欧州の代表的な植物肉企業であるスイスのPlantedは先月、独自の発酵プロセスを使用した同社初の植物性ステーキ「Planted.steak」を発表した。この植物性ステーキは現在、ドイツ、オーストリア、スイスのレストランで提供されている。
Plantedが発酵技術を使用した植物性ステーキを発売
Plantedは独自の発酵プロセスを使用した「ホールマッスル・プラットフォーム」により、多様な製品開発を目指している。今回発売された「Planted.steak」は、同プラットフォームで開発された最初の製品となる。
Plantedは設立当初から添加物を使用せず、最小限の原料で代替肉を開発することにこだわりをもっていた。2022年9月には厚切りタイプの代替鶏胸肉を発表した。
「Planted.steak」も、大豆タンパク質、菜種油、豆粉、米粉、「微生物培養物の特別ブレンド」など天然素材のみで作られている。ジューシーで柔らかく、独特の旨味があるといい、タンパク質、食物繊維のほか、ビタミンB12、鉄分など重要な微量栄養素も含む。
Plantedの共同創業者Lukas Böni氏は、「天然素材のみを使用し、添加物を一切使用せず、これほどジューシーで柔らかい植物性ステーキは他にはありません」と自信を見せる。
ドイツ、オーストリア、スイスでPlanted.steakを発売
Plantedはこれまでに「planted.™chicken」、「planted.™pulled」、「planted.™kebab」などの植物肉製品を展開している。
2022年時点では、スイス、ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、イギリスで展開していたが、現在は、オランダ、スペインなど欧州の多くの国に進出している。今回発売された植物性ステーキは2024年4月時点で、ドイツの12か所、オーストリアの12か所、スイスの7か所で提供されている。
Plantedは2023年初頭、スイス政府が支援するSwiss Innovation Agency Innosuisseからスイス・アクセラレーター・プログラムの一環として200万スイスフランを授与された。これにより、わずか1年後に発酵由来の「Planted.steak」を発売することができたという。同社は年内に、D2C・欧州小売店での発売を計画している。
生産施設の拡大
Plantedはこれまで、スイス・ケンプタル(Kemptthal)の生産施設で自社製品を製造してきた。今回、ケンプタルに最先端の発酵施設を建設し、生産能力を戦略的に拡大することを発表した。新たな生産施設では、30名の技術職・事務職の雇用が新たに生まれたようだ。
Böni氏は、「私たちは、研究開発から工業生産まで、生産プロセスの全工程を担う数少ない植物肉のイノベーターであることを誇りに思っています。新たな生産拠点の増設により、Plantedはパイロットステージから工業生産まで、非常に迅速なターンアラウンドを実現し、上市までの時間差を大幅に縮めることができます」と述べている。
AgFunderの報道によると、Plantedはケンプタルの1箇所に全プロセスを集中させている。以前は1日約1トンの生産能力だったが、現在は1日約15トンを製造できるようだ。ステーキ肉は、週数トンを製造できるようになったという。
菌糸体を活用した研究開発
Plantedは今回発表した「Planted.steak」について、AgFunderのインタビューに対し、「独自の固体発酵プロセス」を使用していると回答している。
「Planted.steak」の生産プロセスの詳細は不明だが、出願特許からは、同社が足場に沿って菌糸体を成長させることで、繊維構造を持ったホールカット肉の研究開発も行っていることがわかる(特許①、特許②)。
WO2022/034092によると、PlantedはニホンコウジカビのAspergillus oryzaeを植物性足場に播種し、48時間インキュベートしている(この特許は日本でも出願されている)。
Green queenの報道にある「30~40時間続く固体発酵プロセス」と照らし合わせると、WO2022/034092が「Planted.steak」開発の裏側にあるプロセスのように思えるが定かではない。
植物タンパク質業界ではPlantedのようにホールカット製品を開発する企業が増えており、Juicy Marbles、Chunk Foods、Adamo Foods、NovaMeats、Redefine Meatなどが確認されている。
参考記事
Planted launches first-of-its-kind fermented Steak & expands production
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Planted