酵母を活用して代替パーム油を開発するClean Food Groupは今月、ドイツのDoehler Venturesから出資を受けたことを発表した。Doehler Venturesは食品・飲料向け原料のリーディングカンパニーであるDoehlerの投資部門となる。
Doehlerによるスタートアップへの出資は、植物油脂の中でも最も生産量が多く、森林破壊の主要要因とされるパーム油に代わる選択肢として、食品大手が持続可能な代替パーム油に着目していることを表している。
Doehlerが代替パーム油のClean Food Groupと提携
Doehlerは食品、飲料、栄養原料業界に向けて、技術主導型の天然原料、原料システム、ソリューションを生産、販売、供給している。
Doehlerは出資のほかにパートナーシップの一環として、Clean Food Groupのスケールアップ、商用生産の実証、承認に必要な製品バッチの製造をサポートする。二社は今後もパートナーシップを継続していくとしている。
Clean Food Groupは独自に開発した酵母を使用し、環境に優しいプロセスで、栄養や脂肪酸組成が本物と同等なパーム油を生産している。
同社共同創業者兼CEOのAlex Neves氏は、「Doehlerグループの支援により、当社の革新的技術のスケールアップを加速し、サステナブルな代替パーム油を市場に早急に投入できることを嬉しく思います」とコメントしている。
サステナブルな代替パーム油生産に向けて
現在、世界のパーム油生産の84%をインドネシア、マレーシアが占めている。パーム油は赤道付近でしか生育せず、地球上の動植物種の半分が生息している生物多様性が豊富な熱帯雨林減少の原因となっている。
パーム油の使用が拡大した場合、世界で絶滅の危機に瀕している哺乳類の半分以上、絶滅の危機に瀕している鳥類の3分の2が影響を受ける可能性があると指摘されている。
一方、パーム油市場は2021年の506億ドルから2027年には655億ドルにまで拡大すると予想されており、よりサステナブルな代替パーム油が求められている。
ユニリーバは6月、サンディエゴを拠点とするGenoと協力し、微生物を活用した代替パーム油の商用化に取り組むベンチャー企業への出資を発表した。Genoは糖と微生物を活用し、洗剤の主要成分である界面活性剤を作成するプロセスを確立した。これにより、初期の試算では、パーム油由来のカーボンフットプリントを50%削減できると見込んでいる。
米Zero Acre Farmsのプロセスでも、微生物が糖を消費して、発酵により油に変換した後、培養物を圧搾して油を抽出している。同社は植物油脂による森林破壊をなくすことに焦点をあてており、パーム油に限らず、植物油脂の完全な代替を目指している。
米C16 biosciencesも代替パーム油を開発しており、先月には50,000リットルでの発酵を完了した。同社は現在、商用生産を行う施設準備に向けて、いくつかの製造受託機関(CMO)と契約を締結しており、2023年上半期中に商用生産の準備が整う見込みであることを海外メディアFoodnavigatorに語っている。
参考記事
Doehler invests in lab-grown palm oil alternative
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アイキャッチ画像の出典:Clean Food Group