代替プロテイン

イスラエルのForsea Foodsが世界で初めて培養うなぎの試作品を発表

 

イスラエルの培養魚企業Forsea Foodsが培養うなぎの開発に成功し、初となる試作品を発表した

これまでに植物性うなぎが発表されたことはあるが、Foovoの認識では、細胞培養によるうなぎの試作品を公開したのはForsea Foodsが世界初となる。

Forsea Foodsは、乱獲により絶滅の危機に瀕しているうなぎの個体数減少に歯止めをかけること、アジア・欧米で絶大な人気を誇るうなぎ需要に持続可能な方法で応えることを目指して2021年に設立された。

チームメンバーには、日本細胞農業協会などの活動を通じて国内での細胞農業の普及活動に早期から取り組んできた杉崎麻友氏がいる。

今回発表された培養うなぎは、「ニホンウナギの持つ身の柔らかさ、しっとりした食感、重厚な旨味を再現」しているという。

試作品公開にあわせ、Forsea Foodsは都内のヴィーガンレストラン「菜道」との協業を発表した。「菜道」のチーフシェフである楠本勝三氏との協業により、うなぎの蒲焼とうなぎのにぎり寿司を創作しており、今後も共同開発を進めていく考えだ。

Forsea Foodsは2025年に最初の製品発売を目指している。ターゲットは、うなぎの最大消費国である日本を含めたアジアだ。同社は欧州、アメリカへの進出も視野にいれている。

オルガノイド技術で培養うなぎを開発するForsea Foods

出典:Forsea Foods

Forsea Foodsを際立たせているのは、培養うなぎの開発にオルガノイド技術を使用していることだろう。

オルガノイドは幹細胞がもつ自己複製能力と分化能力を活用して作られる三次元構造体をいう。これにより、脂肪と筋肉から構成される3次元のマイクロ組織が形成される。

オルガノイドは自然界でみられる細胞形成の自然なプロセスを模倣しており、解剖学的・機能的にも生体内の組織に近いという特徴があるため、「ミニ臓器」とも呼ばれている

培養肉の開発では細胞が生存、増殖するための足場が使用されることが多いが、オルガノイドを使用することで、細胞が足場を必要とせずに自分で組織構造を形成することが可能となる。そのため、製造プロセスがシンプルになり、スケーラビリティが向上するというメリットがある。

また、独自の製法により、高コストな成長因子への依存を大幅に減らすことで、コスト効率の良い生産が可能となるという。

Forsea Foodsの共同創業者であるIftach Nachman氏の特許を参照すると、オルガノイドを活用した培養肉生産では、外部からの補充とは無関係に必要な分化を促進するシグナル伝達がオルガノイド内で生じるため、必要な成長因子はごくわずかな量になることが記載されている

オルガノイドを活用した培養肉開発

出典:Forsea Foods

オルガノイド技術は主に創薬研究、再生医療の領域で研究が進んでおり、培養肉の領域ではまだ希少な取り組みだ。Foovoの調査では、Forsea Foodsを含めた数社の取り組みが確認されている。

その1社が、日揮グループが設立した日本企業オルガノイドファームだ。

オルガノイドファームは、横浜市立大学の武部貴則特別教授と順天堂大学の赤澤智宏教授が開発したオルガノイド技術と、日揮グループが持つプラント技術を活用し、2030年に商業プラントの稼働開始を目指している

海外企業では、培養牛肉を開発する米Orbillion Bioが、スフェロイド、オルガノイドを使用した培養肉生産に関する特許を出願している。動物細胞として、ウシ、ブタ、鶏、魚、ヒツジ、バイソン、和牛、アヒル、ガチョウ、ヘラジカ、シカ、ダチョウが挙げられている。

 

参考記事

Forsea Foodsが初の培養うなぎを発表

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Forsea Foods

 

関連記事

  1. 培養肉でメキシコ初のスタートアップMicro Meatは量産化段…
  2. イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods、バイオ…
  3. デンマークの21st.BIO、アメリカで精密発酵ホエイのGRAS…
  4. モサミート、牛脂肪細胞を培養する無血清培地に関する論文を発表
  5. 代替母乳を開発するTurtleTreeがシリーズAで約34億円を…
  6. 培養魚を開発するAvant MeatsがシンガポールのA*STA…
  7. タイソンが出資するNew Wave Foodsが代替エビをアメリ…
  8. 韓国が培養肉の申請プロセスを明確に:培養肉企業の参入を促進

おすすめ記事

米国防総省、Air ProteinやThe Better Meat Co.などフードテック企業5社に助成金を交付

アメリカ国防総省(DoD)は、バイオエコノミーと防衛産業基盤の強化を目的に、Ai…

PFerrinX26、米国で生産能力200トンの精密発酵ウシラクトフェリン施設を計画

TurtleTree、All G、Helainaなどの企業が開発した精密発酵ラク…

英WNWNがカカオフリーチョコレートのB2B販売を開始

カカオフリーのチョコレートを開発する英WNWN Food Labsは今月、ベーカ…

クラフト・ハインツがAIを活用するフードテック企業NotCoと合弁会社を設立

クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)は、フードテックのスタートアップTh…

培養魚のBLUU Seafoodが約24億円を調達、年内にパイロット工場稼働へ

ドイツの培養シーフード企業BLUU Seafoodは先月、シリーズAラウンドで1…

シェフと再生医療研究者が立ち上げた培養肉企業ダイバースファームが目指すもの

ミシュラン星付きシェフと再生医療の研究者が立ち上げた異色の培養肉企業ダイバースフ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(03/20 14:50時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(03/21 00:35時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(03/21 04:28時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(03/20 20:47時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(03/21 12:58時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(03/20 23:48時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP