代替プロテイン

子どもが培養肉を知るための絵本のクラファンがスタート

 

動物を殺さずに、動物から採取した細胞を培養して生産される動物肉を培養肉という。

培養肉はあと5年~10年ほどで動物肉と同等価格になるといわれており、2040年には消費される肉の6割が、培養肉か植物肉になると予想されている。

10年後には、「畜産肉を食べたことがない」子どもが出現してもおかしくないし、いま小学生の子どもたちが親になる頃には、畜産肉を食べる機会が希少になるかもしれない

培養肉が求められる背景には、畜産による温室効果ガスが全体の約15%を占めること、畜産には広大な土地と水を必要とすることがある。2050年に約100億人に達する世界人口の胃袋を満たすには、現在の畜産には限界があり、新しいタンパク質の生産方法が求められている。

この解決方法として期待されている細胞農業技術について、子どもでも理解できる絵本を制作する取り組みが海外で行われている。

ホットドッグはどこから来た?

出典:Where Do Hot Dogs Come From?

Where Do Hot Dogs Come From?」は、3歳~7歳を対象に、動物の細胞から食肉を作る新しい生産方法と技術の仕組みについて知ってもらうことを狙いとしている。

本は、共同制作者Anita Broellochs氏の幼少時代の経験がベースとなっている。

ドイツ南部の農場で育ったAnitaは、裏庭で飼育されている牛たちと「友達」だと思っていたが、ある時、自分が食べるソーセージや肉がすべて「彼ら」からやってくることを知る。

本は、家族がバーベキューする様子を通じて、細胞農業の仕組みに触れる内容となっている。

昨年12月にシンガポールのレストランで世界で初めて培養肉が販売されたことは記憶に新しい。

出典:Where Do Hot Dogs Come From?

共同制作者は、培養肉が大衆化するまではあと10年~15年と聞いた時、若い世代にとって、このテーマがいかに重要であるか考え始めたという。

「今の若者が、世界を劇的に変えうるこの技術に取り組むよう促されたらどうなるでしょうか?」

今の子どもたちは次の世代の科学者、イノベーター、起業家になる。彼らがSTEM教育とともに細胞農業の仕組みを知り、理解することは、より良い食品システムを構築すううえで欠かせない。

子どもたちが早期から細胞農業技術に親しむことで、食料危機と地球環境問題を解決する新しい方法を思いつくかもしれない。

クラウドファンディングを実施中

Alex Shirazi氏(左)、Anita Broellochs氏(中央)、Gabriel Gonzalez氏(右)出典:Where Do Hot Dogs Come From?

「Where Do Hot Dogs Come From?」を制作したのは、フードテックなどに関する会議・イベントを主催するSVCMSの共同創業者であり、培養肉と未来の食に関するポッドキャストを配信するAlex Shirazi氏、フードテックスタートアップBalleticFoodsのCEO・創業者Anita Broellochs氏、イラストレーターのGabriel Gonzalez氏の3名。

現在、「Where Do Hot Dogs Come From?」のクラウドファンディングがキックスターターで実施されている。

20ドルで支援すると、PDFなどE-Book版と印刷された冊子(A4)が発送される。25ドルで支援すると、E-Book版、冊子に加え、初版の絵本(フルカラー)をもらえる。

ほかにも、ファミリー用、学校教育用のプランが用意されている。いずれも今年10月に発送され、対象エリアは世界各国となる。

Foovoは25ドルの初版付きで支援したので、届いたら改めてレビューしたい。

 

参考記事

This Children’s Book Wants To Inspire Future Cell-Based Meat Makers

 

おすすめ記事

アイキャッチ画像の出典:Where Do Hot Dogs Come From?

 

関連記事

  1. タバコ植物で成長因子を開発するBioBetterがパイロット工場…
  2. オランダの培養肉企業Meatableが培地の共同開発でDSMと提…
  3. Big Idea Venturesの第3コホートに参加する15社…
  4. 韓国が培養肉特区を創設、商用化の鍵となる細胞供給で特例を設ける
  5. 牛を使わずに本物と同等のカゼインを開発するエストニア企業ProP…
  6. 培養肉企業モサミートが約20億円を調達、三菱商事も出資に参加
  7. ビヨンドミートが中国ECに初進出、中国市場向けの代替豚肉「ビヨン…
  8. 培養うなぎセミナー動画(北里大学・池田大介先生)|2023年9月…

おすすめ記事

培養肉アレフ・ファームズ、安価でオープンな増殖培地の開発でWACKERと提携

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズとドイツの化学メーカーWACKERは、培…

Current Foodsが生食用代替シーフードのDtoC予約販売受付を開始

代替シーフードを開発・製造するアメリカ企業Current Foods(旧Kule…

ドローンによる「空飛ぶ」果実収穫ロボットを開発したTevel Aerobotics Technologies、日本進出も計画

イスラエルのスタートアップ企業Tevel Aerobotics Technolo…

培養魚のブルーナル、粗利率75%を達成するための技術開発を発表

培養魚を開発する米ブルーナル(BlueNalu)は、大量生産に向けた運用コスト・…

機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億2400万円を調達

フードロス削減に取り組むFloWasteがシードラウンドで110万ドル(約1億2…

ビーガンペットフードのWild Earthが約25億円を調達、来年に細胞培養ペットフード発売へ

ビーガンペットフードを販売する米Wild Earthが、シリーズAで2300万ド…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/03 15:49時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/03 02:04時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/03 05:47時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/03 21:49時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/03 13:44時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/03 01:04時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP