Avant Meatsは培養タンパク質の生産コストを90%削減することに成功したと発表した。
また、さらなるコスト削減のために中国のバイオ医薬品企業QuaCell(中国語名:康晟生物)と提携したことも明らかにした。
Avant Meatsは他の培養肉企業と異なり、地元・中国人をターゲットに培養魚の開発に取り組む香港企業。
2018年に設立された同社は、中国四大海味とされる魚の浮き袋やナマコの開発に取り組んでいる。これらは中国で大変な人気を誇る一方で、絶滅の危機に瀕している。
Avant Meatsは浮き袋、ナマコに加え、昨年11月には培養魚の切り身の試食会を実施した。
培養魚に取り組む理由には、需要があること、絶滅のリスクがあることのほか、牛や豚の培養肉と比べて作りやすいことも関係する。

提携したQuaCell 出典:QuaCell
The Spoon誌の報道によると、Avant Meatsがこのほど提携したQuaCellの7000㎡の施設はISO・GMO認可を取得しており、2000L規模のバイオリアクターを有する。
Avant Meatsはウシ胎児血清(FBS)を使わない培地ですでに90%のコスト削減を実現しており、QuaCellとの提携によりさらに75%のコストダウンを狙う。
これは原料を医薬品グレードから食品グレードに変え、大規模なバイオリアクターに合わせて配合を最適化することで達成する。
Avant Meats によると、QuaCellとの提携で設備投資を削減でき、スケールアップ達成の時期を12ヵ月以上早めることができるという。
QuaCellはFDA基準に準拠したクライアントと取引している。製造基盤のある同社との提携によってAvant Meatsの大量生産・コストダウンが加速するのは間違いないだろう。

出典:Avant Meats
培養肉を大衆品にするには、動物肉と同等価格までコストダウンすることが必至となる。
現在、世界には細胞農業に取り組む企業は80社ほどあるが、その多くがコストダウンと量産という2つの課題解決に取り組んでいる。
イスラエルのFuture Meatは3年かけて1000分の1のコストダウンに成功し、培養鶏肉の生産コストを1/4ポンド(約113g)あたり7.5ドル(約780円)まで削減することに成功している。
カナダのFuture Fieldsは培養鶏肉を開発するプレーヤーから培地の開発に注力する方向へビジネスシフト。先日には約2億3千万円を調達し、最初の製品を培養肉企業に出荷したことを発表した。
韓国のスタートアップCellMEATは2年かけて、FBSに代わる独自の細胞培養法と培地を開発。先月、約4億7千万円を調達した。

2013年に約3500万円した培養ハンバーガー 出典:Mosa Meat
8年前には約3500万円の培養肉ハンバーガーを発表したモサミートも、独自の技術で培地からFBSの除去に成功し、コストを1/88にまで落とすことに成功している。
昨年、中国で初めて開催された培養肉サミットでは、培養肉が食卓に並ぶまで5-10年かかるとの見解が発表されたが、5年以内には培養肉が畜産肉と同等価格になるという見解もある。
投資熱も培養肉への注目度の高さを表しており、2021年になって資金調達を実施した培養肉企業は10社以上にのぼる。
Avant Meatsは昨年12月に約3億円の出資を受けており、バイオ医薬品企業QuaCellとの提携によって、市販化とコストダウンへ向けてさらに歩みを早めるだろう。
参考記事
Avant Meats Says it has Achieved 90 Percent Cost Reduction for Its Cultured Protein
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アイキャッチ画像の出典:Avant Meats
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