代替プロテイン

精密発酵のImagindairy、シードラウンドの資金調達を約35億円で完了

 

精密発酵で乳製品を開発するイスラエル企業Imagindairyは18日、シードラウンドで追加の1500万ドル(約19億円)を調達したことを発表した

これは昨年11月の1300万ドル(約16億円)に続くもので、調達総額は2800万ドル(約35億円)に達した。Imagindairyは調達した資金で、スタッフを採用し、研究開発を加速する。プレスリリースによると、この調達額は代替タンパク質分野では最大規模の1つになる。

追加ラウンドはTarget Globalが主導し、既存投資家であるStrauss GroupEmerald Technology VenturesGreen Circle Foodtech VenturesCollaborative FundNew Climate Venturesなどが参加した。

乳製品由来の温室効果ガスは家畜由来全体の3割

出典:Imagindairy

家畜から産生される温室効果ガスは総排出量の14.5%を占めると言われるが、乳製品の生産で発生する温室効果ガスは、家畜由来排出量の約30%に相当するとされる

一方、乳製品の世界的需要は今後も増加が見込まれる。こうした中、気候変動に対応するために、畜産に変わるソリューションとして牛に頼らずに乳タンパク質を生産できる精密発酵が注目されている。

タンパク質発現を増幅する独自プラットフォーム

出典:Imagindairy

Imagindairyは独自の精密発酵技術により、微生物からアニマルフリーな乳タンパク質を生産する方法を見出した。これにより、動物に頼ることなく、牛乳からチーズまで幅広い代替乳製品の生産が可能になった。

Imagindairyの乳タンパク質は非GMOでありコレステロールを含まず、牛由来のタンパク質と同等の風味、食感、機能性、栄養価を有するという。微生物を「作り手」とする精密発酵は屋内施設での生産を実現し、生産プロセスから家畜を除去できることから、年間を通じて安定した供給量が見込め、環境負荷の軽減が期待できる

消費者にとって手頃な価格で代替乳製品を提供することは、マスマーケットで採用されるための主要な要件となる。同社の精密発酵プラットフォームは、タンパク質の発現を大幅に増幅し、乳タンパク質の費用対効果の高い生産を可能にするという。

Imagindairy でCEOを務めるEyal Afergan氏は「この非常に成功したシードラウンドはImagindairyとアニマルフリーな代替乳製品業界をリードするという当社のビジョンに対する強い信頼を表している」とコメントしている。

増加する精密発酵スタートアップ

イメージ画像

Imagindairyは現在、製品の多様化を模索している大手乳製品メーカーと交渉を続けている。乳タンパク質を原料として提供するか、技術をライセンス提供するか定かでないが、段階別にいずれの手法も採用する可能性はある。

精密発酵により代替タンパク質市場への参入を目指す企業は増えており、2021年には新たに9社の精密発酵企業が設立され、計39社になった

精密発酵で乳製品を開発するイスラエルのRemilkは、1月の約139億円という大型資金調達に続き、4月にデンマークに世界最大規模となる精密発酵工場の建設することを発表した

デンマークは2027年までに化石燃料脱却を目指している。欧州では精密発酵タンパク質はまだ認可されていないが、工場建設によりデンマークが先進的な代替タンパク質の生産で欧州市場をリードする可能性を秘めている。

 

参考記事

Imagindairy Closes its Seed Round, Reaching a Total of USD28M in Investment

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Imagindairy

 

関連記事

  1. セイバーイートが植物肉用3Dプリンターをアメリカの大学へ初導入
  2. Jellatechが約5億円のシード資金を調達、細胞由来コラーゲ…
  3. 微生物、空気、電気を使ってタンパク質を開発するSolar Foo…
  4. Shiruが「見た目も挙動も動物油脂のような」植物性代替脂肪「O…
  5. カーギルがマイコプロテインの英ENOUGHと販売契約を締結
  6. UPSIDE Foodsが米レストランで培養鶏肉の販売を実現
  7. ショウジョウバエで成長因子を開発し、培養肉のコスト削減に挑むFu…
  8. グリラス、国産食用コオロギを使用したプロテインバー等をコンビニで…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

CellMeatは自社開発したウシ胎児血清フリーの培地を用いて細胞培養による独島エビのプロトタイプを開発

韓国のCellMeatは細胞培養用のウシ胎児血清(FBS)フリー培地を開発し、こ…

ビヨンドミートが新しいビヨンドバーガーを5月に全米小売で発売

代替肉巨人のニュースが止まらない。ビヨンドミートが新しい植物肉バーガーを…

材料毎に投入タイミングを制御するスマート調理ロボットOliver

ほかの料理の準備で焼きすぎてしまったり、ゆですぎてしまったり、料理には失敗がつき…

Apeel Sciences、鮮度を保てるプラスチックフリーなキュウリ、ウォルマートで販売開始|食品ロス問題の解決に

食品ロス問題に取り組む米スタートアップのApeel Sciencesは、Houwelingグループと…

細胞培養によるカキを開発するアメリカ企業Pearlita Foodsとは

細胞を培養して動物肉、魚肉を開発する企業が近年、増加している。培養肉の開発が進む…

米Aqua Cultured Foodsがシカゴで生産施設の建設を開始、今年前半に上市を計画

バイオマス発酵で代替シーフードを開発する米Aqua Cultured Foods…

次回Foovoセミナーのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,671円(04/19 12:11時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/19 21:26時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/20 00:57時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/19 18:01時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/19 10:46時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/19 21:00時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP