代替プロテイン

オーストラリアのVowが約67億円を調達、来年始めにシンガポールで培養肉発売へ

 

オーストラリアの培養肉企業Vowは、シリーズAラウンドで4920万ドル(約67億円)を調達した。ラウンドはBlackbirdProsperity7 Venturesが主導し、Toyota VenturesSquare Peg CapitalPeakbridgeTenacious Venturesが参加した。

このニュースは工場開設に続く発表となる。Vowは10月、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州シドニー郊外のアレクサンドリアに年間30トンの培養肉を生産できる同社初の工場「Factory 1」を開設した

Vowは資金調達にあわせ、培養肉ブランド「Morsel」の立ち上げも発表した。国際的なシェフと協力して作成された「Morsel」は培養ウズラ肉であり、来年初めにもシンガポールの高級レストランで発売される見込みだという。これまでに培養肉の販売認可を取得したのはアメリカのイート・ジャストに限られるが、第2の企業が登場する可能性が高まってきた。

現在、「Morsel」の専用サイトでは予約を受け付けている。

多くの培養肉企業が牛肉、豚肉、鶏肉を開発対象とするのに対し、Vowはカンガルー、アルパカ、ヤギ、スイギュウなど一般には食されない種の培養肉を開発することで他社との差別化を図っている。

出典:Vow

テッククランチの報道によると、「Factory 1」では数日間で1キログラム~10キログラムの培養肉を生産しているという。Vowは2024年に既存工場の100倍の培養肉を生産できる「Factory 2」を稼働することを計画しており、今回の資金調達はスケールアップ促進にあてられるだろう。

オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)担当者によると、オーストラリアでは申請から認可が下りるまでの期間は約1年間とされている

VowのCEO兼共同創業者のGeorge Peppou氏はテッククランチに対し、今後1年以内にシンガポールとオーストラリアで「Morsel」を販売できると見込んでいることを語っている。これに対しアメリカについては、規制の枠組みが不明瞭な部分があるとし、市場投入のタイミングは予測できていないという。

Vowは工場、資金、母国とシンガポールでの認可待ちに加え、もう1つの武器を有している。

同社は精密発酵で脂肪を開発するオーストラリアのNourish Ingredientsと提携しており、肉の風味に欠かせない脂肪を培養肉に組み込むことができる。Nourish Ingredientsとの提携により、Vowの提供する培養肉は動物肉の模倣にとどまらず、動物肉を上回る食体験を提供できる可能性を秘めている

イート・ジャストに続き、シンガポール進出を目指す培養肉企業はVowだけではない。オランダのMeatableモサミートは10月、相次いでシンガポールの培養肉製造受託認可を有するCDMO、Esco Asterとの提携を発表した。Meatableはシンガポールレストランとの培養ハイブリッド肉製品の開発を進めており、次に認可を取得する企業に注目が集まっている。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Vow(@itsjustvow)がシェアした投稿

 

参考記事

Vow’s first cultured meat product close to Singapore unveiling after $49.2M Series A

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Vow

 

関連記事

  1. 他社の発酵製品の市場投入を早めるSolar Biotechが約2…
  2. 多様な植物から葉タンパク質を抽出するThe Leaf Prote…
  3. アメリカのマクドナルドがマックプラントを導入!11月から8店舗で…
  4. 【現地レポ】精密発酵CDMOのScaleUp Bioが最初のクラ…
  5. パーフェクトデイが約390億円を調達、今秋にアニマルフリーなクリ…
  6. イスラエルのFuture Meatが培養肉の生産コスト削減に再び…
  7. アレフ・ファームズがアジアへの培養肉導入加速に向けてタイ・ユニオ…
  8. DICがスピルリナ由来ヘムを開発する米BYASに出資を発表

おすすめ記事

ユニリーバのBen & Jerry’s、アニマルフリー製品の主原料をオーツ麦へ切り替え

食品・日用品大手のユニリーバは今月、人気の乳製品ブランドであるBen &…

マレーシアの培養肉企業Cell AgriTechが2024年末までの工場開設を発表

マレーシア初の培養肉企業Cell AgriTechは、マレーシア、ペナンに培養肉…

Motif FoodWorksが新成分ヘム「HEMAMI」を発売、新施設の建設も発表

植物ベース食品のアップデートに取り組む米Motif FoodWorksが開発した…

Esco Aster、2025年までにシンガポールに新たな培養肉工場建設へ

世界で最初に培養肉製造認可を取得したシンガポール企業Esco Asterが、20…

培養魚のBlueNalu(ブルーナル)がヨーロッパ進出へ向け冷凍食品大手のノマド・フーズと提携

培養魚を開発する米BlueNalu(ブルーナル)がヨーロッパ進出へ向け動き出した…

米培養肉Upside Foods、培養肉用のアニマルフリーな増殖培地を開発

アメリカの主要な培養肉企業Upside Foods(旧称メンフィスミーツ)はアニ…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(09/10 13:36時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/10 23:02時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(09/11 02:45時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(09/10 19:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(09/11 11:50時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(09/10 22:26時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP