植物由来や細胞培養の代替シーフードを製造するアメリカのFinless Foods(フィンレス・フーズ)は今月、シリーズBラウンドで3400万ドル(約40億円)を調達した。
「アメリカで最初の培養シーフード企業」であるFinless Foodsが調達した資金は2017年以降今回までで計4800万ドル(約55億円)にのぼり、今回は日本のシーフード企業ダイニチを含む数社が投資をしている。
培養マグロのパイロット工場を2022年に完成へ
Finless Foodsは、2022年の上半期中に11,000平方フィート(約1020㎡)のパイロット工場を完成させるとしており、それにより培養マグロの製造をスケールアップさせていくという。
「今回のパイロット工場は今までの2倍の広さの場所で、4倍の広さの研究開発施設になる」とCEOであり共同創業者のMichael Selden氏は述べている。
過去Finless Foodsを紹介した記事でSelden氏は、イギリス国内の培養シーフード販売に対する規制が厳しく販売までの道のりは長いと述べていた。今回の調達と工場の建設により今後はアメリカで承認を取り、販売を実現することを目指している。
年内に植物性マグロの全国販売へ
Finless Foodsは今後の戦略として、年内にアメリカ全土で植物性マグロの販売を開始し、その後はアジアへの展開も計画している。
植物性マグロのアメリカでの販売開始時期は、年間を通してもっともマグロの消費量が多い夏を予定しており、Selden氏は「入手のしやすさから、ファストカジュアルレストランやシェフカジュアルレストラン、ポケのレストラン、大学、ホテル、スーパーマーケットの惣菜エリア、その他国内での多くのパティー会場などをターゲットとしている」と述べている。
「初めは野生のマグロよりも多少高額になるが、同等の価格での提供を目指している。また他の植物性マグロとはすぐに競合できる価格になるだろう」ともコメントしている。
代替シーフードはあくまで「選択肢のひとつ」である
FinlessFoodsは培養マグロや植物性マグロを「本物よりも優れている」とは言っておらず、それらにはそれらのメリットがあるという。
例えば植物性マグロは、健康や持続可能性のために植物性の食品を食卓に追加するのに最適であり、培養マグロは水銀などのリスクなしにシーフードの味や栄養を楽しむことができる。
「野生で取れたマグロや養殖マグロ、植物性マグロ、培養マグロはどれも補完的であり、消費者の選択肢を広げ、海を健全に保ち私たちが大好きな食事を楽しむことができる方法である。水曜日のランチに植物性マグロ、木曜日の夜に野生のマグロ、土曜日に培養マグロを食べることもあり、私たちはすべてを実現させるために取り組んでいる」とCSOのShannon Cosentino-Roush氏は述べている。
日本では培養うなぎの開発も
Selden氏は、「特定の地域に限定され、販売量が制限されているシーフードは、細胞培養または植物性のシーフードに最適である」と話す。日本でのうなぎも養殖が困難であり、日本国内で多く消費される食材であるので、細胞培養の導入先としてのポテンシャルを秘めている。
日本では北里大学の池田氏が3年前からうなぎの細胞培養研究に取り組むなど、日本のシーフード培養技術もこれからの展開に期待が持てそうだ。
参考記事
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アイキャッチ画像の出典:Finless Foods