2024/8/2追記・修正
フランスの培養肉企業Gourmeyが今月、EUで初めて培養肉の承認申請を提出した。
欧州への培養肉申請では昨年、ドイツのThe Cultivated Bが新規食品承認に向けた事前提出プロセスを開始したことを発表していたが、申請書を提出したことはまだ発表されていない。
Gourmeyは培養フォアグラの承認申請をEU当局へ提出し、欧州で初めて培養肉の承認申請を提出した企業となった。同社はEU以外にシンガポール、スイス、イギリス、アメリカでも申請を完了している。
仏Gourmey、EUで最初の培養肉申請
世界で人向けの培養肉の販売が認められているのは、承認順にシンガポール、アメリカ、イスラエルの3ヵ国、ペット向けも含めるとイギリスを含む4か国となる。実際に販売が実現したのはシンガポール、アメリカの2か国。上記は、培養肉をめぐる認可状況・申請状況をまとめたスライドとなる。
Foovoの調査では、2024年7月時点で培養肉が販売されているのはシンガポールで、米GOOD Meatの冷凍製品を販売するHuber’s Butcheryと、オーストラリアのVowが最初にパートナーシップを結んだTippling Club、2番目にパートナーシップを結んだレストランFuraの3か所のみとなる(※)。
(※)当初、Tippling Clubは記事に記載しておりませんでしたが、現在も提供中であることを確認したので追記しました(2024/8/2)。
欧州の新規食品規制は食品の安全性に関しては世界で最も厳しい枠組みの1つとされる。
EU市場で培養肉を販売するには、まず欧州委員会に申請書を提出する必要がある。欧州委員会はその有効性を確認後、加盟国に公開し、EFSAにリスク評価を委託する。EFSAは欧州委員会から申請書を受領した日から9ヶ月以内に、その意見を採択する決まりとなっている。
培養肉が承認されると、EU加盟国の27ヵ国で培養肉を販売できるようになるが、承認プロセス全体には最低でも18カ月かかると言われている。
承認を得るまでは時間がかかるが、いざ承認されればEU全体で販売できるようになり影響範囲は広い。EU市場は培養肉企業にとって、培養肉の社会実装を進めるうえでは時間をかけてでも突破したい「ラスボス市場」である。
GFIヨーロッパの委託を受け、YouGovが欧州15ヵ国で16,000人以上を対象に実施した調査では、13ヵ国の回答者の半数以上が、規制当局が培養肉を安全かつ栄養価が高いと判断した場合、培養肉の販売が承認されることに賛成していることが判明した。イタリアとハンガリーでは、政府が培養肉の禁止に動いているにもかかわらず、回答者の大多数がこのアプローチに同意したという。
タンパク質生産の多様化が重要
2019年に設立されたGourmeyは2021年、シードラウンドでフランス政府からの支援も受け、1000万ドル(当時約11億円)を調達。2022年10月にはシリーズAラウンドへ進み、フランス、パリに約4200㎡(46,000平方フィート)の商用工場を建設するため、4,800万ユーロ(約79億円)を調達した。設立から3年でスタッフは60名に増えた。
CEO(最高経営責任者)のNicolas Morin-Forest氏は、「タンパク質生産の多様化は、食糧安全保障を維持し、脱炭素化や生物多様性といった持続可能な目標に貢献するために極めて重要です。細胞性食品の生産を既存のアグリフードバリューチェーンに組み込むことで、レジリエントな食料システムに役立つ補完的なタンパク質源が得られます」と述べている。
Gourmeyは培養フォアグラを高級レストランから提供することを予定しており、審査が順調に進めば、2026年にはEUで培養フォアグラがレストランに登場する可能性がある。
EU非加盟国を含めた欧州全体では、他社が一足先に販売認可を取得する可能性もある。
フランスの培養肉企業Vital Meatは昨年12月にシンガポール食品庁(SFA)に新規食品の申請書類を提出、今年5月にはイギリスでも提出した。イスラエルのアレフ・ファームズは2023年夏にスイス、イギリスに申請書を提出している。
大手も参入する代替フォアグラ開発
代替フォアグラの開発では複数の企業が確認されており、大手ネスレも参入している。
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アイキャッチ画像の出典:Gourmey