代替プロテイン

Better Dairyはアニマルフリーチーズの最前線で約25.8億円を調達

 

イギリスのフードテックBetter DairyがシリーズAラウンドで2,200万ドル(約25億8000万円)を調達し、アニマルフリーの熟成ハードチーズを試験段階へと一歩進める。

Better Dairyは精密発酵の手法を用いてアニマルフリーのチーズをつくる研究開発を進めており、従来と同じ化学成分の乳製品をビール醸造に似たプロセスにより作ることを目指す。

今回のラウンドは、2020年にHappiness Capitalが主導した160万ポンド(約2.2億円)に次ぐ資金調達となる。今回の資金調達にはHappiness Capitalのほかに、RedAlpineVorwerkMenta RayAcequia CapitalStray Dog Capitalが参加している。

これにより、同社の調達総額は2430万ドル(約29億円)となった

課題を抱える動物由来乳製品

イメージ画像

動物由来乳製品はミルクをつくる際に大量の水を必要とし、大気中には二酸化炭素を発散することから、Better Dairyの創設者Jevan Nagarajah氏は以前、動物由来乳製品の持続可能性には課題があることを言及していた。

Better Dairyが強みとするところはハードチーズの代替に注力しているところにあり、同じ分野でモッツァレラのようなソフトチーズやホエイに取り組む他社よりも挑戦的と言えるかもしれない。

Nagarajah氏は「薬品会社で30年のタンパク質調製の経験のある科学者を主任とするチームで取り組めば、難しいアニマルフリーのハードチーズを製品化もできると思ったんだ」とコメントしている。

代替乳製品分野の市場成長

イメージ画像

アニマルフリーの素材や製品を求める消費者ニーズの高まりとともに代替乳製品分野は拡大しており、新たなフードテック技術の対象の一つとなっている。

例えば、2022年2月にBrain BiotechとFormoは提携を発表し、ゲノム編集の特許技術を用いてアニマルフリーの乳タンパク質製品の量産化に取り組む。こうした取り組みにより乳タンパク質の代替製品の商品化がスピードアップする可能性がある。

また、イスラエルに拠点を置くスタートアップImagindairyはアニマルフリーで機能性も備えた乳製品を新たに発表した。製品化した天然の乳タンパク質は精密発酵プロセスを用いて作っており、オリジナルとも区別できないものという。

2022年1月にはオランダで植物由来の素材を生産するFooditiveがエンドウ豆と精密発酵によって、食品産業で広く使用できるアニマルフリーのビーガンカゼインを新たに開発、一部の大手食品企業は試験のために注文していることを明らかにしている

今後拡大が予想される精密発酵によるチーズ

世界的なアニマルフリーチーズ市場は2021年で24.3億ドル(約2,850億円)とされ、2022~2030年の年平均成長率(CAGR)は12.6%と今後も市場の拡大が予想されている

これまで、アニマルフリーチーズは主に植物性タンパク質を原料としてきたが、カゼインに由来するチーズ独特の風味や食感を再現することは難しい。これに対して、General Millsは2021年11月にパーフェクトデイの精密発酵によるアニマルフリーチーズをBold Cultrブランドで展開することを発表している

成長が期待できるアニマルフリーチーズ市場において、精密発酵チーズは今後も製品化の動きが続くものと考えられる。

 

参考記事

Better Dairy poised to disrupt hard aged cheese sector with animal-free offering after netting US$22M

 

関連記事

アイキャッチ画像はイメージ

 

関連記事

  1. 【5/17】廉価な成長因子を開発するスタートアップNUProte…
  2. 培養肉企業メンフィス・ミーツが社名をUPSIDE Foodsに変…
  3. 草食動物の腸内細菌で代替タンパク質を開発する米SuperBrew…
  4. Forsea Foodsが初の培養うなぎ試食会をイスラエルで開催…
  5. Vowの培養ウズラ、豪州・NZで承認──FSANZ「食品基準コー…
  6. 雪国まいたけ、新製品「キノコのお肉」を発売|海外で拡大するキノコ…
  7. バイオ3Dプリンティング技術で培養肉を開発するTissenBio…
  8. 精密発酵カゼインを開発する仏Nutropyが約12億円を調達、2…

おすすめ記事

酵母由来の代替油脂を開発する英Clean Food Group、6万リットルの発酵運転に成功──実用化に向け前進

出典:Clean Food Group酵母を用いた微生物発酵により、食品・化粧品向けに代替油脂を…

Oishii Farmが進める植物工場のパッケージ化|年内に国内イノベーションセンター設立へ【セミナーレポ】

2025年5月19日更新(Oishii社確認のもと、一部修正)アメリカ・ニューヨークから1時…

6つの豆タンパク質から代替魚を開発する米Good Catch、カナダ・欧州へ進出

FAOの「世界漁業・養殖業白書(2018)」によると、2015年の水産資源は「漁…

微細藻類で代替タンパク質を開発するBrevelが約25億円を調達|色も風味もニュートラルなタンパク質

イスラエルのバイオマス発酵スタートアップのBrevelは今月、シードラウンドで1…

Moolec Science、豚タンパク質を作る大豆「Piggy Sooy」で米国農務省の承認を取得

2024年10月18日追記これまでの動きから、YEEAプロジェクトは高い可能性で精密発酵に関…

チェコのBene Meat Technologies、培養ペットフードで欧州当局に登録

2025年4月11日 更新当初、販売認可と記載していましたが、その後の報道で市販前承認を必要…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/15 16:14時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/16 02:52時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/15 06:23時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/15 22:15時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/15 14:15時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/16 01:33時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP