧州規制当局への承認申請は2021年前半

モサミートは欧州市場に参入予定だが、許認可取得に向けた正式な手続きをまだ開始していない

マーク・ポスト教授によると、欧州で許認可を取得するには、1年半ほどかかる。

同社は2021年前半に承認申請を開始し、2022年末までに市場に投入したいと考えている

モサミートがすぐに承認申請に動きださないのには理由がある。本格的な承認申請を始める前に、動物を全く使わない増殖培地を使って良い結果を出したいと考えているからだ

培養肉の開発では、細胞を増殖させるための培地が必要となる。

7年前のハンバーガーでは安価な培地を見つけられず、ウシ胎児血清(FBS)を使用していた。FBSは生まれていない子牛を使うため、動物を殺さない生産方法と言いながらも倫理的に問題があるほか、コスト高の要因になる。

2019年に培養培地からFBSを除去することに成功してからも、研究チームは完全にアニマルフリーな培地に向けて改良に取り組んできた。現在は1/88にまでコストダウンに成功している。

モサミートのチーム 出典:Mosa Meat

マーク・ポスト教授は「細胞に栄養を与える成分の多くは、現在のように医療産業ではなく、いずれは他の産業由来のものになるだろう」とみている。

今回のラウンドに参加した三菱商事の部門は農業の原材料を取り扱っているとし、「戦略上、当社にとって重要なパートナーだ」と語っている。

農業分野に取り組む出資パートナーは三菱商事のほかにNutrecoがいる。

モサミートは1月、動物栄養を生産するオランダのNutrecoと提携した。NutrecoはFBSに代わる植物ベースの血清開発で協業している。

前述のとおり、モサミートは承認申請を始める前に、動物を全く使わない増殖培地を使いたいと考えているため、許認可取得に向けてすぐには動きださない。

しかし、三菱商事とNutrecoという原材料にノウハウのある2社からの支援と新たに調達した資金で、増殖培地のさらなる改良に取り組み、市販化に向けて近づいていくだろう。

モサミートは2016年にマーク・ポスト教授が設立した培養肉スタートアップ。

同社のプレスリリースによると、これまでに調達した資金を、パイロット生産工場の拡大、工業規模の生産ラインの開発、チーム拡充、消費者への牛の培養肉紹介にあてるとしている。

 

参考記事

Mosa Meat gets $19.7M to scale up and continue moving toward cell-based meat products

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat

 

関連記事

  1. オーストラリアが培養肉承認に向けて一歩前進|FSANZがVowの…
  2. ドイツのAlife Foodsがアニマルフリー培養培地を用いて培…
  3. 南アフリカの培養肉企業Mzansi Meatが来月、アフリカ発の…
  4. 米培養肉UPSIDE Foodsが世界で初めてFDAの安全性認可…
  5. Space Fが韓国初の培養鶏肉と牛肉、そして培養豚肉プロトタイ…
  6. 韓国が培養肉特区を創設、商用化の鍵となる細胞供給で特例を設ける
  7. スイスの培養肉企業Mirai Foodsがシードで約2億3千万円…
  8. ノルウェー研究評議会が5年間の細胞農業プロジェクトに出資、培養肉…

おすすめ記事

食料品配達のパーソナライズ化を実現するHungryrootが約44億円を調達|AIで買い物を予測

AIを活用してパーソナライズ化された食料品デリバリーを提供するHungryroo…

【創業者インタビュー】精密発酵でヒト母乳タンパク質を開発するPFx Biotech|健康と栄養に役立つ高価値タンパク質の創出

2022年に設立されたポルトガル企業PFx Biotechは、精密発酵によりラク…

【世界初】米Mission Barnsの培養脂肪、FDAの安全性審査をクリア—小売販売に向け、次のステップへ

米Mission Barnsが開発した細胞培養による豚脂肪が、アメリカ食品医薬品…

バイオテック企業が培養ペットフードを開発するGood Dog Foodを設立

スコットランドのリーディングバイオテック企業Roslin Technologie…

インポッシブルフーズがオーストラリア・ニュージーランド進出へ向け準備

代表的な米代替肉企業インポッシブルフーズが1年以内に株式上場すると言われるなか、…

米Superbrewed Food、腸内細菌由来のタンパク質について米国GRAS認証を取得

アメリカ、デラウェア州を拠点とするSuperbrewed Foodは先月、腸内細…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/20 15:28時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/21 01:28時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/21 05:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/20 21:32時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/20 13:31時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/21 00:37時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP