3Dプリンター

イスラエルの培養肉企業MeaTechが世界で初めてNasdaq市場に上場

 

イスラエルの培養肉企業MeaTech(Nasdaq:MITC)がNasdaq市場に上場し、新規公開(IPO)により2200万ドル(約23億円)を調達した。

MeaTechは世界で最初にNasdaq市場に上場した培養肉企業となる。

MeaTechは3Dプリンティング技術を活用して培養肉を開発するイスラエル企業。

2018年に設立された同社は、分化した幹細胞、足場を積層させて「培養肉」と呼ばれる3次元構造を作成する独自のバイオ3Dプリンターを開発している。

イメージ 出典:MeaTech

2020年12月にはバイオ3Dプリンターによる10mmの牛脂の作製に成功していた。

同月にはベルギーの培養脂肪スタートアップPeace of Meatを買収。今回の資金で、他社の買収計画も含め、培養肉の商用化に向けた開発をさらに進める。

同社は2019年にテルアビブ証券取引所に上場し、世界で最初に上場した培養肉企業となっていたが、Nasdaq上場により、米国で上場した最初の培養肉企業となる。

3Dプリンティングのイメージ 出典:MeaTech

MeaTechはバイオリアクターで細胞を筋肉細胞、脂肪細胞へ分化させたものを独自の足場材料と合わせて「フードインク」とする。

次いで、バイオ3Dプリンターでフードインクを本物の肉構造のように積層させる。最後に、3Dプリントされた構造物をインキュベーターに設置して成熟させて組織を形成させる。

イメージ 出典:MeaTech

こうして、動物肉を生産するよりもはるかに短い時間で、本物の肉が生成される

現時点では同社は、自社ブランドの構築よりも、培養肉の工業的な量産を照準に据えている。

3Dプリンティングを組み合わせた培養肉製造プロセスで他社とライセンス契約を結び、他社が培養肉を作れるようサポートしたいと考えている。

CEOを務めるSharon Fima氏は3Dプリンター用の微小工学インクを開発するナノ・ディメンションの共同創業者であり、CTOを務めていた人物で、複雑なデスクトップ型の3Dプリンターを開発した経験を持つ。

工場のイメージ 出典:MeaTech

5年以内に培養肉が畜産肉と同等価格になるとみる見解もあれば、2030年までに畜産肉と同等価格になると予想する研究もあり、培養肉の大衆化にはさまざまな議論があるが、実現のタイムラインはおおむね10年以内と予想されている。

現在の食品が工場で効率的に生産されるように、培養肉も手法が確立されたのちは生産の場は実験室ではなく、工場になる。

従来の畜産肉と比較して、使用する土地、水ははるかに少なくすむほか、培養肉の生産では排出される温室効果ガスを92%減らせることが報告されている。

商品イメージ 出典:MeaTech

動物に与える飼料を栽培することも不要になるため、現在、家畜の飼育に使用されている農業用地の大部分を別の用途に使用できるようになる。

集約畜産や、感染症による大量の殺処分という現状を変える選択肢になり、培養肉がもたらすメリットは計り知れない。

2020年12月にはアメリカのイート・ジャストが世界に先駆けてシンガポールで培養肉の販売許可を取得した。

2021年になってから2ヵ月の間にすでに11社の培養肉企業が出資を受けており、今回のMea Techの上場ニュースは培養肉業界全体に追い風となるだろう。

 

参考記事

Israeli cultured meat co MeaTech raises $22m on Nasdaq

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:MeaTech

 

関連記事

  1. 中国の植物肉HEROTEINが米培養油脂Mission Barn…
  2. 米SCiFi Foodsが培養牛肉製品で初のLCAを実施、環境メ…
  3. SuperMeatの培養肉試食に特化したレストランがオープン|顧…
  4. 代替母乳のTurtleTree、カリフォルニアに研究施設開設を発…
  5. 培養肉企業アレフ・ファームズ、培養コラーゲン事業への参入を発表
  6. 精密発酵のImagindairy、シードラウンドの資金調達を約3…
  7. 食肉生産者を培養肉生産者に変えるドイツ企業Innocent Me…
  8. ビヨンドミートの新商品ソーセージ、10月から全米の食料品店で販売…

おすすめ記事

Wilkが細胞培養による乳脂肪を使用したヨーグルト開発に成功

細胞培養によりヒト、動物の乳成分を開発するイスラエル企業Wilk(ウィルク)は、…

まだ食べられる食品を定期宅配するImperfect Foodsが約99億円を調達

アメリカ農務省(USDA)によると、アメリカでは供給される食料の30-40%が廃…

Vowが絶滅マンモスのDNAから培養マンモスミートボールを作製

オーストラリアの培養肉企業Vowは、絶滅したケナガマンモスのタンパク質で作られた…

オーストラリアのAll G Foods、植物肉ブランドを切り離し、精密発酵乳タンパク質の開発に注力

精密発酵でラクトフェリン、カゼインを開発するオーストラリアのAll G Food…

モサミート、牛脂肪細胞を培養する無血清培地に関する論文を発表

オランダの培養肉企業モサミートは、ウシ胎児血清(FBS)を使用せずに脂肪を培養す…

東京大学、1125本を使用した中空糸バイオリアクターで厚みのある11gの培養鶏肉生成に成功

培養肉を開発する東京大学の竹内昌治教授らの研究グループは、内部が空洞になった中空…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/08 15:05時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/09 00:56時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(05/09 04:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(05/08 21:05時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(05/08 13:11時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(05/09 00:11時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP