このニュースのポイント
●屋内農業デバイスのiUNUが約7億円を調達
●個々の農作物の状態をリアルタイムでモニタリング
●生産性・収穫量のアップ、労働コストの削減に
屋内農業用デバイスを開発するiUNUがこのほどシリーズAで700万ドル(約7億円)を資金調達した。
シリーズAとは、プロダクトの方向性は大きく固まり、商品を利用してくれる顧客は増えてくる一方で、収益が会社を支えるにはまだ不十分な状態。
参考:『スタートアップ投資ガイドブック』
ラウンドは、S2G VenturesとCeres Partnersが主導した。
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農作物の成長状態をリアルタイムでモニタリングするLuna
iUNUはコンピュータービジョンとAIによる屋内農業用デバイスLunaを開発している。
ちなみに、社名は「You know(ユーノウ)」と読む。
カメラ、センサー、コンピュータービジョン、AIを活用したLunaが温室ハウス内のレールを移動することで、それぞれの作物の成長状態や成長率をリアルタイムでモニタリングする。
個々の作物の些細な変化も見逃さないので、農家は、作物を1つ1つチェックする必要がなくなる。
微細な変化をキャッチして農家に知らせることで、農家は事前の対応が可能となり、生産性・収穫量の向上、労働コストの削減につながる。
農業にAIによる自動診断を導入しようとする企業はたくさんあるが、iUNU のCTOであるMatt Kingによると、同社のアプローチは少し違うという。
農家が求めているのは、データを自動で収集し、より早くフィードバックしてくれる技術であって、自動で診断する技術ではない。
農家は長年の経験から意思決定に長けている。AIを補佐的に使うことで、農家に「何をすべきか」をではなく、「情報」を伝える。これにより、最適なタイミングで農家が意思決定できるようにすることがLunaの特徴だという。
iUNUのビジネスモデルは自身が農作物を栽培するのではなく、既存の農家がLunaを導入して自分たちの農作業を効率化できるよう、システムとなるLunaを販売している。
高まる屋内農業のニーズ
投資動向を見るかぎり、屋内農業は熱い。
今年10月以降だけみても、次の資金調達ニュースが報じられた。
- BrightFarmsは1億ドルを調達
- Plentyは1億ドルを調達
- Urban Oasisは1200万ドルを調達
- Gotham Greenは8700万ドルを調達
世界の人口は2019年の77億人から、21世紀末までに112億人に達すると予想されている。
人口の増加でさらに求められるのは、限られた資源を活用し、環境に悪影響とならない形で、すべての人に必要な食糧を生産することだ。
屋内農業は、単位面積あたりの収穫量が露地栽培に優り、天候の影響を受けにくい。地域社会に近いところに設置すれば、サプライチェーンの短縮につながり、輸送にかけるコストも抑えられる。
温室農業は、今の時代の食糧生産にマッチしているといえる。
こうした背景もあり、屋内農業は成長を続けているが、温室が拡大するにつれて、農家にとって悩みとなるのが、労働者の不足と労働コストの上昇だ。
人手を増やさずに生産性を高める技術が不可欠となる。
この悩みを解決してくれるのが、Lunaのような農業デバイスだ。
農業の生産性を高めるだけでなく、温室ハウスのスケールアップも可能にしてくれる。
iUNUは3年をかけ、大規模な商業温室に向けてLunaの開発・試験を実施してきた。
現在は、全米とカナダ2州に顧客を持つ。
iUNUは2013年設立で、本部をシアトルに置くスタートアップ。クランチベースによると、これまでに調達した資金は総額2400万ドル(約24億8千万円)になる。
参考記事
iUNU Raises $7M Series A for Computer Vision Approach to Indoor Growing
How Artificial Intelligence Can Help Close the Loop in Greenhouse Production
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アイキャッチ画像の出典:iUNU