「培養肉未来創造コンソーシアム」は、4月13日に開幕した大阪・関西万博で、3Dバイオプリント技術を用いた培養肉の実物展示と、家庭用ミートメーカーのコンセプトモデルを公開している。
展示は大阪ヘルスケアパビリオン1階の「ミライの都市」エリアで行われている。
同コンソーシアムは、大阪大学大学院工学研究科、島津製作所、伊藤ハム米久ホールディングス、TOPPANホールディングス、シグマクシス、ZACROSの6者で構成されており、異業種連携によって培養肉の技術開発を進め、2031年の商用化を目指している。
家庭で好みに応じた霜降り肉を出力|ミートメーカーの構想

出典:培養肉未来創造コンソーシアム
今回展示されるミートメーカー(コンセプトモデル)は、「家庭で作る霜降り肉」をテーマに、将来的には家庭のキッチンで個人の健康状態や好みに合わせてオーダーメイドの霜降り肉を出力できることを想定している(ブース詳細はこちらから)。
培養肉研究に関わる大学・企業は、以前より万博での一般向け試食の提供を目指してきたが、国内では安全性の法整備がまだできていないため、実現はしなかった。
そこで、今年7月8日には、大阪ヘルスケアパビリオン内「リボーンステージ」にて、焼いた培養肉の香りを体験できるイベントも開催される予定だ。
大阪大学、培養牛肉の試作品に成功|国内でも加速する試作品と評価
NHKの報道によると、大阪大学で培養肉の研究開発を行う松崎典弥教授は、約9cm×15cmの培養牛肉を2枚完成させた。
松崎教授らはまた、万博での展示に先立ち、初となる官能評価も実施。実際に3Dバイオプリンタで出力された培養肉を試食し、噛んだ時の肉のほぐれ感など、本物に近いという印象だったという。
こうした取り組みは大阪大学に限らず、日本国内でも広がっている。培養肉の実用化に向けた研究が進むなか、官能評価を通じて製品としての完成度を高める動きが加速している。
昨年8月には、東京大学竹内昌治研究室が厚さ1.5cmの培養肉(5.5cm×4cm×1.5cm)の作製に成功したと発表。竹内教授らもまた、日清食品ホールディングスと協力して、2022年3月には研究関係者による試食と官能評価を実施した。
さらに、今年2月には日本初の細胞農業企業インテグリカルチャーが7つの試作品を発表し、約30名の開発関係者を招いた官能評価会を開催した。
万博で体感する、培養肉のある未来

Foovo(佐藤)撮影 2024年7月下旬
大阪万博は、一般の人々が培養肉の実物を初めて目にする機会となる。
今回の展示は、単なる技術の披露ではなく、食料問題や気候変動といった地球規模の課題に対して、培養肉を社会にどう定着させるかを問いかけるものである。
10年後には一家に一台ミートメーカーがあり、自宅で細胞から自分の好みに応じた培養肉を作る未来が訪れているかもしれない。食器洗濯機のように、最初はもの珍しかった技術が、いつしか当たり前の存在となる可能性がある。
すでに海外では制度面の整備が進んでいる。ヒト向けの培養肉では、シンガポール、アメリカ、イスラエル、香港に続き、先日にはオーストラリア・ニュージーランドでも当局により承認がおり、残るプロセスを経て、6月中旬には合法的に販売が認可される見込みとなる。

Foovo(佐藤)撮影 シンガポールの小売店にて 上から2段目が培養肉 2024年7月下旬
筆者が昨年7月に訪れたシンガポールの小売店では、通常の肉と並んで培養肉が陳列されており、消費者の選択肢の一つとして存在していることに驚きを禁じえなかった(上記写真)。シンガポールで実際に2社の製品を試食した体験(Vow、GOOD Meat)からは、培養肉がすでに消費の選択肢として定着しつつあることを実感した。
昨年には培養肉発祥の地とされるオランダでも承認前の試食が解禁されるなどしたが、日本ではまだ一般向けの試食は叶わない。しかし、今回の万博における展示や香り体験を通じて、培養肉が身近にある未来の生活をひと足先に感じることができるだろう。
参考記事(プレスリリース)
「培養肉未来創造コンソーシアム」が大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンで培養肉の実物とミートメーカーを「家庭で作る霜降り肉」として展示
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アイキャッチ画像の出典:培養肉未来創造コンソーシアム