このニュースのポイント
●南京周子未来食品が約3億円を資金調達
●2019年、中国で最初に培養肉開発に成功
●細胞から豚ひき肉の開発に取り組む
●中国イノベーションエリア南京国家農高区を拠点とする
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中国で初めて培養肉の開発に成功した南京周子未来食品が20日、Matrix Partners Chinaから2000万元(約3憶円)の出資を受けた。
調達した資金は、培養肉の開発、生産のスケールアップ、製品のアプリケーション拡大にあてるとしている。
※GFIの報道では社名が「Joes Future Food」となっているが、中国の報道では「南京周子未来食品」となっているため、この記事では後者の表記としている。
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イノベーションが集結する南京国家農高区を拠点とするスタートアップ
南京周子未来食品は2019に設立された培養肉スタートアップ。
同社は江蘇省の南京国家農高区を拠点とする。
南京国家農高区は2019年に中国国務院が建設を認可した産業モデルエリアで、ここに集まるプロジェクトの投資額は約802億円に達し、中国屈指のイノベーションが集結するエリアとなっている。
その主な取り組みの1つが代替タンパク質だ。
このイノベーションハブに入居する機関の中に南京農業大学がある。同大学の研究センターは2019年に中国で初めて培養豚肉を開発して話題を呼んだ。
南京周子未来食品は南京農業大学研究チームによるスピンオフベンチャーであり、その中核にいるのが、周光宏教授だ。
同社は現在、豚ひき肉の開発に取り組んでいる。
食べられる状態にするには、着色と香料のプロセスが必要だという。最終製品の栄養プロファイルと食感は、消費者の好みに応じてカスタマイズする。
1年で生産効率が10倍に
研究チームは、2019年11月、中国で初めて5gの培養肉の開発に成功した。
豚の筋肉幹細胞を採取し、体外で培養して培養肉を生産した。
周光宏教授は当時、「数個の細胞がどうやって5gの培養肉になるかというと、幹細胞のおかげです。しかし、高純度な幹細胞を取り出し、増殖能力を維持するのが難しいのです」と語っていた。
その後の2年で、研究チームは牛、豚の幹細胞の増殖能力を維持する手法を研究。
ついに、幹細胞の増殖を制御するうえで重要なシグナル伝達経路と抑制因子を発見し、生体内の環境を模倣することに成功した。
こうして「生産効率は著しく改善」し、1年前には5gの培養肉を生産するのに20日かかっていたが、現在では20日で50g生産できるようになった。
生産効率は10倍に向上したものの、周光宏教授は、「実験室で作る培養肉開発を0から1にするフェーズが終わったところ」と語り、いかにして1を100にするかが、今後の研究開発の重点だと語る。
課題はコスト
課題の1つとして、次のように生産コストの高さをあげている。
「培養肉の製造では、コストの70%が培地に使う血清となります。牛血清は500mLで数千元(1元=約16円)もしますので、血清フリーの培地の開発が必要です」
11月に中国で初めて開催された中国培養肉サミットで、周光宏教授は培養肉が食卓に並ぶまで、1gあたり現在の300元(約480円)から、3元(約48円)あるいは0.3元(約5円)までのコストダウンが必要だと指摘している。
この実現にあと5-10年かかるとの見解を示していたが、シンガポールで今月、レストランで培養肉の販売が開始されるなど、培養肉を取り巻く状況は刻々と変化している。
中国は培養肉の次の主流になるのか?
周光宏教授が培養肉開発をスタートしたのは2009年。
中国は人口が多いが資源が十分ではなく、抜本的な食肉生産技術が必要だと考え、培養肉開発に取り組んできた。
中国には南京周子未来食品のほかに、培養肉に取り組む企業が2社ある。
CellXとSiCellだ。
いずれも杭州を拠点とし、SiCellは培養肉用の培地の開発に特化している。
CellXはバイオ3Dプリンターによる培養肉を開発している。今月に資金調達を実施したばかり。2021年第2四半期までに最初の試作品を公開するとしている。
参考記事
PROGRESS: Startup Secures China’s Largest Cultivated Meat Investment Yet
国内首家“细胞培养肉”生产研发平台:南京周子未来食品获两千万融资
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アイキャッチ画像の出典:GFI