細胞培養によりチョコレートを開発するCalifornia Culturedがシードラウンドで400万ドル(約4億5000万円)を調達した。
細胞農業と培養肉に出資するイギリスのベンチャーキャピタル・上場企業のAgronomicsがラウンドを主導した。California Culturedは調達した資金で、カカオ豆を使わないチョコレートの研究開発を促進させる。
カカオの細胞から直接チョコレートを製造
カリフォルニア州デイビスを拠点とするCalifornia Culturedは、カカオの細胞から直接、カカオ粉末、チョコレート、カカオバターを開発している。
同社は最高の官能特性を有するカカオ品種から少量の細胞を採取し、栄養を与えて細胞を無限に増殖させる。タンクからカカオ細胞を収穫し、発酵・焙煎工程を施すと、チョコレートのもととなる「カカオニブ」(カカオ豆を焙煎し、細かく砕いたもの)ができあがる。
コートジボワール、ガーナを中心とする西アフリカの国は、世界のカカオの約70%を供給している。しかし、カカオ農家の収入は1日1ドル未満とされ、世界の極度の貧困ラインを下回る。そのため、非常に低い賃金による児童労働が行われている。
ハーシー、ネスレ、マースなどの大手チョコレートメーカーは、自社のチョコレートが児童労働なしで生産されたことを保証できていない。児童労働を一掃することを約束してから20年たった今でも、使用するカカオの多くを追跡できていない問題が指摘されている。
世界のカカオの3分の1を生産するコートジボワールでは1960年代以降、熱帯雨林の85%が失われた。また、チョコレートは5番目に温室効果ガスを排出する食品とされる。こうした背景からCalifornia Culturedは、森林破壊、児童労働を伴わない「罪悪感のない」チョコレートを開発している。
代替チョコレートのスタートアップが次々と登場
California Culturedは細胞培養の豊富な経験を有するAlan Perlstein氏とHarrison Yoon氏によって2020年に設立された。
今回のラウンドに参加したIndieBioのPo Bronson氏は次のようにコメントしている。
「California Culturedのチョコレートの味は本当に素晴らしい。研究所で非常に経済的にカカオの細胞を増やし、従来のやり方でチョコレートにしています。農業廃棄物のアップサイクルから精密発酵で風味を作り出すなどさまざまな方法でスタートアップ企業がチョコレート産業の闇を破壊していますが、細胞ベースのチョコレートこそが本物で、高級なチョコレートです」
California Culturedは細胞培養によって持続可能なチョコレート生産に挑戦する唯一のスタートアップ企業となる。スイスの研究チームも今年7月に細胞培養によってチョコレート生産に成功したことを発表した。
児童労働、環境問題の解決のために、California Culturedのほかにも同様のスタートアップ企業が登場している。
アメリカのVoyage Foodsはブドウの種などアップサイクル原料や作物を使ってチョコレート、コーヒー、ピーナッツバターを生産。ドイツのQOAは精密発酵によってカカオ豆を使わないチョコレートを開発、先日600万ドルのシード資金を調達した。
世界のチョコレート市場は2020年の1385億ドルから2028年には2004億ドルに達すると予想される。世界人口の増加により高まるチョコレート需要を満たすため、持続可能なチョコレート生産の必要性がこれまでになく高まっている。
参考記事
Agronomics leads $4 million seed funding for California Cultured
California Cultured Secures $4M To Make Lab-Grown Chocolate A Reality
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アイキャッチ画像の出典:California Cultured