代替プロテイン

微生物でタンパク質を作るNature’s Fyndが約46億円を資金調達、2021年に製品化へ

 

このニュースのポイント

 

●Nature’s Fyndが約46億円を資金調達

火山に生息する微生物からタンパク質を開発

●2021年の製品化を目指す

●ビル・ゲイツの投資ファンド、アル・ゴアの投資会社からの支援を受ける

●微生物由来のタンパク質で乳製品、肉を開発

●代替タンパク質の第3の柱とされる微生物発酵

 

 

微生物発酵でタンパク質を開発する米Nature’s Fyndが、4500万ドル(約46億円)を資金調達した。

Nature’s Fyndはこの資金で、製品化を加速し、2021年の市場投入を進めるとしている。

高まる微生物発酵によるタンパク質開発

Nature’s Fyndは微生物を発酵させてタンパク質を開発するスタートアップ。

近年、発酵タンパク質を作る企業は多く、代替タンパク質の第3の柱と呼ばれている。

GFIのレポートによると、微生物発酵技術で代替タンパク質に取り組む企業は44社

出典:GFI

2018年の23社から約1.9倍に増えており、この約半数は、2019年と2020年7月までの19カ月に立ち上がっている。

つまり、1ヵ月に1社以上が新たに誕生していることになる

Nature’s Fyndの微生物を原料にして作られるタンパク質は畜産と比べ、使用する土地は1%、排出する温室効果ガスは1%、使用する水は13%ですむ。

土地利用の効率性は動物性タンパク質の3.6倍、植物性タンパク質の1.8倍だという。

つまり、環境に対する負荷・生産コストを大幅に抑えて、タンパク質を作ることができる。

火山帯に生息する微生物から作られるタンパク質「Fy Protein」

Nature’s Fyndが使う微生物には特徴があり、火山帯に生息する極限環境微生物を使っている。

 

極限環境微生物とは、極限環境でのみ増殖できる微生物のことをいう。

 

 

Nature’s Fyndはアメリカのイエローストーン国立公園の熱水泉に生息する微生物を使って、代替タンパク質Fy Proteinを開発している。

具体的には、Fusar­i­um strain flavolapisと呼ばれる極限環境微生物由来の菌類タンパク質を発酵させてFy Proteinをつくる。

イエローストーン国立公園の熱水泉

最終的にできるFy Proteinは、9つの必須アミノ酸、食物繊維、カルシウム、ビタミンを含む完全なタンパク質で、代替肉や代替乳製品を作ることができる。

ビル・ゲイツのファンドも出資

Nature’s Fyndは今年3月にも資金調達を実施し、シリーズBラウンドで8000万ドル(約82億円)を調達した。

ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、ジェフ・ベゾス(アマゾンCEO)、馬雲(アリババ創業者)による10億ドル規模のファンド・Breakthrough Energy Ventures

アル・ゴア(元米副大統領)とデビッド・ブラッド(ゴールドマンサックスの元幹部)による投資会社Generation Investment Management

などがこのラウンドに参加した。

名だたるメンバーからの出資を受けたNature’s Fyndだが、新型コロナウイルスによる影響を免れることはできなかった。

売上・マーケティングの準備は停滞したものの、製品化のタイムラインは予定通り進んでいるという。最近、従業員を100名まで増やし、技術のスケールアップに取り組んでいる。

その1人、Tom Freyはカーギルに16年間勤務したエンジニア。発酵技術の専門を持つFreyは、2021年に目標を定めた商品化に向けて、スケールアップに取り組む。

Nature’s Fyndは、B2Bで市場投入する予定でいる。

NASAの研究プロジェクトから生まれたNature’s Fynd

Nature’s Fyndは2016年にThomas Jonasによって設立されたスタートアップ。

CEOのThomas Jonas 出典:Nature’s Fynd

同社の誕生は、2009年にさかのぼる。

NASAが支援する研究プロジェクトに従事ししていた科学者Mark Kozubalは、極限環境で生息する微生物を発見した。

この微生物は「Fusarium strain flavolapis」と名付けられ、Nature’s Fyndがタンパク質を作るための原材料となった。

Mark Kozubalは、CEOのThomas Jonasと共に、Nature’s Fyndを立ち上げ、現在は最高科学責任者(CSO)を務めている。

Mark Kozubal 出典:Nature’s Fynd

今回の資金調達は、Oxford FinanceTrinity Capital Investmentが主導した。Nature’s Fyndがこれまでに調達した資金は総額1億5800万ドル(約163億円)にのぼる。

2021年の市販化を目指しているが、最初の商品が何になるかは公表していない

発酵タンパク質に取り組むスタートアップが調達した資金は、2020年の最初の7ヵ月だけで4億3500万ドルにのぼる。

この中には、微生物発酵の代表格とされるパーフェクトデイのほかに、米・オーストラリアのChange Foods、イスラエルのRemilk、イギリスのBetter Dairyなど新しい企業がいる。

後者の3社がこの1ヵ月で調達した資金は14億円だが、Nature’s Fyndは今回だけでその約3倍に相当する資金を調達しており、微生物発酵技術に対する注目の高さがうかがえる。

 

参考記事

Nature’s Fynd Raises $45M For 2021 Launch of its Fermented Protein

Nature’s Fynd raises $45M and hires CPG veterans

Nature’s Fynd closes $45m debt round to scale up its consumer offering

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:Nature’s Fynd

 

関連記事

  1. Melt&Marble、精密発酵による油脂のプロトタイ…
  2. 香港グリーン・マンデーが約73億円の資金調達に成功、年内に広東に…
  3. Doehlerが代替パーム油を生産する英Clean Food G…
  4. 培養油脂のPeace of Meatと英ENOUGH、マイコプロ…
  5. ドイツのAlife Foodsがアニマルフリー培養培地を用いて培…
  6. 日本ハム、動物血清の代わりに食品成分で培養肉を作製
  7. 食肉大手JBSが培養肉に参入、培養肉企業BioTech Food…
  8. イート・ジャストがシンガポールにアジア初の生産拠点を建設、培養肉…

おすすめ記事

培養ハイブリッド肉を開発する米New Age Meatsが約2億1千万円を調達

カリフォルニアを拠点とする培養肉スタートアップのNew Age Meatsがシー…

培養肉スーパーミートと欧州大手養鶏企業PHW、培養肉の欧州導入で合意

テルアビブを拠点とする培養肉企業スーパーミート(SuperMeat)は、欧州市場…

培養魚のWanda Fishがタフツ大学と独占的ライセンス契約を締結

イスラエルの培養魚スタートアップWanda Fishは、培養魚の開発でタフツ大学…

培養油脂のMission Barnsが食肉加工企業と提携、培養ソーセージのスケールアップ生産を完了

植物性原料を使った代替肉が普及するなか、代替肉をより本物に近づける試みとして、細…

スイスの小売大手ミグロスがビーガンゆで卵を発売

スイスの小売大手ミグロスが植物性のゆで卵の発売を発表した。ミグロスの子会社ELS…

中国の培養肉Joes Future Foodが約12億円を調達、実証プラント建設へ

中国の培養肉企業Joes Future Food(中国語名:周子未来)がシリーズ…

次回Foovoセミナーのご案内

精密発酵レポート好評販売中

培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(03/26 17:26時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(03/26 21:09時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(03/26 14:42時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(03/27 07:37時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(03/26 17:16時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP