菌糸体を使って代替ベーコンを開発する米MyForest Foodsは先月、新工場の開設を発表した。
「Swersey Silos」と名付けられた工場は、この種の工場では世界最大規模になるという。同社は工場開設の発表にあわせ、新たな小売パートナーも発表した。
MyForest Foodsはアメリカでは、Meati Foodsと並び、菌糸体由来肉を開発する代表的企業とされる。プレスリリースによると、2024年までに100万人を超える消費者に菌糸体由来ベーコンが提供されると予想される。
年産約1300トンの新工場「Swersey Silos」を開設
新たに開設された工場「Swersey Silos」は、年間300万ポンド(1360トン)の生産能力を誇る。1日に換算すると、日産約3700キログラムとなる。
MyForest Foodsが今秋に予定しているもう1つの生産施設が開設すると、同社は「Swersey Silos」を含め、12万平方フィート(約11,000㎡)規模のインフラ施設を有することになる。
MyForest Foodsは菌糸体を使用して、動物肉の食感と風味を再現したホールカット(塊)のタンパク質を生産している。子豚が成体に成長するまで約6か月かかるのに対し、同社ベーコンの生産期間はわずか9日と短い。
親会社Ecovativeが開発した独自の培養手法AirMyceliumを活用して生産される菌糸体由来ベーコンは、畜産由来のベーコンと比べ、二酸化炭素排出量、使用する土地、水を大幅に削減できるという。新工場「Swersey Silos」でもEcovativeの技術を使い、菌糸体ベーコンの流通拡大を図る。
Ecovative最高技術責任者(CTO)のPeter Mueller氏は「MyForest Foodsは今、完全な市場規模に到達できる立場にあります」とコメントしている。
小売のパートナーシップを拡大
これまでにMyForest Foodsの代替ベーコン「MyBacon」は、ニューヨークの食料品店Honest Weight Food Co-opで販売されてきた。Honest Weight Food Co-opでは70週間にわたり「一貫してMyBaconを完売」したという。
同社は先月、マサチューセッツ州グレート・バリントンのBerkshire Food Co-op、マサチューセッツ州ノーサンプトンのCornucopia Natural Wellness Marketが新たな小売パートナーになったことを発表した。パートナーシップの拡大と新工場の開設により、さらに多くの菌糸体ベーコンが市場に流通していくことになる。
MyForest Foodsは今年始め、1エーカー(約4047平方メートル)未満の土地で年間約300万ポンドの「MyBacon」生産能力を構築するために、カナダのマッシュルーム農家Whitecrest Mushroomsとの提携を発表した。この提携による新しい農場インフラを通じて、MyForest Foodsは今年後半、新しい消費者に商品を届ける準備をしている。
アメリカの菌糸体由来肉は大量生産間近
菌糸体など菌類を成長させて食用タンパク質とする製法はバイオマス発酵と呼ばれる。
MyForest Foodsと並び、菌糸体由来肉を開発する米スタートアップ企業Meati Foodsは先月、1億5000万ドル(当時約199億円)という多額の資金調達を実施した。
同社は菌糸体由来の代替ステーキを今年3月に上市した。現在建設中の工場に加え、今後数年で数億ポンドの生産能力を誇る「ギガランチ」の工場建設も計画しており、MyForest Foodsに続き完全な市場規模への到達を目指している。
最近では中国でも菌糸体由来の代替肉を開発する企業が登場している。70/30はNew Crop Capitalなどからの資金調達を実施しており、昨年には25,000食の菌糸体肉を販売している。
国内では筑波大学の萩原大祐准教授が、麹菌を酒かす、砂糖、水で培養し、代替肉(菌肉)を作る研究開発を行っている。
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アイキャッチ画像の出典:MyForest Foods