カリフォルニアを拠点とする培養肉スタートアップのNew Age Meatsがシードラウンドの追加拡張投資で200万ドル(約2億1千万円)を調達した。
このラウンドにはLitani Ventures’ Peter Rahal、ff VC、SOSV、Innovating Capitalのほかに、新たにSan Diego Tech Coast Angels、BeniVC、Oceanic Partners、Deep Ventures、Climate Capitalが参加した。
この調達で、New Age Meatsがこれまでに調達した総額は700万ドル(約7億3千万円)となる。
同社は数ヵ月後に予定しているシリーズAでさらに出資を募りたいとしている。
目次
ハイブリッド肉を開発する培養肉企業New Age Meats

出典:New Age Meats
New Age Meatsは豚肉に特化した培養肉を開発するカリフォルニア州バークレーのスタートアップ。
2018年設立の同社は、培養肉と植物肉をブレンドするハイブリッド肉を開発している。
プレスリリースによると、最初の製品は豚肉のソーセージとシュウマイで、現在入手できる製品よりも、動物肉と同じ味、風味、食感を再現しているという。
同社は動物から採取した細胞を培養し、植物原料を加えることで、従来の肉よりも「代わりのない、感覚に訴える肉の風味」を再現し、かつ「安全でサステイナブル」な肉を作り出している。
畜産の限界を解決する培養肉

出典:オックスフォード大学
オックスフォード大学の研究論文によると、細胞培養でできる培養肉は畜産肉よりも排出する温室効果ガスを78-96%削減できるほか、使用する土地・水は畜産肉と比べてそれぞれ99%、82-96%少なくすむ。
現在、地球全体で人が住める土地の半分が農業に使用されており、農業用地の77%は家畜飼育に使用されている。
にもかかわらず、家畜由来のタンパク質は供給されるタンパク質供給のわずか37%にすぎないことが報告されている。
一方、世界人口は2050年には97億人に達する(現在は77億人)と予想され、このままでは、増加の一途をたどる人類の食のニーズを現在の畜産で満たすには限界がある。

豚の集約畜産 出典:ウィキペディア
さらに、高密度に飼育する集約畜産には倫理的な問題があるほか、成長を早めるためのホルモン剤・病気を予防するための抗生物質の過剰使用も問題になっている。
日本では2020年、鳥インフルエンザによる殺処分数が345万羽と過去最多となった。
培養肉には、動物・人間を守り、環境保護、食料危機を解決できる大きな可能性があるため、世界中で次々とスタートアップが登場し、技術のイノベーションが進んでいる。
培養肉の課題としてコストと量産化があげられるが、New Age Meatsがフォーカスするのもこの2点だ。
CEOのBrian Spears氏は次のように語り、従来の動物肉と同等価格にさせる必要性を訴える。
「当社の製品が高すぎたり、生産量が少なすぎたりしたら、それは失敗です。高級レストランでしか提供できませんからね。当社はコストダウンと量産化に常に注力してきました。培養肉と植物肉のハイブリッド肉は風味を損ないません。よりおいしいものを簡単につくることで、世界をより良い場所にしたいのです。まもなくシリーズAが実施されますが、このビジョンを市場に届けるところまであと少しです」
オートメーションの経験を培養肉に
Spears氏は産業用オートメーションシステムのSixclearの創業メンバーの1人で、ソフトウェア開発のほか12年間の化学系エンジニアのキャリアを有する。

CEOのBrian Spears氏 出典:New Age Meats
この経験を代替肉開発でいかし、バイオリアクターを最適化するために自動化とデータサイエンスを活用。これがNew Age Meatsの強みになっているという。
詳細は公開されていないが、自動化を活用することで培養肉の開発を劇的に加速できるだけでなく、製造期間を短縮できるという。
同社は調達した資金を、製品の開始から市場へ投入するまでの経験を有するメンバーからなるチーム構築にあてるとしている。
昨年には製品開発と量産化の経験のあるバイオ技術者だけでなく、インポッシブルフーズの元社員を採用している。
培養肉+植物肉のハイブリッド肉は1つのトレンドに
培養肉企業の中には、培養肉に特化して開発する企業や、肉の風味にかかせない脂肪に特化して取り組む企業などがあるが、New Age Meatsのようにハイブリッド肉を開発する企業も少しずつだが増えている。
ハイブリッド肉は完全な培養肉よりもコストダウンしやすく、市場投入を早め、畜産肉の価格により早く近づけられるというメリットがある。
Future MeatのCEOであるRom Kshuk氏もハイブリッド肉は「大した努力をしなくても達成できるもの」と語っている。
コスト・量産・市場投入加速の点から、培養肉のさまざまなハードルが解決するまでは、ハイブリッド肉の戦略をとる企業が増えていく可能性が高い。

出典:New Age Meats
イスラエルのFuture Meatは今月、ハイブリッド鶏肉の生産コストを約780円/約113gまで削減したことを発表した。
スペインのNovameatはそれまでの植物ベースの3Dプリント肉に加え、3Dプリントされた「世界最大」の」ハイブリッド肉を開発している。
イスラエルのMeat-Techもベルギーの培養脂肪スタートアップPeace of Meatを買収したときにハイブリッド肉のリリースする予定があることも言及している。同社はは先日、米SEC(米国証券取引委員会)にIPOを申請した。

出典:New Age Meats
ハイブリッド戦略が主流になるころには、イギリスのHoxton Farmsのように培養脂肪に特化して取り組む企業も増えることが予想される。
近年増えている感染症のうち、既知の感染症10個のうち6個以上が動物由来とされ、新規感染症については、75%が動物由来であると科学者らは推定している。
新型コロナウイルスで浮き彫りになった畜産の問題を早急に解決するために、培養肉に取り組むスタートアップは増えており、今年はさらに大きな動きがあるだろう。
参考記事
New Age Meats Raises Another $2M Seed Extension Round for ‘Hybrid’ Meat
California’s New Age Meats Announces US$2M Seed Extension For Hybrid Cultivated & Plant-Based Meat
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