アグテック

マイクロ流体チップによる農業用栄養分析デバイスを開発したNordetectが約1億6千万円を調達

 

室内垂直農業用の検査デバイスを開発するデンマーク企業Nordetectが、シードラウンドで150万ドル(約1億6千万円)の資金調達を実施した。

Nordetectは、オランダのアグテック企業PrivaのHorticulture Innovation Labが主導したコンテスト「Horti Heroes challenge」で昨年優勝に選ばれたスタートアップ企業

同社は作物が成長するのに必要な、窒素、リン、カリウムといった主要な多量元素の量を検知するマイクロ流体チップを活用したポータブルデバイスを開発した。

出典:Nordetect

Nordetectのナノセンサーは葉、土壌から肥料まであらゆるサンプルに使うことができる。土壌、水、葉や植物組織を分析することで、作物の健康状況、環境因子、栄養レベルを把握できる

同社商品の優れているところは、これまでであれば検査に数週間かかっていたところを、わずか数分で検査ができるようになったことだ。

土壌などのサンプルを採取し、抽出液とミックスしたものを、チップに載せて、デバイスに挿入するだけ。

出典:Nordetect

農業では、安全のために肥料や農薬が過剰使用されることがあるが、肥料や農薬の過剰使用は、環境や土壌、栽培される食物にも影響を与える

Nordetectは使用する化学物質の量を最適化する手段として、従来よりも迅速に土壌や水中の多量元素レベルを測定できる「農作物の血液検査」ともいえる商品を開発した。

同社のポータブルデバイスを使用すると、農家は正確な量の肥料を使い、作物の収量をあげられるほか、廃棄量も減らすことができる。

出典:Nordetect

Nordetectはリーフ野菜やトマト、キュウリなどの高価値な作物をターゲットとしており、これについて、CEOのKeenan Pinto氏は次のように述べている。

「これらの作物は、成長段階と発生段階とで必要となる栄養量が変化する作物です。最適な量の肥料を与えることができれば、著しく高い開花率と収量を達成することができます」

 

Nordetectは今回調達した資金で、自社技術を商品化し、アメリカやヨーロッパの室内垂直農家が同社のlab-on-a-chipを使えるようにしたいとしている。

農作物の状況を把握するためにセンサーを活用するアグテック企業は多いが、土壌センサーを開発する企業の多くは外での使用を想定している。

出典:Nordetect

室内農家に対する投資が増えていることからも、今後は室内垂直農業にセンサーによるソリューションを導入する動きは加速していくと思われる。

今回のラウンドはLuminate NYが主導し、RockstartSOSV (HAX)PreSeed VenturesVækstfondenが参加した。

Nordetectは2016年に設立されたスタートアップ企業。

Pinto氏によると、医療業界で効率性と携帯性が優先されることにヒントを得て、農業分野でも効率性・携帯性を同時に解決するツールを開発したという。

 

 

参考記事

Nordetect Raises $1.5M for Lab-on-a-Chip Controlled Ag Analysis

Portable Agricultural Sampling Technology

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:Nordetect

 

関連記事

  1. 二酸化炭素から動物飼料用のタンパク質を作るDeep Branch…
  2. Apeel Sciences、鮮度を保てるプラスチックフリーなキ…
  3. コーヒー豆の品質評価を自動化するDemetriaが約3億2千万円…
  4. 農家に植物の「内なる声」を伝えるInnerPlantが約6.2億…
  5. 米Apeel Sciencesがアボカドの熟度を即座に把握する新…
  6. フードロス削減のために米Surge Alertが開発した気候モニ…
  7. ゲノム編集で熱帯作物の栽培効率を高めるTropic Biosci…
  8. 家庭生ゴミを鶏の飼料に変える米Millが開発したキッチンデバイス…

おすすめ記事

インド発!ドーサ、ロティ、ビリヤニを作るMukunda Foodsの自動調理ロボット

日本でも人気の高いインド料理。このインド料理を自宅で手間をかけずに作れる…

捨てるはずのコーヒーかすでキノコ栽培|ヘルシンキノコが提案する気軽なサステナブルへの第一歩

コーヒー愛好家として、日々発生するコーヒーかすを有効活用できればと考えていた。…

Mycorenaのパイロット工場、拡張により欧州最大のマイコプロテイン工場に

マイコプロテインを使った代替肉を開発するスウェーデン企業Mycorenaは、スウ…

米イート・ジャスト、新しい培養鶏肉製品で再びシンガポール当局の販売許可を取得

アメリカのフードテック企業イート・ジャストが培養肉で再び快挙を成し遂げた。…

プラントベース×精密発酵を手掛けるAll G Foodsにオーストラリアの大手スーパーチェーンが出資

オーストラリア企業All G Foodsは、植物原料を使った代替肉と精密発酵によ…

Else Nutritionとダノンが協業、アレルギー対応の乳製品・大豆不使用のビーガン粉ミルクの商品化に向けて前進

乳幼児・子供向けのクリーンな植物性粉ミルク・離乳食を開発する米Else Nutr…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(09/15 13:37時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/14 23:06時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(09/15 02:47時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(09/14 19:29時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(09/15 11:51時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(09/14 22:27時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP