代替プロテイン

オーストラリアのAll G Foods、植物肉ブランドを切り離し、精密発酵乳タンパク質の開発に注力

 

精密発酵でラクトフェリン、カゼインを開発するオーストラリアのAll G Foodsは今月、同社が展開してきた植物肉ブランド「LOVE BUDS」をスピンオフし、精密発酵事業に注力することを発表した

All G Foodsの「LOVE BUDS」とFenn Foodsの植物肉ブランド「vEEF」は、新会社The Aussie Plant Based Co.のもとで運営されることとなる。合併により、The Aussie Plant-Based Co.はオーストラリア全土に6,000箇所の流通拠点を持つようになる。

All G Foods、植物肉ブランドを切り離して精密発酵に注力

出典:All G Foods

Jan Pacas氏が2020年にシドニーに設立したAll G Foodsは、新興分野である精密発酵事業と、消費者向けの植物肉事業に取り組んできた。同社の「LOVE BUDS」は、2021年にオーストラリアの小売300箇所で発売されて以来、オーストラリア全土のスーパー・レストランで販売されている。

LOVE BUDS」のスピンオフにより、All G Foodsは技術の限界を拡張し、精密発酵による天然と同等の乳タンパク質の提供に注力する。

この一環としてAll G Foodsは最近、「アジア初の最先端バイオファウンドリ」と自称するBioFoundryに投資した。シドニーに設置された同社のBioFoundryは、AIで自動化され、24時間年中無休で稼働しており、非常に高い精度と速度で設計、構築、試験、学習ができるという。

All G Foodsは初期では、乳タンパク質の1つ、ラクトフェリンの開発に焦点をあてている。同時に、乳タンパク質の8割を占めるカゼインの開発も進めていく。

「長期戦を覚悟」

出典:All G Foods

これまでに精密発酵による乳タンパク質(β-ラクトグロブリン)で認可を取得した企業には、パーフェクトデイRemilkImagindairyが確認されているが、ラクトフェリン、カゼインで上市した企業はまだない。

創業者のPacas氏はブログ記事で、「最初に市場に出すことよりも長期戦になると確信しています。高品質なラクトフェリン、カゼインの開発には、時間とストイックさが必要であることを知っています」と述べ、最初に上市するプレーヤーになることよりも、従来の乳製品と同じ食感、風味、香り、機能性を備えた製品の開発に専念する姿勢を示している

FoodNavigaotrの報道によると、All G Foodsは主要市場としてアジア・中東を視野にいれており、2024年末までにシンガポールでの発売を目指している。

All G Foodsはまた、今年後半に複数地域での承認申請を予定している。シンガポールで上市後は、2025年にニュージーランド、次いでアメリカ、中東、欧州市場への進出を目指しているという。

All G FoodsはB2B戦略として、ネスレ、ユニリーバ、マースなどの大手食品メーカーに原料を提供したい考えをA Positive Climateに語っている

ネスレマースはすでに精密発酵に参入しており、ユニリーバは参入計画を立てているため、これらの企業がAll G Foodsと協業する可能性は十分に考えられるだろう。

 

参考記事

A New Era for Plant-Based Meat: vEEF and LOVE BUDS Unite Under The Aussie Plant Based Co.

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:All G Foods

 

関連記事

  1. 牛を使わずにモッツアレラチーズを開発する米New Culture…
  2. 再生医療学会・培養肉シンポジウムレポート|再生医療研究者が「培養…
  3. 米Atlantic Fish Co、世界初の培養ブラックシーバス…
  4. 植物を活用してアニマルフリーな乳製品を開発するMirukuが約3…
  5. 世界初|スペインの乳製品メーカー、細胞農業による乳製品開発を支援…
  6. オーストラリアのVowが約67億円を調達、来年始めにシンガポール…
  7. 南米を代表するチリのフードテック企業NotCo、シェイク・シャッ…
  8. 細胞シート工学で培養肉を開発するEvolved Meatsが約2…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

フィンランドの研究チームが細胞培養によるコーヒー生産に成功

フィンランド技術研究センター(VTT)の研究チームは先月、細胞農業によりコーヒー…

代替ハチミツの米MeliBioが約6.7億円を調達、今春より生産拡大へ

持続可能な「本物のハチミツ」を開発するアメリカのMeliBioが17日、シードラ…

Steakholder Foodsが3Dプリンティングによる培養霜降り牛肉を発表

イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods(旧称MeaTech)は…

米Uprootによる大学向けの植物ミルクディスペンサー|植物ミルクを当たり前の選択肢に

アメリカで植物ミルクの選択肢が一般的になる一方で、大学キャンパスでの植物ミルクの…

英Ivy Farm、欧州最大の培養肉パイロット工場をオープン

イギリスの培養肉スタートアップIvy Farmが、培養肉のパイロット工場を正式に…

イスラエル政府が培養肉コンソーシアムに約23億円の助成金を提供

イスラエル経済産業省傘下のイスラエル・イノベーション庁(Israel Innov…

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,671円(04/29 12:16時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/28 21:34時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/29 01:04時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/28 18:07時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/29 10:49時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/28 21:05時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP