世界的にはフードテックのブームは高まる一方で、代替肉、代替卵、代替ミルク、さらには代替母乳を開発する企業が登場している。
日本でも「フードテック」という言葉は広がりを見せているものの、ハンバーガーではなく米を主食とする日本人の中には、まだピンとこない人もいるだろう。
こうした日本人の食文化の本質をとらえ、日本人にあったフードテック革命に挑む企業がいる。
日本発のベースフードだ。
ベースフードは「健康を当たり前に」というコンセプトで、ただの炭水化物ではない完全栄養食としての「主食」の開発に取り組んでいる。
同社が実現を目指すのは、栄養のインフラ。

出典:ベースフード
パンを食べるだけで、パスタを食べるだけで、知らないうちに健康になっていく。それでいて、食体験はこれまでと変わらない。しかも、美味しくて、リピートしたくなる。
そのために、必要な栄養がすべて盛り込まれた「主食」のアップデートに取り組んでいる。
サラダ、スープ、総菜などには手の届かないフードハンガーでも、完全栄養な食品にアクセスできるようにしたいという願いがある。
日本版ビヨンドミートともいえるスタートアップだが、創業当初から海外展開も視野にいれ、今年4月にはアメリカで完全栄養パンの販売を開始している。
SKSジャパン2020で18日、シグマクシスの田中宏隆氏とベースフード代表取締役社長の橋本舜(しゅん)氏の対談が行われた。

田中宏隆氏(左)と橋本社長(右) SKS2020ジャパンにて
2016年の創業時、同社の挑戦は完全栄養のパスタ(BASE PASTA)から始まった。
今では、BASE BREAD(ベースブレッド)が加わり、プレーン、メープル、チョコレート、シナモンの味が揃っている。
主食だけで健康になれる食品を
ベースフードが大切にしているのは、栄養が取れればOKではなく、食べる大切さ・楽しさを重視した商品開発。
10種類の栄養素を、サラダのように混ぜ合わせることで、完全栄養なパスタ、パンを開発している。
つまり、主食だけで健康になれる食品づくりに注力している。

BASE BREAD 出典:ベースフード
日本人の主なタンパク質摂取源は肉よりも、白米、パンや麺類だ。
わたしたちが当たり前に食べる「主食」に必要な栄養がすべて含まれていれば、だれもが健康を気にすることなく、栄養のある食事ができるようになる。
サラダや惣菜まで買う余裕のない人でも、主食に栄養がすべて詰まっていたら、健康がより「当たり前」になる。
ベンチマークは米ビヨンドミート
現在、ベースフードの公式サイトではBASE PASTA、BASE BREADを販売しており、定期購入もできる。
同社の売上のほとんどがD2Cによるものだという。

ベースフードの橋本社長 SKS2020ジャパンにて
同社は生産・倉庫はOEMとしているが、委託先任せにはしていない。
通常の生産ラインでは生産できないので、工場にラインを作り、生産をしている。
OEMを活用しつつ、上流から下流までベースフーズが責任をもって取り組んでいる。
自身が30代である橋本社長は、社会保険の負担がのしかかる世代として、次世代に対する責任もあるという。
現在は、人生100年時代と言われる時代。
寿命が延びて、生活習慣病になるのではなく、完全栄養食品によって長く健康を享受できる社会を目指している。
ベースフードがベンチマークしているのは、米国の代替肉企業ビヨンドミート。
ビヨンドは動物肉を植物肉に置き換えるコンセプトだが、ベースフードは、動物肉ではなく「炭水化物だけの主食」をターゲットにしている。
炭水化物しか取れなかった主食が、ほかの栄養素もとれる完全栄養の主食に代われば、より健康な社会を実現できると考えている。
コアが重なった味の素との協業

出典:ベースフード、味の素
ベースフードは今月、味の素との協業を締結した。
「おいしい食」を追求してきた味の素が、ベースフードの製品開発をサポートするほか、味の素の製品と組み合わせて外食産業へ提案するなど、販売チャンネルを広げていく。
病院やアスリートなどにもチャンネルをもつ味の素との協業によって、ベースフードの完全栄養食である主食がさらに普及し、「健康が当たり前」となる社会に近づいていくだろう。
大手とベンチャーとの協業では、「サブ」「メイン」の関係になることがあるが、2社の協業はまさしく「コアが重なった」ものだいう。
両社の関係については橋本社長は「AとBを足してXを探している感じがする。コアは同じだけど、べったりではなく、いい感じの緊張感がある」と語る。
「自分たちは信じているけど、他の人たちは信じていないことをやるのがスタートアップの本質。大企業とは考え方が違う。(味の素は)信じ切れないけど、異物を飲み込んでくれた感じがする」
田中氏が2社の協業について「互いの間にしきりのような壁があるけど、見ているところは同じ状態」と表現したように、味の素とベースフードの目指す方向、価値観が見事に重なったといえるだろう。

シグマクシスの田中宏隆氏 SKS2020ジャパンにて
海外でもBlendidのように、スタートアップと大手が共同ブランディングする動きがある。味の素との共同ブランディングも実現すれば、ベースフードの考えやコンセプトがさらに普及していくだろう。
「主食の完全栄養を実現することだけをひたすら考えてきた」
橋本社長は創業からの4年を振り返り、「主食の完全栄養をなしとげるにはどうすればいいかをひたすら考えてきた」と語る。
トッピングも含めて栄養が取れればいいのでは?という声もある中、完全栄養な主食を追求する。
「目標をおかわりしている感じだ」と語る橋本社長は、走り続ける原動力には、フードテックを取り巻く環境の変化もあるという。
4年前はフードテックと言う言葉もD2Cの言葉もなく、説明するのに苦労した。
今では毎年カンファレンスがあり、「フードテック」という言葉も誕生した。
ビヨンドミートが上場したことも関係あるという。
さらに、短期的な収益を追わないスタートアップならではの構造、投資家が許容してくれることも「原動力」の1つだという。
こうした動力を得て、ベースフードは今後も主食のイノベーションにエネルギーを注いでいく考えだ。

BASE PASTAで作ったパスタ 出典:ベースフード
美味しさと栄養バランスをかねそろえた開発の秘訣については「試行錯誤が7-8割」だという。科学的なプロセスは2割で、トライアンドエラーをひたすら続けてきた成果だと話した。
業績は伸び続けており、今回のセッションでは「いずれは年商10兆円を」という言葉も聞けた。
橋本社長は、完全栄養の主食が普及するのはまだ先で、やるべき新規事業がたくさんあると考えている。
「フードテックにおいて難しい領域を最初からやっている気がする」と語るが、日本人にとって受け入れやすい主食をターゲットとし、主食に完全栄養を実現するコンセプトは着実に成果をだしている。
おいしければ、口コミで商品は広まり、顧客の獲得につながっていく。
おいしさに徹底的にこだわり、炭水化物だけの主食から完全栄養食となる主食のイノベーションに挑むベースフードは、日本版のビヨンドミートと言える。
ハンバーガーよりも米・麺・パンを主食とする日本人にとっては、代替肉よりも、ベースフードの主食の方が身近で、受け入れやすいだろう。
現在、ベースフードは東京恵比寿で11/24-12/23の期間限定のカフェをオープンしている。
全国のプロントでは、完全栄養パスタ「ミートクリームソース BASE PASRA」が提供されている。
ベースフードは創業当初から海外展開も視野にいれており、2018年にはシリコンバレーにアメリカ本社を設立。アメリカで「BASE NOODLE」「BASE BREAD」の販売をスタートしている。
アイキャッチ画像の出典:ベースフード
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