3Dプリンター

バイオ3Dプリンターで代替肉を開発するスペイン企業Cocuusが約3.5億円を調達

 

スペインのスタートアップ企業であるCocuusは、プレシリーズAで250万ユーロ(3億5000万円)の資金調達に成功した。

Cocuusは、植物や細胞由来の代替肉製造を容易にする技術開発に取り組む企業で、今回の資金調達は、新たな世界市場への事業展開を支援するものとなる。

同社はバイオ3Dプリンティングと自動化技術により、従来の食肉に代わる本物に近い代替品を提供することで、既存の食料システムを変革していくことを目指している。

植物/細胞由来の代替肉開発を可能とする3Dプリンティング技術

CEO・共同創業者のPatxi Larumbe氏 出典:Cocuus

Cocuusは2021年、植物や細胞由来の材料に適した独自の3Dプリント技術を開発したと発表した。同社は3Dプリントで製造されたサーモンやリブロースステーキ、ベーコンを公開し、リアルなものを作れることを証明した。

2021年の時点で、毎分8キログラムの代替肉をプリントすることができたという。さらに、毎分10キログラムの植物肉を3Dプリントできる装置の特許を出願するとしていた

Mimethicaと名付けられたCocuusのプラットフォームは、AIを使って既存の食品の組成を分析する。次に数学的モデルを用いて、バイオインクに変換された新しい食材を使い、元の食材と同じ構造を再現する。

このプラットフォームでスケールアップが可能になると期待されており、今回の資金調達はこの目標に向けた一歩となる。

CocuusのCEOで共同創業者のPatxi Larumbe氏は、「今回の資金調達で国際的な投資家の関心を集めたことを大変誇りに思います。この資金調達のおかげで、タンパク質を工業規模でプリントしたいと考える企業の手の届くところに、私たちの技術を届けることができるようになるでしょう」と発言している。

人口増加による食糧不足と環境汚染問題への解決策

出典:Cocuus

FAOが以前発表したデータによると、2050年までに世界人口が91億人に達した場合、食糧生産を70%増加させる必要がある。

具体的には年間2億トン以上増加させる必要があるという。しかしこれは、2050年までに大幅な改善を目指すとされている排出量削減目標とは相反するものとなっている。

植物肉や培養肉の開発は、従来の食肉に比べて生産に必要な土地やエネルギーが大幅に削減されるため、排出量の危機に対する潜在的な解決策と見なされ推進されているが、生産規模の面では、既存の動物性タンパク質と比較するとまだ苦戦しているのが状況だ。Cocuusは、このボトルネックを取り除くことを目的としている。

今回のCocuusへの投資はBig Idea Venturesが主導し、Cargill VenturesTech Transfer UPVが参加したことが注目されている。

Big Idea Venturesの創業者でマネージングゼネラルパートナーのAndrew D Ive氏は、「Big Idea Venturesでは、代替タンパク質産業のバリューチェーン全体に影響を与える技術に投資をしています。Cocuusの技術は、構造化された植物肉や培養肉の生産における主要課題であるスケーラビリティに対処しています。我々は、この革新的なチームを支援することにワクワクしており、彼らのスケーラブルな食品技術が世界中に衝撃を与えることを楽しみにしています」とコメントしている。

世界での3Dプリント代替肉の発展

出典:Cocuus

3Dプリンターを使った代替肉開発では、国内外で多くの企業や大学が取り組みを始めている。

香港に拠点を置くAlt Farmは、A5ランクの代替和牛肉を2023年に上市することを目指している。イスラエルのSavorEatはバーガーチェーンBBBと提携し、タンパク質、脂肪から焼き加減までカスタマイズできるパティをその場で3Dプリントする装置を店舗に導入している。

Redefine Meatは昨年、3Dプリンター製のステーキ肉をイスラエル国内、欧州の一部の国で市販化した。

これらの企業は植物成分を使用しているが、イスラエルのMeaTechアレフ・ファームズ大阪大学などがバイオ3Dプリンターによる培養肉開発を進めており、3Dプリンターの代替肉開発への応用は今後さらに活発化していくだろう。

 

参考記事

Spanish Startup Cocuus Nets $2.6 Million For 3D Bioprinted Meat Acceleration

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Cocuus

 

関連記事

  1. 米Liberation Labs、アメリカで精密発酵工場の建設を…
  2. DICがスピルリナ由来ヘムを開発する米BYASに出資を発表
  3. 中国の培養肉スタートアップ南京周子未来食品が約3億円を資金調達
  4. イスラエルのChickPがひよこ豆由来のビーガンマヨネーズを開発…
  5. 食品廃棄物を活用してマイコプロテイン由来の代替肉を開発するMyc…
  6. 培養肉の法整備を目指す議員連盟が発足、年内に試食実現のための提言…
  7. チーズ大手のベル、精密発酵企業Standing Ovationと…
  8. 動物油脂のようにふるまう植物油脂を開発するLypid、約4.7億…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

「食品発酵業界のボトルネック解消」を目指すplanetaryが約10億円を調達

スイス、ジュネーブを拠点とするスタートアップ企業planetary(プラネタリー…

トマトで代替マグロを開発するスペイン企業Mimic Seafoodとは

スペインのフードテック企業Mimic Seafoodはユニークな原料を使って代替…

食品製造で発生する廃糖水で菌糸体粉末を作るHyfé Foodsが約2.6億円を調達

Hyfé Foodsは低炭水化物、高タンパク質の菌糸体粉末の生産を目指す米国イリ…

培養肉アレフ・ファームズ、安価でオープンな増殖培地の開発でWACKERと提携

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズとドイツの化学メーカーWACKERは、培…

ピザ組み立てロボットを開発するPicnicが約17億円を調達

ピザ組み立てロボットを開発するPicnicがシリーズAラウンドで1630万ドル(…

セイバーイートが植物肉用3Dプリンターをアメリカの大学へ初導入

3Dプリンターで植物肉を開発するイスラエル企業セイバーイート(SavorEat)…

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/04 10:11時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/04 19:30時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/04 23:01時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/04 16:20時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(10/04 09:32時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(10/04 18:57時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP