デリバリー

食品ECスタートアップFarmsteadが小売業にGrocery OSをリリース、巨人アマゾンに対抗

 

食品ECのFarmsteadは、自社用食料品デリバリーソフトGrocery OS(グローサリーOS)を米国国内のスーパーマーケットが利用できるようにすることを発表した。

Grocery OSのリリースによって、米国のスーパーマーケットが自社でシステムを構築することなく、実店舗からオンライン店舗へ移行できるようになる。Grocery OSリリースの対象は、スーパーマーケット、ダークストア、ウェアハウスだ。

※ダークストアとは、ネットスーパー専用の店舗で、買い物客が店内に入らず、店員がピックアップ、デリバリーするための店舗。買い物客は受取用の駐車スペースで購入したものを受け取る。

 

コロナウイルスの感染拡大に伴い、食品EC市場は記録的な成長を遂げた。自宅待機、感染防止の必要に迫られ、多くの人がオンラインで食品を購入するようになった。

コロナ禍で業績を伸ばした食品ECのひとつがFarmsteadだ。

2016年にサンフランシスコに設立されたFarmsteadは、共同創始者Pradeep Elankumaran自身の食品調達の悩みがきっかけとなって誕生した食品デリバリーのスタートアップだ。

人々がオンラインで食品を購入するようになっても、ゼロから食品ネットスーパーを運営することは、実店舗経営とは大きく異なり、参入障壁がある。

そこでFarmsteadは、自社の食品ECサービスに導入しているソフト・Grocery OSをほかのスーパーなど小売業にリリースすることにした。既存システムに組み込んで使用が可能だ。

Grocery OS導入によってスーパーが予測的分析、需要の把握、工数管理などが可能となり、自社でシステムを開発することなく、デリバリー対応、在庫管理、ピッキング、包装などを低コストで強化できるようになる。

Farmsteadが食品のEC移行を促進するツールとして自社のGrocery OSをリリースする目的は、より多くのパイを獲得するためだけではない。小売業の巨人アマゾンとウォルマートに対抗するのが狙いだ

アマゾン傘下のホールフーズ・マーケットは2020年9月に宅配専用の食品スーパーをニューヨーク市ブルックリンにオープンした。新たに雇用された数百人の従業員は食料品の宅配業務に特化する。ウォルマートは宅配配送料が何度でも無料になるサブスクリプション(定額課金)型の会員サービスを始めている。

出典:ホールフーズ・マーケット

 

Grocery OSの他社展開はFarmsteadがベンダーとして小売業に入り込む初の試みとなる。同社はGrocery OSを小売業全体に展開することで、巨人Amazonに対抗したいと考えている。

社名は公開されていないが、Grocery OSはすでに米国トップ3の食料品店に導入されている。東海岸の複数の地域で急速かつ低コストでデリバリー対応を拡大している。

Farmsteadの収益は過去3~4ヶ月で6倍にまで増加した。Pradeep Elankumaranによると、同社が目指すのはFarmsteadを米国を代表する小売ブランドにすることであり、そのためにGrocery OSを使う。

巨人アマゾンが展開する食品ECに真っ向から立ち向かうFarmstead。小売業が一丸となって巨人を倒せるのか?今後の動向が見逃せない。

参考記事

Farmstead Launches Grocery OS to Help Other Grocers Get Those Online Dollars

Farmstead extends in-house software to other grocers

Farmstead

Online Grocer Farmstead Launches “Grocery OS” To Help Traditional Grocers Take Delivery In-House, Go Head-to-Head Against Amazon’s National Expansion

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:Farmstead

 

関連記事

  1. コカ・コーラ、ペットボトルなど容器を回収するリバース自販機を発表…
  2. デリバリー専門のスウェーデンVemblaが約7300万円を資金調…
  3. ドイツ大手小売業者REWE、同社初のビーガン専門スーパーを開設
  4. 漁業者と消費者をダイレクトにつなげるE-Fish、48時間以内に…
  5. コンタクトレスなデリバリーロッカーMinnowがSKS2020で…
  6. 代替タンパク質を「ニッチ」から「定番」に:業界リーダーが語る普及…
  7. まだ食べられる食品を定期宅配するImperfect Foodsが…
  8. アイルランド企業Evoccoは食料品レシートから気候変動への影響…

おすすめ記事

サケ・マス・コイを開発する欧州初の培養魚Bluu Biosciencesが約9億円を調達

ドイツの培養魚スタートアップ企業Bluu Biosciencesが700万ユーロ…

ビヨンドミートが代替ミルクにも参入か?ビヨンドミルクの商標を出願

アメリカの代表的な代替肉企業ビヨンドミートが、代替ミルクへの参入を進めている可能…

VEOSグループ傘下のベルギー企業Naplasol、マイコプロテイン企業Mycorenaを買収

ベルギーのマイコプロテイン企業Naplasolが、スウェーデンのMycorena…

ネクストミーツが代替肉でアメリカ市場に本格進出、代替ミルクの国内D2Cもスタート

日本のフードテック企業ネクストミーツがアメリカに本格進出する。同社は焼肉…

ソーラーフーズ、シンガポールでソレインの販売認可を取得

二酸化炭素と微生物を活用して代替タンパク質ソレインを開発するソーラーフーズ(So…

「米ぬか」をタンパク質源に:食糧と競合しない米タンパク質で収益性の高い稲作へ|FABEXセミナーレポ

畜産に伴う環境負荷、世界人口の増加による食料需要に対応するため、代替タンパク質は…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/21 14:06時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/20 23:44時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/21 03:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/20 20:01時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/21 12:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(11/20 23:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP