代替プロテイン

PFerrinX26、米国で生産能力200トンの精密発酵ウシラクトフェリン施設を計画

 

TurtleTreeAll GHelainaなどの企業が開発した精密発酵ラクトフェリンの市場投入が期待される中、新たなプレイヤーがアメリカで精密発酵ラクトフェリン生産施設の建設を計画している。

AgFunderの報道によると、ベンチャーキャピタルEarth First Food Venturesが支援するPFerrinX26は、大手乳業メーカー、原料メーカー、デキストロース供給業者、CPG(消費財)企業などとコンソーシアムを結成し、アメリカ中西部に200トンの生産能力を有するウシラクトフェリン生産施設を建設する予定だ。

ラクトフェリンの希少性と価格高騰

出典:Earth First Food Ventures

牛乳に含まれるラクトフェリンは、免疫調整や抗炎症作用を持つ機能性タンパク質で、乳児用粉ミルクや成人向け栄養製品、スポーツドリンク、化粧品に使用されている。

しかし、牛乳1デシリットルあたり0.7mg未満しか含まれず、供給不足と需要増大から、市場価格は1キログラムあたり650ドル(約9,900円)まで高騰しているとEarth First Food Ventures指摘する

精密発酵技術は、遺伝子組換え微生物を活用し、ホエイ、カゼイン、ラクトフェリンなどの動物由来の特定成分を生成する技術だ。

もともと動物の膵臓から抽出されていた糖尿病治療薬インスリンは、1980年代にアメリカで組換えタンパク質技術が実用化され、遺伝子組換え微生物を用いたヒトインスリン製造が確立された

この技術は近年、代替タンパク質の開発において注目されている。2019年に発行されたRethink Xのレポートを契機に、「precision fermentation(精密発酵/プレシジョン発酵)」という用語が広まっている。

精密発酵分野ではホエイやカゼインを手掛ける企業が多い中、ラクトフェリンから着手する理由についてPFerrinX26は、ラクトフェリンの市場価格が高く、製品中の含有率が低いことをAgFunderに述べている。

また、建設地にアメリカ中西部を選んだ理由として、発酵の原料となるデキストロースが豊富に供給される点を挙げている。

Earth First Food Venturesの長期計画

出典:Earth First Food Ventures

2017年に設立されたEarth First Food Venturesは、当初は拡張可能な陸上養殖技術に重点を置いていた。現在は精密発酵の拡大に焦点を当てており、ラクトフェリンの他、β-ラクトグロブリンカゼインを対象としている

Earth First Food Venturesは今後10年間でアメリカ、中東と北アフリカ(MENA)、アジアの4カ所に、年間1万トンの生産能力を有する施設を建設する計画だ(どの成分を指しているかは不明)。これにより、ラクトフェリンのみならず、β-ラクトグロブリンなど他の成分について、精密発酵による生産拡大を目指している。

同じくアメリカ・インディアナ州で精密発酵施設の建設を進めるLiberation Labsは、先月5050万ドル(約77億円)を調達した。同社はこの資金で建設を完了させ、2025年中の稼働開始予定している

Green queenの報道によると、先月調達した資金はサウジアラビアにおける施設の設計・開発計画にも充てられる予定となる。

 

参考記事

New player on lactoferrin block plans precision fermentation site in the Midwest

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Earth First Food Ventures

 

関連記事

  1. BlueNalu、培養マグロの米国先行上市を目指す|Nomad …
  2. 中空糸バイオリアクターを開発する英Cellular Agricu…
  3. 日本市場で高まる培養うなぎへの関心|日本人の35%が「培養うなぎ…
  4. 米Oobliが精密発酵による甘味タンパク質ブラゼインでGRAS認…
  5. 培養肉企業21社の生産工場・稼働状況まとめ-2022年11月時点…
  6. CellMeatは自社開発したウシ胎児血清フリーの培地を用いて細…
  7. インポッシブルフーズの脅威になるか?スピルリナ由来のヘムを開発し…
  8. イスラエルのBELIEVER Meats、アメリカで世界最大の培…

おすすめ記事

Avant Meatsが中国バイオ医薬品企業QuaCellと提携、培養魚の生産コスト90%削減を発表

Avant Meatsは培養タンパク質の生産コストを90%削減することに成功した…

TiNDLE Foodsが米スーパーで代替鶏肉製品を発売、来年には全米の小売店で発売へ

シンガポールの代替肉企業TiNDLE Foods(旧Next Gen Foods…

【世界初】Shiok Meatsが試食会で培養カニ肉料理を発表

培養シーフードを開発するシンガポール企業Shiok Meatsが、培養カニ肉の試…

米EdiMembre、ホールカット細胞性食品の開発に向け、可食中空糸式バイオリアクターを開発|約5,800万円のプレシード資金を調達

出典:EdiMembre細胞性食肉(培養肉)のスケールアップを目指して、アメリカで新たなスタート…

イート・ジャストの代替卵JUST Eggが欧州の安全性承認を取得

米イート・ジャストの代替卵JUST Egg(ジャスト・エッグ)の主要成分が、欧州…

ベルギー企業Bolder Foodsが菌糸体由来のチーズ試作品を発表

菌糸体から代替チーズを開発するベルギー企業Bolder Foodsは今月、ジボダ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/30 16:20時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/01 03:00時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/01 06:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/30 22:21時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/30 14:20時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/01 01:38時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP