代替プロテイン

日本初|植物肉グリーンカルチャーが植物魚に参入、7月より寿司屋で限定提供

 

植物肉を提供する日本企業グリーンカルチャーが、植物ベースの代替魚への参入を発表した。代替魚をリリースするのは日本企業では初となる。

代替魚「Green Meat™ Model F」は7月2日より東京・浅草の「Vege-Sushi Japan 浅草本店」にて数量限定で提供される。

代替肉で持続可能な地球の実現を目指すグリーンカルチャー

出典:グリーンカルチャー

グリーンカルチャーは「健康と地球とずっと」を理念に、工業的畜産による温室効果ガス排出問題や、今後予想される世界的な食糧危機などの社会課題を解決するために、植物原料を使った代替肉を開発してきた。

創業者である金田郷史氏が、アメリカ留学時に現地の食環境に衝撃を受け、日本でプラントベース食品を普及させるために2011年に設立した。

同社は「Green Meat」のシリーズで、ミンチ状のさまざまな代替肉を提供している。

国内では有名ラーメン店「麺屋武蔵」、東京・⿇布⼗番の⾼級レストランで導入されるほか、北米など海外へも輸出されている。

今年3月には三和海産との協業によりマカオへ進出した

大反響だった展示会での試食会 出典:グリーンカルチャー

通信販売専門店としてスタートしたグリーンカルチャーは、この春に大豆をベースとした植物肉パテ「Green Meat™」の外食産業向けのB2B事業をスタート

昨年10月の展示会では、プラントベース肉の試食会が実施され、完成度の高さが話題となった

数量限定で植物魚をリリース

出典:グリーンカルチャー

プレスリリースによると、今回発表された代替魚「Green Meat™ Model F」は、「Green Meat」シリーズの応用研究から生まれたもの。

植物肉開発に特化したデータを蓄積・解析し、既存食品の逆行解析により魚特有の食感と味わいを再現している。

フレーク状に細かくほぐれた形態の「Green Meat™ Model F」は「Vege-Sushi Japan 浅草本店」で軍艦巻きなどの形で提供される。

代替魚を取り巻く世界の現状

出典:グリーンカルチャー

プラントベース市場において代替魚のシェアは、代替肉と比べるとまだ小さいものの、市場の空白を狙って、世界的には代替魚に参入する企業が増えている。

この背景には、魚の乱獲やマイクロプラスチック汚染による海洋生態系への懸念がある。

乱獲される魚資源の量は、1980年の13%から2017年には34%と2倍に増えており、乱獲による個体数の減少によって、このままでは2048年には魚はいなくなると言われている。

FAOの「世界漁業・養殖業白書(2018)」によると、2015年の世界の水産資源は、「上限近くまで漁獲され、これ以上の生産量増大の余地がない状態」が59.9、「過剰漁獲」が33.1となっている。

養殖では、過密な飼育環境に伴う病気の予防、成長促進を目的として抗生物質が使用されており、抗生物質が残留した食品を人が摂取することで、抗生物質が効かなくなる可能性が懸念されている。

こうした背景から、魚を獲るのではなく、持続可能な形で代替魚を作る試みが行われている。

代替魚は大きく植物ベースと細胞ベースに分類されるが、これまでに市販化されているのは植物ベースのみ。

主なプレーヤーには、6つの豆を原料とするアメリカのGood Catchがおり、アメリカ、カナダ、ヨーロッパに進出している。

Ocean Hugger Foodsはユニークな原料をベースに代替マグロ、代替ウナギを開発しており、今年後半に海外進出する予定。

タイソンフーズから出資を受けるNew Wave Foodsは、アレルギーのないヴィーガンな代替エビを開発。この春にアメリカのレストランで販売をスタート。今後はロブスター、ホタテ、カニもリリースするとしている。

創業者の金田郷史氏 出典:グリーンカルチャー

上記はいずれもアメリカの企業だが、ヨーロッパでは3Dプリンターでサーモンを開発するRevo Foods、今年後半にスウェーデンから海外進出を狙うHookedなどのプレーヤーも登場している。

最近では、アジアを代表する代替肉企業グリーンマンデーが代替シーフードに参入した。

細胞培養による培養魚については、BlueNaluFinless Foodsがアメリカ市場への投入に向けて動きを進めている。

こうした現状を見る限り、日本は代替魚で出遅れた感があるのは否めない。

しかし、グリーンカルチャーは植物肉ですでに確立した国内外の販路を有しており、現在、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカへの進出計画も進めていることから、植物肉に加え、同社の植物魚も国内外へ提供されていくことが予想される。

ベジタリアン向け通信販売から植物肉ベンチャーへ

出典:グリーンカルチャー

ベジタリアン向けの通信販売企業としてスタートしたグリーンカルチャーは、植物肉開発ベンチャーとして大きく舵を切っており、プラントベース食品が求められる背景などについて、講演会を通じ積極的に情報発信も行っている。

2020年12月には、「フードテック振興のための議員連盟」に参画

グリーンカルチャーによると、世界のフードテックへの投資額は急増しており、ここ6年間に集まった投資額は2兆4000億円。米国(9500億円)や中国(3500億円)に比べて、日本の投資額はわずか97億円にすぎず、米国の100分の1しかない。

こうした現状を鑑みて、フードテック産業への投資を活発化させることが、日本の経済成長、他国との競争優位性向上につながることを提言した

 

グリーンカルチャー初の植物魚「Green Meat™ Model F」は7月2日から数量限定で提供される。

店舗名:【​Vege-Sushi Japan浅草本店】

住所:東京都台東区浅草2-27-16

※要事前予約制(下記LINEより)
https://lin.ee/AA4sVb8

 

参考記事

日本初!フードテックベンチャー、グリーンカルチャーが植物から魚肉を開発。浅草の寿司屋にて限定提供

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:グリーンカルチャー

 

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