代替プロテイン

中国発の培養肉企業CellXが資金調達、2021年に試作品発表へ

 

 

このニュースのポイント

 

●中国で2020年に創業したCellXが資金調達(非公開額)

●CellXはバイオ3Dプリンティング技術を用いて培養肉開発に取り組む

2021年第2四半期に試作品発表

●Forward Foodingにより2020年フードテック500社に選出された

 

中国培養肉スタートアップのCellXは、数百万元の資金調達を実施した。

CellXは2020年に設立されたスタートアップ。

同社は組織工学とバイオ3Dプリンティング技術を活用して、細胞ベースの培養肉の開発に取り組んでいる。

畜産がかえるジレンマ

地球上で人が住める場所の45%が畜産のために使われ、さらに10%が家畜に与える飼料を育てるために使われている。

家畜を飼育するため必要な農地は全体の77%に達し、人が食べる食料を育てるための農地は全体のわずか23%にすぎない。

家畜は農地の大部分を使うにも関わらず、家畜由来のタンパク質は全体の37%にすぎない

また、牛肉1kgを生産するために11kgの穀物が必要となるなど、畜産物の生産には、その何倍もの穀物を用意する必要があり、農地の大部分を畜産が占めている

高密度に飼育する集約畜産には倫理的な問題があるほか、成長を早めるためのホルモン剤・病気を予防するための抗生物質の過剰使用も問題になっている。

家畜の排せつ物による悪臭、水質汚濁も問題視されている。

さらに、日本では2020年、鳥インフルエンザによる殺処分数が345万羽と過去最多となっている。

こうした畜産が抱えるジレンマを解決するために取り組むスタートアップは多い。

CellXもその1社で、創業者・CEOの楊梓梁は次のように語っている。

「人類は1万年前、農業革命により、人のために野生動物を使うようになりました。畜産業による十分な食料が人類の現代の文明を築いたといえます。

ですが、土地や水資源、エネルギーの過剰使用、温室効果ガスの排出、抗生物質やホルモン剤の過剰投与、さらには動物の基本的な福祉の蹂躙など、畜産業はたくさんの問題を抱えています。

CellXの願いは、新しい農業改革を起こすことです。細胞を使って、動物の体外で培養肉を開発し、これまでの畜産が抱える問題を解決します。細胞農業を実現することで、人、動物、環境に貢献したいと思っています」

2021年第2四半期に試作品を発表予定

CellXの公式サイトには詳細な情報は公開されていない。

同社はIFA国際未来農業中国の代替タンパク質部門トップ20社に選ばれているほか、イギリスの雑誌Forward Foodingが選出した2020年世界のフードテック企業500社に選ばれている。

現在は、浙江大学と協業し、技術開発・製品開発を進めている。

2021年第2四半期に最初の培養肉プロトタイプを発表する予定で、この時に300万ドルの出資を募るという。

現在、中国の培養肉企業は数えるほどしかないが、昨年の両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)で、「代替肉」はホットなテーマだった

そのきっかけは、孫宝国政協委員の次の言葉

「培養肉研究を行い、先進国が技術を独占している状況を打破すること。中国の将来の食肉供給を確かなものとして、代替肉開発のトップの座に立つこと。

これらには戦略的に重要な意義がある」

と述べ、代替肉の開発を強化し、法規制を整えるよう呼びかけた

この言葉にこたえるように、12月には南京周子未来食品が約3億円の資金調達に成功している。

CellXの今回のラウンドには、中国のLever China(力矩中国替代蛋白基金)、イギリスのAgronomics、ドイツのPurple Orange Ventures、チリのHumboldt Fundなどが参加した。

CellXは今回の資金を製品開発、チーム拡充にあてるとしている。

 

参考記事

36氪首发丨综合运用3D生物打印与组织工程技术,细胞培养肉公司CellX完成数百万元种子轮融资

 

関連記事

 

 

関連記事

  1. Umami BioworksとShiok Meatsが合併計画を…
  2. ジャガイモで卵白タンパク質を開発するPoLoPo、2026年の上…
  3. ネスレが精密発酵によるミルク「Cowabunga」の試験販売を開…
  4. 香港グリーンマンデーの代替豚肉オムニポークが米国上陸
  5. 精密発酵により代替タンパク質を開発する企業23社
  6. イスラエルのMarineXcell、独自の核初期化技術で細胞培養…
  7. Remilkがイスラエル食品大手CBCグループと提携、1年以内の…
  8. 極限環境微生物で代替パーム油を開発するシンガポール企業Biteb…

おすすめ記事

細胞培養でチョコレートを開発するCalifornia Culturedが約4億5000万円を調達

細胞培養によりチョコレートを開発するCalifornia Culturedがシー…

アレフ・ファームズがイスラエルで培養牛肉の承認を取得|牛肉では世界初

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズが、イスラエル保健省から培養牛ステーキ肉…

Farmless、二酸化炭素によるタンパク質生産に向けて約1.8億円を調達

オランダのフードテック企業Farmlessは今月、プレシードラウンドで120万ユ…

中国の植物肉ブランドHey Maetが資金調達に成功、中国全土への展開を狙う

中国の植物肉ブランドHey MaetはShuangta Food(双塔食品)より…

マイコプロテイン企業Mycorenaが正式な倒産申請を発表、新たなオーナーで事業の継続へ

欧州の代表的なマイコプロテイン企業Mycorenaが正式に倒産申請をしたことが発…

精密発酵カゼインで乳製品業界の変革を目指すFermifyが約6.7億円を調達

精密発酵カゼインの生産プラットフォームを開発するオーストリア企業Fermifyは…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/11 13:50時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/11 23:20時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/12 03:02時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/11 19:42時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(10/11 12:03時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(10/11 22:38時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP