代替プロテイン

微生物・空気・電気からタンパク質を生産するソーラーフーズ、年内に工場着工、2023年前半に商用生産へ

 

空気と微生物と電気を使ってタンパク質を生産するフィンランドのSolar Foods(ソーラーフーズ)が、工業規模の生産施設の建設を年内に開始する。

Factory 01」と名付けられた新工場は、代替タンパク質Soleinを商用生産するほか、訪問者がSoleinの生産プロセスを見学、学べる教育ハブの機能も有し、2023年前半に稼働を開始する。

微生物と空気と電気で生産されるタンパク質

出典:Solar Foods

同社の微生物由来のタンパク質Soleinは、微生物に餌として空気と電気を与えて発酵させて増殖させたものをタンパク質粉末としている。

公式サイトにある「空気から作られるタンパク質」を誤解のないように説明すると、タンパク質の作り手は水素細菌(微生物の1つ)であって、空気からタンパク質ができるわけではない。生産プロセスは、「水を電気で分解するプロセス」と「微生物を増やすプロセス」から構成される

水を電気分解すると、水素と酸素が生成される。微生物に二酸化炭素、酸素、水素を与えると、微生物はタンクの中でこれらを栄養分として消費し、増殖する。この時、微生物の体内では、取り込んだ二酸化炭素がタンパク質(単細胞タンパク質)として貯蔵される。これを乾燥して粉末にしたものがSoleinとなる。

出典:Solar Foods

Soleinは必須アミノ酸をすべて含む無味なタンパク質となり、その組成は大豆や牛肉、マイコプロテインなどのタンパク質に匹敵する。Soleinのタンパク質含有量は60-75%。肉類のタンパク質含有量と比較すると、牛肉は17%、豚肉は14%であり、Soleinのタンパク質は非常に多いことがわかる。

ソーラーフーズはこれまでにSoleinを使用して、バーガーパテ、ミートボールなど約20の商品を開発している。

出典:Solar Foods

農業、気候に左右されずに生産できるサステイナブルなタンパク質で、砂漠や宇宙など極限環境での生産も可能となる。

CEOのPasi Vainikka氏は「私たちは第4農業革命の最中におり、Soleinはその一部です。Factory 01は先陣を切って、世界で最もサステイナブルなタンパク質を世界に届けます」とコメントしている。

教育機能を備えたSolein生産工場「Factory 01」

出典:Solar Foods

Soleinを商用規模で生産する工場「Factory 01」の建設が年内にフィンランド、ヴァンターで開始され、2023年前半に操業を開始する。

こうした革新的テクノロジーによって生産されるタンパク質は、これまでの食の概念を変えるものとなる。見方を変えれば、「得体のしれないもの」という不安感を与えかねない。

昨今、培養肉企業が新たな生産施設に試食スペースを設けるように、ソーラーフーズも新工場に代替タンパク質を生産するだけでなく、透明性を高め、受容度を高める効果をもたせようと考えている。

そのために、一般の人々がSoleinの生産プロセスや、Soleinがほかの製品にどのように使用されるのか見学できるようになっている。

ソーラーフーズは、Soleinの品質、さまざまな食品での使用について、実証プラントで2年近くテストを実施してきた。新しい工場は「新たなスケールでの操業を可能とし、Soleinを商用化し、フルスケールな工業生産への道を開く」ものとなる。

ソーラーフーズが欧州でSoleinを販売するには、「新規食品」としてEU当局の許認可を取得する必要がある。新規食品は、「1997年5月以前にEUで広く消費されていなかった食品」を指す。

同社は今年2月に欧州委員会に新規食品の認可を申請した2023年前半に商用生産を開始できると予測している。

出典:Solar Foods

ソーラーフーズは2017年にVTTフィンランド技術研究センターとラッペーンランタ大学のスピンオフベンチャーとして、Pasi Vainikka氏Juha-PekkaPitkänen氏Sami Holmström氏Jari Tuovinen氏Jero Ahola氏JanneMäkelä氏によってフィンランドのエスポ―に設立された。

2020年9月にシリーズAに進み、今年4月にはフィンランド気候基金から1000万ユーロの出資を受けている。これまでの調達総額は4200万ドル(約47億円)となる。

参考記事

Solar Foods takes concrete steps to enter the market: construction of Factory 01 begins, set to produce the world’s most sustainable protein in 2023

This Solar Foods Factory Will Make ‘World’s Most Sustainable Protein’ From Thin Air

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:ソーラーフーズ

 

関連記事

  1. 代替脂肪(油脂)セミナー開催のお知らせ
  2. イギリスのマクドナルドが代替アイスクリームの試験販売を開始
  3. アグロルーデンスが開発|米と麹から生まれたマイコプロテイン「Co…
  4. チェコの培養肉企業Mewery、チェコ政府から約3200万円の助…
  5. 代替エビを開発するNew Wave Foodsが約18億円を調達…
  6. 中国初の菌糸体タンパク質スタートアップ70/30、今年後半に全国…
  7. ネスレも細胞農業による代替母乳産業に参入か?
  8. えんどう豆由来の代替ミルクを開発するSproudが約6.8億円を…

おすすめ記事

Onego Bio、米ウィスコンシンに精密発酵卵白の工場建設を計画|商用規模のパイロット生産も完了

精密発酵で卵白タンパク質を開発するOnego Bioは、最初の商用規模のパイロッ…

食料品店の救世主!食品廃棄を減らして売上を伸ばすShelf Engineが約44億円を調達

食料品店が直面する食品廃棄・在庫切れ問題を、AIを活用して解決するShelf E…

GFIが「植物分子農業」を代替タンパク質の第4の柱として注目

代替タンパク質の普及を促進する非営利団体Good Food Institute(…

米製粉大手Ardent Mills、小麦由来の代替カカオ原料「Cocoa Replace」を発表──ココアパウダー最大25%代替

出典:Ardent Millsアメリカの大手製粉メーカーArdent Millsが、小麦由来の代…

食品ロスに取り組むToo Good To Goが約31億円を調達、米国での進出拡大へ

フードロスに取り組むデンマーク企業Too Good To Goが2570万ユーロ…

植物の葉から食用タンパク質を開発するLeaft Foodsが約19億円を調達

代替タンパク質の原料は細胞培養、微生物発酵から、えんどう豆、大豆、オーツ麦など植…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/13 16:23時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/14 03:04時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/14 06:39時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/13 22:24時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/13 14:23時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/14 01:44時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP