イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods(旧称MeaTech)は7日、独自の3Dプリンティング技術で生成された培養霜降り牛肉を発表した。
バイオ3Dプリンティングによる培養霜降り牛肉
Omakase Beef Morselsと名付けられた100%細胞培養による霜降り牛肉は、ウシ幹細胞を分化させた筋肉組織と脂肪組織の複数の層で構成されている。
各層は筋肉、脂肪用の異なるバイオインクを使って別々に3Dプリントされる。切り身のジューシーさや霜降りなどに影響する筋肉・脂肪の層は、さまざまな配列に調整できるという。
Steakholder Foodsの技術により、任意の形状、幅、霜降り率で製品を生成することが可能になり、和牛を連想させる霜降り精度を超えることさえ可能だという。また、3Dプリンターを活用することで、製品を一貫して、大量に提供することも可能になる。
今回発表された培養霜降り牛肉は、同社が最近出願した、連結した構造内でさし生成の制御を可能とするバイオ3Dプリンティング特許技術の成果となる。Steakholder Foodsは「stacked, multi-layered meat-emulating consumable」という仮出願中の特許について、3Dプリンティングのエンジニアと細胞生物学者による集中的な協力による成果だとしている。
「培養肉部門全体のブレイクスルー」
Steakholder Foodsは昨年12月、バイオ3Dプリンターを用いて100グラムを超える培養ステーキの生産に成功したことを発表した。
過去1年に実現した技術的な進展として、細胞の生存率に影響を与えずに、複雑な肉製品を工業的生産速度で正確に生産できる独自のマルチノズルモジュラープリントヘッドの開発や、筋肉組織に外力を付与することで高品質で複雑な構造の肉を作るシステム・方法の開発などを挙げている。
また、畜産肉の重要な特性を反映するために、筋繊維形成の加速・強化で大きな前進があったことも報告している。
Steakholder Foodsは先月、iPS細胞を使用した培養豚肉の開発を開始することを発表した。同社は、ベーコン、ポークチョップ、ハムなどの構造化された豚肉製品の開発時間を短縮するために、大手iPS細胞株プロバイダーと提携している。
7月には培養シーフードを手掛けるUmami Meatsと提携し、開発対象にシーフードを追加した。培養脂肪を開発する傘下のPeace of Meatが培養ハイブリッド肉の開発で英ENOUGHと提携するなど、市販化に向けた準備を進めている。
今回の培養霜降り牛肉発表についてCEOのArik Kaufman氏は、「この製品は、私たち、そして培養肉部門全体にとって大きなブレイクスルーです(中略)。これは、肉の『聖杯』であるステーキを完成させるという私たちの目標における重要なマイルストーンでもあります」とコメントしている。
これまでに培養肉の販売が認可された唯一の国はシンガポールとなる。Foodnavigatorの報道によると、Steakholder Foodsから最初に上市される製品は鶏の培養脂肪になる可能性が高いという。
参考記事
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Steakholder Foods