アメリカで漁師と消費者をダイレクトにつなげる新しいサービスがある。
獲れたての魚を48時間以内に宅配するE-Fishだ。
E-Fishの特徴は、冷凍した魚ではなく、新鮮な魚を自宅まで48時間以内に届けること。
他社と同様、新型コロナウイルスによってビジネスモデルの転換を余儀なくされた会社だが、E-Fish、漁師、消費者にとっては、トリプルウィンな転換だったといえる。
波止場から自宅へ魚を直接届けるE-Fish
E-Fishは以前、ジャン・ジョルジュなどのレストランへ魚を販売していたが、コロナウイルスの発生により、全米で多くのレストランが閉鎖に追い込まれ、E-Fishは重要顧客を失った。
レストランが閉鎖されると、レストランで魚を消費するはずだった消費者も来られなくなる。
レストラン・消費者にリーチする方法が途端に閉ざされてしまったE-Fishは、販売チャネルを大幅にシフトすることを決める。
こうして漁業者と消費者をダイレクトにつなげるD2Cプラットフォームを構築した。
E-Fishのビジネスモデルは次のとおり。
E-Fishのプラットフォームに注文が入ると、E-Fishと契約している漁業者に注文がダイレクトに届く。たいていの場合、注文時にはまだ獲っていないという。
漁師は注文を受けて、海へ出て、魚を獲り、処理したものを消費者へ配送する。
このモデルを同社が「船渠からドアへ」と名付けるとおり、商品に触れるのは漁業者と消費者だけ。
誰が獲り、いつ獲ったものか、海から出てからどれくらい経過したのか、誰の手を経由したか、すべて追跡可能になっている(E-Fishは商品に触れない)。
商品は、エビ、カニ、ホタテ、キャビア、ロブスターから各種魚とさまざま。
公式サイトの商品ページには提携する漁業者の名前が記載されている。現在は、アラスカ、ハワイをのぞいた全米への配達に対応している。
たとえば、銀だらは2ポンド(約900g)で70ドル(約7300円)。割高だが、この価格には「新鮮さ」「追跡可能」が含まれている。
同社によると、従来の水産市場では漁師が品質にこだわりたくなるようなインセンティブがほとんどないという。
E-Fishは、漁師が追跡可能な高品質の魚に対して適正な対価を得られるようにすることで、漁師にインセンティブを提供したいと考えている。
共同創業者でありCEOのJeffrey Tedmori氏はSpoon誌の取材に、D2Cモデルへの転換は、E-Fishが集客・販売を担当し、漁業者がより漁業に専念できる点で、漁師にとってもメリットがあると語っている。
同業者をまとめるD2Cプラットフォームの急速な台頭
新型コロナの感染拡大後、E-FishのようにD2Cへビジネスモデルを転換させる動きが増えている。
代替肉で有名なビヨンドミートや、代替魚のGood Catchなどが2020年にD2Cプラットフォームを構築したのもその1例となる。
この2社は自社でD2Cサイトをオープンしたケースだが、E-Fishのように、複数の同業者をオンラインで消費者にダイレクトにつなぐ、D2Cプラットフォームを構築する流れも加速している。
たとえば、地域の複数農家と消費者をオンラインでつなげるD2Cプラットフォームを展開するHarvieは、ユーザーの好みにあわせた農作物を提案する。
Rosieのように地域の小規模・独立系食料品店の在庫品を1つのプラットフォームに集約し、ユーザーがアプリで各店舗の商品を注文できるサービスも登場している。
E-Fishは2020年に、MITが注目する15のスタートアップ企業に選ばれた。
これまでにエンジェル投資家からの出資を受けており、現在は、コロラドを拠点とするアクセラレーターTechstarsが展開するTechstars Anywhere acceleratorというバーチャルプログラムに参加している。
現在はマサチューセッツ州、メイン州、フロリダ州、カリフォルニア州の漁業者と契約しており、今後はさらに地域を拡大していきたいとしている。
参考記事
E-Fish Delivers Fresh Fish to Your Door 48 Hours After It’s Been Caught
アイキャッチ画像の出典:E-Fish