ビールの醸造で生じる使用済みビール酵母をアップサイクルするスイス企業Yeastupは先月、シリーズAラウンドで890万スイスフラン(約15億円)を調達した。
Yeastupは調達した資金で、スイスに年間2万トン以上のビール酵母をアップサイクルする大規模施設を立ち上げる。施設立ち上げでは、スイスの乳業メーカーCremoが使用していた乳製品工場を再利用する。
単一プロセスでタンパク質、食物繊維を生成
2020年設立のYeastupが開発するのは、使用済みビール酵母から抽出した代替タンパク質「Yeastin」。
「Yeastin」は、溶解性に優れ、無味で、PDCAAS(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア)は1と、卵に匹敵する機能性を備えるという。Yeatupは、卵や植物性原料を置き換えるゲル化、乳化性に優れた「Yeastin PRIME」と、コラーゲンペプチドを置き換えるプロテインバー製品向けの「Yeastin NUTRA」を開発した。
さらに、食品・化粧品業界向けにβ-グルカン、マンノプロテインからなる食物繊維「UpFiber」も開発している。
Yeastupは、酵母を最大限に活用する特許出願中のプロセスを開発した。
同社は、機械的で穏やかな細胞破壊と相分離法および高度な膜技術を組み合わせて、単一プロセスでタンパク質と繊維を分離する。このアプローチにより、苦味物質など発酵で生じる不要な副産物を取り除き、酵母タンパク質から可溶性タンパク質と食物繊維を生成するという。生産プロセスで水は回収され、再利用される。
今回のラウンドにはBeyond Impact、Gentian Investments、Newtree Impact、Angel Houseが参加した。Newtree Impact のマネージングディレクターであるBenoît de Bruyn氏は、Yeastupへの出資理由として、他社と比べて同社のスケールアッププロセスが製品や経済的な面で優れている点を挙げている。
Yeastupはこれまでに、スイス、ベルン州から助成金も獲得している。
共同創業者のDaniel Gnos氏は、「使用済みビール酵母には驚くほどの栄養分が含まれていることには大分前から気づいていました。私にとって、この有力な資源が単に動物の飼料として使われたり、廃棄されたりするのは、高価値な資源の無意味な浪費に思えました」と過去に述べている。
スイス北西部応用科学芸術大学が昨年実施した研究では、「Yeastin」使用の代替パテは、えんどう豆を使用したものよりも温室効果ガス排出量が74%少なく、エネルギー需要が80%少ないという結果が得られている。
使用済み酵母をアップサイクルする企業
ビール酵母に限らず、使用済み酵母からタンパク質を作る企業はまだ少数だが数社確認されている。その中には、レストランへの供給を開始する企業や、精密発酵企業の遺伝子組み換え酵母をアップサイクル事例などが確認されている。
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アイキャッチ画像の出典:Yeastup