代替プロテイン

ドイツの培養肉企業MyriaMeat、自発的な収縮を示す培養豚肉の開発に成功

 

ドイツの培養肉企業MyriaMeatは、多能性幹細胞であるiPS細胞から、自然に収縮する豚の筋肉組織の開発に成功したと発表した

MyriaMeat、自発的な収縮を示す培養豚肉を開発

出典:MyriaMeat

2022年にゲッティンゲン大学からスピンオフされたMyriaMeatは、従来の食肉生産に代わる持続可能な代替品を生み出すために、幹細胞から本物の動物の筋肉組織を生産するというビジョンに取り組んできた。

MyriaMeatは今月、「世界で初めて、多能性幹細胞 (iPS) から、自然で自発的な収縮 (本物の筋肉組織の機能を反映した活発な単収縮))を示す本物の豚の筋肉を開発した」と発表した

同社でCSOを務めるMalte Tiburcy博士は、多能性幹細胞から作られた豚の筋肉組織が、本物の組織の特性だけでなく、筋肉の自発的な収縮を示した今回の成果について、「生体外で本物の豚肉を生産できることの科学的証拠」だと述べている。

出典:MyriaMeat

MyriaMeatは昨年4月、大豆など植物成分を使用せず、100%豚肉の培養ヒレ肉のプロトタイプを発表。ゲッティンゲン大学のライフサイエンス工場に研究所を構える同社は、最初の試食会開催を計画していると当時述べていた(開催はまだ確認されていない)。

Gründerszeneの報道によると、共同創業者のWolfram Zimmermann教授は以前、ゲッティンゲン大学で医療分野における心筋細胞の開発に取り組んでいた。その後、共同創業者のFlorian Hüttner氏とともに、この技術を活用して培養肉を作るアイディアを思いついたのだという。

同メディアによると、MyriaMeatの培養肉の生成にかかる時間は6週間であり、豚が飼育され屠殺されるまで8ヵ月かかることと比較して、はるかに短いものとなる。

MyriaMeatは、代替品ではなく、本物の培養豚肉を開発することで、植物由来の代替肉に関心のない消費者にも受け入れられることを目指している。

同社はまた、食肉業界と協力して、既存の生産方法を使用した製品を開発し、培養肉の導入を促進したい考えており、現在パートナー企業を探している。

国内における筋収縮する培養肉の開発

出典:東京大学竹内昌治研究室

日清食品ホールディングスと共同研究を進める東京大学竹内研究室も、筋収縮する培養肉開発に取り組んでいる。

竹内昌治教授らは、本物志向の培養ステーキ肉の開発で、電気刺激により筋収縮することを重視してきた。2021年には電気刺激により収縮する培養サイコロステーキ牛肉を世界で初めて実現

昨年には、5.5cm×4cm×1.5cmまでサイズアップした培養脂肪入り牛肉の開発に成功した。現在は人工血管にみたてた中空糸を使用した培養肉開発や、食感や味の向上を目指して、筋肉をより太くする「筋トレ」メソッドにも取り組んでいる

 

参考記事

Cultivated pork meat with natural contractility from pluripotent stem cells(プレスリリース)

MyriaMeat Achieves First-Ever Functional Muscle Contractions in Cultivated Pork

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:MyriaMeat

 

関連記事

  1. 代替油脂のパイオニアCUBIQ Foodsが約7.8億円を調達、…
  2. 菌糸体由来のブロック肉を開発するMeati FoodsがD2C販…
  3. 代替母乳を開発するTurtleTreeがシリーズAで約34億円を…
  4. FAOとWHOが培養肉の安全性に関する新レポートを発表
  5. 【現地レポ】米GOOD Meatの培養肉実食レビュー@シンガポー…
  6. Oatlyがオーツ麦由来のソフトクリームをイギリスで発売
  7. 米パーフェクトデイがシンガポールに研究開発拠点を設置、2021年…
  8. Onego Bioが約24億円を調達、精密発酵卵白タンパク質の生…

おすすめ記事

使用済みビール酵母から代替タンパク質を開発するYeastupが約15億円を調達、スイスで生産工場立ち上げへ

ビールの醸造で生じる使用済みビール酵母をアップサイクルするスイス企業Yeastu…

韓国の培養肉企業SeaWithは2022年末までにレストランでのテスト販売を目指す

韓国のスタートアップ企業SeaWithは、2022年末までに培養肉のテスト販売を…

ドイツ発のAitmeはキオスク型自律調理ロボットを開発

ベルリンを拠点とするスタートアップ企業Aitmeは完全自律型のロボットレストラン…

オーストリアのFermify、精密発酵カゼインで米国GRAS自己認証を取得

2024年12月10日修正:後半のスライドを一部修正しました。精密発酵カ…

培養魚の米Wildtype、培養魚の試食ができる実証プラントの稼働をまもなく開始

細胞培養により培養サーモンを開発するWildtypeが、実証プラントの稼働をまも…

米Omeatがロサンゼルスで培養肉のパイロット工場を開設

ロサンゼルスを拠点とする培養肉企業Omeatは今月、パイロット工場の完成、開設を…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(02/24 14:44時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(02/24 00:26時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(02/24 04:19時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(02/23 20:41時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(02/24 12:48時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(02/23 23:39時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています