アグテック

家庭生ゴミを鶏の飼料に変える米Millが開発したキッチンデバイス

 

アメリカのスタートアップ企業Millは、家庭で発生する食品廃棄物を鶏の飼料に変換するキッチン用デバイスを開発した

Millが開発したゴミ箱ほどのサイズのMillキッチンビンは、家庭で発生する生ゴミなどの食品廃棄物を一晩で乾燥、収縮、脱臭し、同社が「Food Grounds」と呼ぶ栄養豊富なものに変える。

数週間ほどたちMillキッチンビンがいっぱいになったら、ユーザーはMillアプリで「Food Grounds」の送付手続きを行う。ユーザーから送られてきた「Food Grounds」を、Millのスタッフが鶏の飼料に変える仕組みだ。

Millの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるMatt Rogers氏は、「食べ物はゴミではありません。しかし今までは、食べ残しをゴミ箱に捨てる以外できませんでした。Millのメンバーシップは、食料を埋立地に行かせず、農家へ戻して、キッチンを素晴らしい香りにするための簡単な方法です」と述べている。

Millキッチンビンの仕組み

出典:Mill

まず、Millのメンバーシップに登録する。月会費33ドルには、Millキッチンビンと「Food Grounds」の集荷サービスが含まれている。Millキッチンビンは個別購入はできず、会員登録しないと使用できない仕組みとなる。

MillキッチンビンをWi-Fi接続し、Millアプリを起動して、生ゴミを投入する。投入された生ゴミは一晩で「Food Grounds」となる。キッチンビンが一杯になったらプリペイドボックスに「Food Grounds」を入れ、アプリで集荷依頼を行う。

「Food Grounds」は堆肥ではない。堆肥は微生物が生ごみを分解して生成されるもので、数週間から数ヵ月の時間を要する。これに対し、「Food Grounds」は「水、かさばり、匂い、汚さ(ick)のない、食品のままの状態」となる。

出典:Mill

Millは、生ごみを食品システムに戻すことで、1世帯あたり年間約0.5トンの温室効果ガス排出量を削減できると試算している(この試算には、キッチンビンの製造、エネルギー使用量、輸送が含まれる)。

Millの共同創業者兼社長のHarry Tannenbaum氏は、「埋立地の食品は、私たちが今日直面している最も解決可能な気候問題の1つです。Millでは、家庭で食べられないものを、より持続可能な飼料原料の恩恵を受ける農家と連携する道筋を構築しています」と述べている。

ワシントン州タコマ市との提携

出典:Mill

Millは、Nest Learning Thermostatや他のスマートホーム製品を構築したNestでともに働いていたRogers氏Tannenbaum氏が2020年に設立した。

先月には、アメリカ、ワシントン州タコマ市が地方自治体としては初めてMillを試験導入することを発表した。これにより、タコマ市の住民は優先的にMillメンバーシップを利用できるようになる。

タコマ市ではゴミ処理の有料化が実施されている。Millとの新しい試験プログラムにより、ゴミ削減につながる可能性がある。プレスリリースによると、ゴミ容器を小型化することで、住民はゴミ処理費用を月に最大25.6ドル節約できるという。

 

参考記事

Announcing Mill: A new way to outsmart waste.

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Mill

関連記事

  1. フードロスに取り組む米Apeel Sciencesが約274億円…
  2. 食品ロスに取り組むFlashfoodが約14.7億円を調達、アメ…
  3. 米Ovieが開発した冷蔵庫の食品を簡単に追跡できるスマートタグL…
  4. 農家に植物の「内なる声」を伝えるInnerPlantが約6.2億…
  5. 機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億240…
  6. イリノイ州が精密発酵の推進に向けて、iFAB Tech Hubに…
  7. グリラス、国産食用コオロギを使用したプロテインバー等をコンビニで…
  8. コーヒー副産物のアップサイクルに取り組むKaffe Bueno、…

おすすめ記事

マメ科植物の種子から植物性ホイップクリームを開発するANDFOODSが約4億円を調達

ニュージーランドのフードテック企業ANDFOODSは、マメ科植物の種子からアニマ…

GOOD Meatが培養肉生産に無血清培地を使用する認可をシンガポール当局から取得

米イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatは18日、培養肉生産に無血清培地…

精密発酵で着色料を開発するMichromaが約8.4億円を調達

精密発酵により持続可能な天然着色料を開発するMichromaは今月、シードラウン…

イスラエルのChickPがひよこ豆由来のビーガンマヨネーズを開発

イスラエルのChickPが、ひよこ豆を原料とした植物性マヨネーズを開発した。…

培養肉企業アレフ・ファームズが約116億円を調達、2022年に最初の商品の販売へ

細胞培養でステーキを開発するイスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズが、シリーズ…

Steakholder Foodsが台湾進出に向け、台湾の工業技術研究院と提携

独自の3Dプリンターで植物由来や細胞由来の代替肉・代替魚を開発するイスラエル企業…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/06 14:11時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/06 23:54時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/06 03:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/06 20:06時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/06 12:21時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(12/06 23:07時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP