サンフランシスコのフードテック企業Kuleanaは、クロマグロを使わない「リアルな寿司」を開発中だ。
代替魚の開発によって従来の水産業を変え、環境への負の影響を減らすのが狙いだ。
Kuleanaは2019年に設立されたフードテックのスタートアップ。
ヴィーガン用の魚代替食品を開発するフードテックだが、すべての魚介類をターゲットとしているわけではない。同社が狙うのは、寿司にできる、刺身の代替品だ。
Kuleanaの共同創設者Hurtadoは、刺身には根強い人気があるにも関わらず、刺身になるような代替魚がないことに「市場の空白」を見出し、開発に踏み切ったという。
同社の最初の商品はKuleana Akami。Akamiは名前のとおり、魚の「赤身」を意味している。
Kuleana Akamiは、Kuleanaの特許技術を用いて開発された、100%ヴィーガン用のクロマグロ代替品だ。特に、クロマグロの”背上”と呼ばれる、中トロになる部位とそっくりな歯ごたえ、食感を再現している。
3Dプリンタは使わず、足場材料を開発することで、生の魚と同じ味や食感を再現した。Kuleanaの共同創設者Jacek Prusによると、3Dプリンタを使うと商品の見た目や食感が「調理済み」になってしまうという。
Kuleana Akamiは、小型藻類、大型藻類、ピープロテイン(えんどう豆のタンパク質)、DHAが豊富な藻油(algae oil)、鉄、植物繊維、植物性素材を使っている。
Kuleanaは年末までに全米の寿司屋とパートナーシップを締結して、Kuleana Akamiを市場に出したいと考えている。サンフランシスコ、バルセロナで実施した味覚テストは成功に終わり、すでに5万ポンド(約22トン)を超える注文の意思表示があったという。
最終ゴールは今の水産業に終止符を打つこと
Kuleanaの最終的な狙いは、これまでの水産業に終止符を打つことだ。必要以上の水産業や、プラスチックによる汚染による生息環境の破壊を懸念している。
特に、クロマグロは絶滅の恐れのある絶滅危惧種に指定されている。クロマグロ代替品を開発することで、クロマグロ絶滅の危機を防げる可能性が高まるだけでなく、海洋の生態系に与える負の影響を減らせる可能性があるのは明らかだ。
食肉産業についていえば、ビヨンド・ミート、インポッシブル・フーズなど主要な植物性代替肉が思い浮かぶが、魚介類にいたっては主要プレーヤーはおらず、市場は空白状態だった。水産物フードテックの競合としては、Good Catch、Hookedといったプレイヤーはいるが、商品はツナのように細長く裂かれており、寿司にできるような生の魚の「切り身」にそっくりな商品はない。
環境面、倫理面、健康面で問題のない魚介類を提供するのがKuleanaの理念だ。
Kuleanaが次に開発を考えているのは、マグロ以外の代替魚で、代替サーモン商品の販売を計画している。同時に、フードテックとバイオ技術両方の分野において研究開発を続けていく予定だ。
フードテック技術が実現する代替魚は、食糧問題、環境問題の解決の糸口になることは間違いない。
わたしたちの食卓に、海ではなく「陸」由来の魚が並ぶ日はそう遠くないだろう。
参考記事:
Plant-Based Food Tech Kuleana Is Making All Your Favourite Sushi Fish-Free
y-combinators-kuleana-wants-to-make-an-animal-free-substitute-for-raw-tuna/