代替プロテイン

ADMがAir Proteinと空気タンパク質を使用した代替肉の研究開発で提携

 

世界大手の農産物加工・食品原料メーカーである米ADM(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)は今月、二酸化炭素を原料にタンパク質を開発するAir Proteinと新しいタンパク質の研究開発で提携したことを発表した

二社は土地がなくても開発可能な空気タンパク質の開発と生産を促進するため、戦略的開発契約を締結した。ADMの栄養、配合、研究に関する知見と、Air Protein独自のタンパク質生産技術を組み合わせることで、代替肉の栄養、食感、風味、コストを改善する費用対効果の高い原料の提供を目指す。

二社はまた、世界初となるエア・プロテイン(Air Protein)の商用プラントの建設、運営でも協力することを発表した。

ADMが空気タンパク質のAir Proteinと提携

出典:Air Protein

NASAの研究者は1970年代、宇宙飛行士が吸い込んだ空気中の元素をタンパク質に変換することで、長期にわたる宇宙生活で宇宙飛行士に栄養をもたらす方法を研究していた。

このプロセスは当時棚上げされ、忘れ去られていたが、Lisa Dyson博士John Reed博士によって再発見され、Air Proteinのチームが完成させた。最新の食品製造技術と組み合わせることで、Air Proteinは「地球上で最も持続可能な代替肉を提供する」と主張している。

Air Proteinは砂糖の代わりに二酸化炭素をタンパク質に変換する特定の微生物を使用する発酵プラットフォームを開発した。空気中の二酸化炭素、酸素、窒素と、再生可能エネルギー、水が原料となる。

初期の導入では市販の酸素や二酸化炭素 (炭酸水など) を使用するが、直接空気回収技術が商用化されれば、これを使用する予定だと公表している

AirProteinの発表資料によると、Air Proteinは4日でタンパク質を生産できる。従来の肉1キログラムの生産と比較して、使用する土地、水はそれぞれ、1/524,000、1/112,000と少ない。

事実上どこでも工場を設置可能で、気候、天候に影響を受けず、年中無休で稼働するため、食品を従来のサプライチェーンリスクから切り離すことが可能になる。

革命的なタンパク質ソリューション

出典:Air Protein

今回の提携にいたるまで、ADMはシリーズAやSAFEでの出資を通じて、Air Proteinを支援してきた。2019年に設立されたAir Proteinはこれまでに総額1億700万ドル(約148億円)を調達し、カリフォルニア州サンレアンドロで最先端施設Air Farmの建設を進めてきた。

Dyson博士はADMとの提携について、「Air Proteinは、増加する世界人口に持続可能な方法で食料を供給する革命的なタンパク質ソリューションを提供するという共通の使命において、強力な支援者であり協力者であるADMとの関係を拡大できることを嬉しく思います」と述べている。

Dyson博士はさらに、同社のタンパク質がGRASであることを確認する規制審査が無事に完了したことにも明らかにした(GRASとは、Generally Recognized As Safe(一般に安全とみなされている)の略語で、米国における食品安全に関する独自の認証制度)。現在、GRAS自己認証に関するレターをFDAに提出し、FDAから「異議なし」の回答を待つ状態にあるという

エア・プロテインは、空気タンパク質と呼ばれたり、作り手が微生物であることから、微生物タンパク質、単細胞タンパク質(SCP)と呼ばれたり、精密発酵との対比でバイオマス発酵に分類されたりする。

二酸化炭素を原料にタンパク質を開発するプレーヤーでは、Air Proteinは先駆的プレーヤーとされる。同社のほかにも、フィンランド企業ソーラーフーズ、イギリスのディープ・ブランチ、アメリカのNovoNutrientsなどが登場している。最近では、2022年に設立されたオランダ企業Farmlessが120万ユーロを調達した

 

参考記事

ADM, Air Protein Sign Strategic Agreement to Advance Development and Production of Unique Landless Protein

Air Protein FAQ & Resources

 

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アイキャッチ画像の出典:Air Protein

 

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