菌糸体由来の代替肉を開発するアメリカ企業Atlast Foodは25日、社名変更を発表した。主原料である菌糸体の自然生息地への敬意を表して、社名をMyForest Foodsに変更した。
また、同社は今月、カナダのWhitecrest Mushroomsが「MyBacon」を商用生産するための試験に成功したことを発表した。
菌糸体ベーコンのAtlast Foodが社名を変更
MyForest Foodsは菌糸体由来の代替肉を開発するスタートアップとして2019年に設立された。菌糸体のパイオニアEcovativeが代替肉事業に参入するために創設した。
菌糸体とはキノコの地中にある「根」に相当するもので、糸状の形をしていることから菌糸体と呼ばれる。
MyForest Foodsは菌糸体を成長させて、動物肉の食感と風味を再現したホールカットのタンパク質を生成している。質感、風味、本物を食べている感覚を再現するホールカットのアプローチは、同社親会社Ecovativeが開発した独自の培養手法AirMyceliumにより可能になった。同手法では、菌糸体が成長するにつれ形状や密度を制御することができるという。
MyForest Foodsが開発した世界初のホールカットタイプの代替ベーコン「MyBacon」はニューヨークの食料品店Honest Weight Food Co-Opで販売されており、今年さらに製品の追加を予定している。
今秋に2工場をオープン
MyForest Foodsは昨年4月にシリーズAラウンドで約43億円を調達した。今月発表されたWhitecrest Mushrooms との提携により、Whitecrest Mushroomsは、1エーカー(約4047平方メートル)未満の土地で「MyBacon」を年間300万ポンド(約1360トン)生産し、2023年に増産することを計画している。
Whitecrest Mushroomsオーナー兼社長のMurray Good氏はMyForest Foodsとの提携について、「最高品質の美味しいマッシュルームの栽培と生産に10年以上の経験を積んだ後、代替タンパク質という新しい市場で専門知識をいかせることを嬉しく思います。このパートナーシップは、持続可能性を事業のコアに保ち、全く新しい環境の中で変革するチャンスになります」とコメントしている。
MyForest Foodsは現在、ニューヨークのハドソンリバーバレーに世界最大規模となる垂直菌糸体工場を建設している。また、ニューヨーク州サラトガ・スプリングスにある本社施設とハドソンリバーバレーの工場との間に12万平方フィート(約11,000平方メートル)のインフラ施設を建設している。
2つの工場は今秋にオープンする予定。これは、差し迫った世界的な食料不足に迅速に対応し、世界に十分な食料を供給するための複数のソリューションを提供するという同社の理念を表している。
9日間でできるサステイナブルな菌糸体ベーコン
子豚が成体(約110キログラム)に成長するまでに約6ヶ月かかるが、1頭の豚から生産されるベーコンは16ポンド(約7.2キログラム)に過ぎない。
これに対し、Whitecrest Mushroomsとの提携により、MyForest Foodsの菌糸体由来ベーコンは1エーカー(約4047平方メートル)未満の土地、つまりコンビニ約40軒の土地で年間1300トン以上を生産できる。
工場内で動物を使わずに生産されるため、気候変動、動物感染症による供給変動・価格変動の影響もなく、抗生物質も使用しない。何より、菌糸体からベーコンができるまでの期間はわずか9日間と、従来の畜産と比べて生産期間が短いのも特徴だ。
MyForest Foodsのほかにも、動物肉に代わる原料として菌糸体を選んだ企業が登場している。スペインのLibre Foodsは当初、菌糸体由来のステーキ肉の開発に注力していたが、現在は開発ターゲットをベーコンに変更している。
アメリカのMeati Foodsは菌糸体由来のステーキ肉を開発、今年の市販化を目指している。
参考記事
Atlast Food Co. Reintroduces Itself as MyForest™ Foods Co.
Atlast Food Co. Partners with Whitecrest Mushrooms Ltd. to Scale Production of MyBacon® Strips
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アイキャッチ画像の出典:MyForest Foods