アップサイクル

カカオのアップサイクルに取り組むKoaが約21億円を調達、廃棄カカオで農家の追加収入を実現

 

カカオのアップサイクルに取り組むスイスとガーナのスタートアップ企業Koaは先月、シリーズBラウンドで1,500万ドル(約21億円)を調達した。この資金調達は、Koaが昨年9月にガーナで新工場を開設したニュースに続く発表となった。

カカオをアップサイクルする西アフリカ初の企業

カカオの実 イメージ画像

カカオの実は、カカオ豆、カカオ豆を包むカカオパルプ、種皮であるカカオハスクから構成される。チョコレートの製造ではカカオの実の約30%が使用され、約70%が廃棄されていると言われる。

近年、カカオの大部分が廃棄されることに着目し、国内外でカカオのアップサイクル事業が展開されている。

2017年に設立されたKoaもそのうちの1社だ。Koaはカカオのアップサイクルを通じてカカオ産業の変革を目指している。同社によると、Koaはこれまで廃棄されていたカカオパルプに新たなバリューチェーンをもたらした西アフリカで最初の企業となる。

ガーナのカカオ農家と協力することで、Koaは農場での食品廃棄物を削減し、農家にプラスの収入を増やすとともに、食品・飲料業界に向けてチョコレート、菓子、アイスクリーム、飲料用の持続可能な新素材を提供している。

同社は現在、カカオフルーツジュース「Koa Pure」、アイスクリーム、チョコレートフィリング、ベーカリー用途のコーシャ・ハラール認証を得たカカオ濃縮物「Koa Concentrate 72°」、コーシャ認証を得た粉末製品「Koa Powder」などをB2Bで販売している。欧州での発売に続き、昨年5月、ガーナでも最初の販売を実現した

5年間で農家にもたらした追加収入は4300万円

出典:Koa

同社の特徴は、徹底した透明性だ。

Koaはアップサイクル事業で生じる収入を、ブロックチェーンを通じて農家に支払う。仲介業者を介さずKoaのネットワーク内で直接取引が行われ、支払いはブロックチェーンで検証された後に行われる。農家は生産日に収入を受け取ることが可能となるという。ただし、ブロックチェーンといっても、ビットコインではなく従来の通貨で支払われる

2017年の設立以来、Koaはカカオ業界で見過ごされていた800トンのカカオの実をアップサイクルした。最初の5年間で2,200のカカオ農家が恩恵を受け、農家の総額収入は30万ドル(約4300万円)になったという

事業を拡大し、需要を満たすため、Koaは昨年9月、ガーナ東部のアキム・アチアセに第2の工場を開設した。工場開設により、生産能力を10倍に拡大し、さらに1万人の農家と協力できるようになるほか、ガーナ農村部に250の新たな雇用が創出される見込みだという。

国内外で広がるカカオのアップサイクル事業

出典:Koa

国内でもカカオ廃棄物のアップサイクルに取り組む動きが確認されている。

明治は昨年6月、カカオの非食品領域の新ブランド「CACAO STYLE」を立ち上げ、チョコレートの製造過程で発生するカカオハスクをアップサイクルした商品を発売した。明治は「CACAO STYLE」の取り組みで、fabula、VOID、菱華産業DICなどのパートナー企業と協力している。

微生物を活用してゴミを出さない商品開発に取り組む静岡に拠点を置くソーイは昨年9月、カカオハスクを発酵させてチョコレートへの再原料化に成功。発酵カカオハスクを活用し、カカオの豆を余すことなく使用したチョコレート製品「Re:カカオテリーヌ」をチョコレートショップNormandie Chocolatで発売した。

海外企業では、オランダのPacha de Cacaoがカカオパルプを原料としたジュースを製造している。同社は昨年、欧州に続き、アメリカ市場への進出を実現した。米Blue Stripesはカカオ全体をアップサイクルしたカカオウォーター、カカオチョコレートバー、グラノーラなどを販売している。

 

参考記事

Koa closes $15m Series B round to scale up cocoa upcycling

Koa inaugurates Africa’s largest cocoa fruit factory in Ghana

Upcycled Cacao Fruit Juice, Anyone? Investors Gave Swiss-Ghanaian Startup $15M to Scale Koa Pure

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Koa

 

関連記事

  1. 精密発酵でカカオを使わずにチョコレートを開発する独QOAとは
  2. 明治ホールディングス、細胞培養チョコレートの米Californi…
  3. プラスチック使用削減のために食用スプーンを開発したIncrEDI…
  4. 植物から短鎖状の食物繊維を取り出す米One Bioが約42億円を…
  5. 米パーフェクトデイ、精密発酵による甘味タンパク質開発で市場参入か…
  6. 二酸化炭素を使用して代替脂肪を開発するスウェーデンのGreen-…
  7. 英Fermtech、ビール粕×麹菌でゼロカーボンな代替タンパク質…
  8. 二酸化炭素からタンパク質を作る米NovoNutrientsが約2…

おすすめ記事

米New Cultureが精密発酵カゼインのスケールアップに成功、1回のプロセスでピザ25,000枚分のチーズを生産可能に

精密発酵によるカゼインタンパク質を開発する米New Cultureは今月、1回あ…

日本ハム、動物血清の代わりに食品成分で培養肉を作製

日本ハムは、培養肉の生産過程で必要となる培養液の主成分を、動物血清から食品成分に…

植物性代替肉SavorEatがイスラエルでIPO(上場)、2021年夏までに試験販売を開始

このニュースのポイント ●植物性代替肉に取り組むイスラエル企業Sav…

ZIKIがロボットキッチンのBowlton Kitchensを買収

1時間に300の料理が可能な料理ロボットを開発する米スタートアップ企業Bowlt…

TiNDLE Foodsが米スーパーで代替鶏肉製品を発売、来年には全米の小売店で発売へ

シンガポールの代替肉企業TiNDLE Foods(旧Next Gen Foods…

アレフ・ファームズが培養ステーキ肉「Petit Steak」を発表、年内の販売を計画

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズは今月、同社初の製品ブランド「Aleph…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/18 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP