代替プロテイン

クラフト・ハインツがAIを活用するフードテック企業NotCoと合弁会社を設立

 

クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)は、フードテックのスタートアップTheNotCompany(NotCo)と米国で合弁会社の設立を発表した

NotCoのAI技術Giuseppeを活用してミルク、肉、乳製品の植物由来代替製品の幅広い展開を図る。

クラフト・ハインツとNotCo、共同ブランドのもと植物由来製品を幅広く展開

出典:NotCo

クラフト・ハインツの管理下で運営される合弁会社The Kraft Heinz Not Companyは、シカゴを拠点とし、研究開発施設をサンフランシスコにおき、NotCoの北米拠点のCEOであるLucho Lopez-May氏が率いる。

NotCoは2015年にチリで設立されたフードテック企業で、肉やミルクなどの乳製品の植物代替製品をチリ、米国のほか、ブラジル、アルゼンチンなどで展開している

NotCoの特許技術や植物由来製剤における知見をクラフト・ハインツブランドと結び付けて展開することを計画しており、「業界ではこれまでにないスピード、味、品質、規模で植物由来の共同ブランド製品を開発して展開する」。

クラフト・ハインツCEOのMiguel Patricio氏は「NotCoのもたらす技術は単純な組成でおいしい植物由来製品を開発するうえで革新的なものだ。NotCoとの合弁は当社の製品群を変革するうえで重要な一歩である」とコメントしている。

動物由来食品のリバースエンジニアリング

出典:Kraft Heinz、NotCo

NotCoは2020年にNotMilkで米国市場に参入したが、この製品はオートミルクやアーモンドミルクのような風味の異なる代替ミルクではなく、ミルクそのものの代替製品となる。NotCoはミルク以外の製品の展開も進めている。

NotCoはこれまでに3億7000万ドル(約428億円)の資金を調達しており「Giuseppe」と呼ぶAI技術で米国特許を取得している。

この分野では革新的な特許で、動物由来の食品を分子ごとに分解して植物由来の成分に置き換えることにより、次世代の肉や卵、乳製品の代替製品を生みだす技術とされている。

消費財の会社よりもデータの会社となりつつあるNotCo

出典:NotCo

フードテックのスタートアップは、食品企業向けのピッチ資料に「機械学習」という用語を使うのが流行りだが、NotCo共同創業者兼CEOのMatias Muchnick氏はGiuseppeを用いれば風味のペアリング以上のことが出来るとしている。

例えばNotMilkはパイナップルとキャベツの要素を用いている。これらに含まれる成分から植物性ミルクは想像できないかもしれないが、Giuseppeは乳製品にみられるラクトン類や香気成分を発生させる組み合わせとしてこの2種を導き出しているのである。

Giuseppeはまた、ゲル化や起泡性や乳化といった技術的な特性を発揮するための成分も見出すことができる。

出典:NotCo

Muchnick氏によると「NotCoは消費財メーカーというよりもデータ会社になりつつあり、過去6年間で積み上げた知見により食品を様々な角度から解釈して、他社よりもより良く目的に沿った製品を短期間に、そして安価に開発することができる」。

米国における植物由来代替肉食品の市場は2019年時点で約8億ドル(約912億円)あり、ビヨンドミート、インポッシブルフーズといったフードテック系の会社のほか、Kelogg傘下のモーニングスター・ファームズなどが知られている

クラフト・ハインツもボカバーガーのブランドでこの市場に展開しているが、今回のNotCoとの合弁を機に代替乳製品も含めて植物由来製品のラインアップを拡充し、この成長市場における売り上げ拡大を目指していくものと考えられる。

 

参考記事

Kraft Heinz creates joint venture with AI-powered foodtech startup NotCo

Not Your Average Joint Venture: Kraft Heinz and TheNotCompany Create Partnership to Accelerate AI-Driven Plant-Based Innovation Globally

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:出典:Kraft Heinz、NotCo

 

関連記事

  1. 代替肉ブランドTiNDLEを開発するNext Gen Foods…
  2. 培養肉モサミートが培養脂肪用培地の大幅コストダウンに成功
  3. インポッシブルフーズが開発中の代替ミルク・Impossible …
  4. 『ミート・ザ・フューチャー~培養肉で変わる未来の食卓~』が6月9…
  5. ドイツ企業Nosh.Bioがマイコプロテインを工業生産する自社施…
  6. アメリカが培養肉販売を承認|GOOD Meat、UPSIDE F…
  7. 培養魚のBLUU Seafoodが約24億円を調達、年内にパイロ…
  8. 米培養肉UPSIDE Foodsが世界で初めてFDAの安全性認可…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

ユニリーバ傘下の代替肉ブランドThe Vegetarian Butcherが、精密発酵由来の卵白タンパク質の使用で米The EVERY Companyと提携

グローバルな代替肉ブランドであり、ユニリーバが2018年に買収したThe Veg…

中国の培養肉企業CellXが培養肉のパイロット工場建設を発表

中国の培養肉企業CellXと、グローバルな医薬品・食品製造向けのプロセスサポート…

ドイツ企業Kynda、食品副産物を活用した「廃棄物ゼロ」の菌糸体バーガーを見本市で発表

菌糸体生産のB2Bソリューションを開発する独Kyndaは今月、ドイツ、ハンブルグで開…

米InnerPlantが自らSOSを出す植物 InnerTomatoを開発、病気の早期発見に

(▲左は通常のトマト、右が昆虫の攻撃を受けたInnerTomato。通常のトマトは発光しないが、In…

ドイツのPlanet A Foodsが代替チョコレートをスーパーに初導入

持続可能な代替チョコレートを開発するドイツ企業Planet A Foods(旧称…

イート・ジャストが中国ファンドから約34億円を調達、代替卵JUST Eggで高級鶏卵と同等価格を実現

代替卵と培養肉を手掛ける米フードテック企業イート・ジャストが中国のプライベート・…

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(07/27 13:09時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/26 22:36時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/27 02:20時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/26 19:03時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/27 11:34時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(07/26 22:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP