細胞培養によるうなぎを開発するイスラエル企業Forsea Foodsは今月4日、イスラエル、テルアビブで同社初となる公式試食会を開催した。
イスラエルの高級レストラン「a」で開催された試食会には、投資家、メディア関係者、イスラエルに拠点を置く日本の食品メーカーの代表、日本大使館の代表など40名が参加した。参加者には培養うなぎの蒲焼きなど3つの料理が提供された。
Forseaは今年1月、世界で初めて培養うなぎの試作品を発表。試食会開催はこれに続くForseaの研究開発の成果であり、Foovoの認識では培養うなぎの試食会が開催されたのはこれが世界初となる。試食した参加者からは、事前に知らなければ細胞培養で作られたうなぎだと思わなかったなどのフィードバックも得られたという。
Forseaは2026年までに最初の上市を目指しており、現在、日本の戦略的パートナーと連携を深めている。Green queenの報道によると、同社は日本市場を第一のターゲット市場としている。
オルガノイド技術による、より自然に即した培養魚開発
Forseaは幹細胞を特別な環境で育てて、小さな臓器や組織を作り出すオルガノイド技術を使用して培養うなぎを開発している。オルガノイドは自然界でみられる細胞形成の自然なプロセスを模倣しており、解剖学的・機能的にも生体内の組織に近いという特徴があるため、「ミニ臓器」とも呼ばれている。
魚の細胞が脂肪、筋肉、結合組織の自然な構造を持つ三次元構造を自発的に形成するため、オルガノイドによる培養肉開発は従来よりも自然に即したアプローチとして注目されている。
培養肉の開発では細胞が生存、増殖するための足場が使用されることが多いが、Forseaの独自技術により、足場を必要とせず、高価な成長因子への依存を大幅に減らすことが可能になる。これにより製造工程のスケーラビリティが向上し、従来の養殖うなぎと同等の価格競争力を持つことが可能になる。
うなぎは絶滅危惧種であり供給不足にあるが、完全養殖が難しい。日本だけでなく世界的にうなぎは供給不足の状態にある。国内ではうなぎの卸売価格は2010年頃には2,300円ほどだったがその後高騰し、過去5年間は5,000円前後で推移している。
培養うなぎには水銀などの汚染物質、マイクロプラスチックは含まれていない。工場で製造できる培養うなぎは、生態系の保護につながるとともに、持続可能な魚生産として期待される。
培養うなぎの開発に取り組むスタートアップ
2024年6月時点でシンガポール、アメリカ、イスラエルで培養肉の販売が認められているものの、魚介類で販売認可を取得した企業はまだ確認されていない。
うなぎの肉や脂肪を開発する細胞培養企業ではForseaのほかにも数社が確認されている。
Forseaに並ぶ代表的な企業にはシンガポールのUmami Bioworksがある。Umami Bioworksはうなぎ、マグロ、ハタ、マダイなどの魚種を対象に、培養魚を製造するためのパッケージ化されたB2Bソリューションの提供を目指している。
同社の細胞培養プラットフォーム技術に基づいて構築される最初のライセンス工場「CellForge I」は、来年マレーシアで開設が予定されている。同社はマルハニチロ、北里大学、旭化成、NUProteinなど日本でのパートナーシップを積極的に拡大しており、今年3月にShiok Meatsとの合併計画を発表した。
このほか、ベルギーのFishway、日本人研究者の杉井重紀氏が立ち上げた魚脂肪に焦点をあてたシンガポールのImpacFatなども、開発対象の1つにうなぎを挙げている。
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アイキャッチ画像の出典:Forsea Foods