代替プロテイン

植物の葉緑体を活用して成長因子を開発するBright Biotechが約4億円を調達

 

分子農業で培養肉用の成長因子を開発する英Bright Biotechはシードラウンドで320万ドル(約4億4300万円)を調達した。Bright Biotechは培養肉の生産コスト削減を目指して2019年に設立されたイギリスのスタートアップ企業であり、今回のラウンドは応募超過でクローズとなった。

このラウンドはドイツのベンチャーキャピタルFoodLabsが主導し、Big Idea VenturesCPT CapitalFoodHack syndicateなどが参加した。Bright Biotechは調達した資金で、研究開発を促進し、生産をスケールアップし、チームを拡大する。

植物で成長因子を開発するBright Biotechが約4億円を調達

出典:Bright Biotech

世界人口の増加と環境負荷の軽減のため、持続可能な代替タンパク質源として、動物を犠牲にしない培養肉の開発が国内外で進んでいる。

培養肉の生産において、成長因子は細胞の分化、成長および増殖を促進するために必要なタンパク質とされる。しかし、「成長因子1グラムあたり数百万ドル」の費用がかかり、「非常に低い濃度で使用されているにも関わらず、成長因子がコスト全体の最低55%を占めている」とBright Biotechは指摘する

同社によると、世界のタンパク質市場のわずか1%を代替するには、年間3トンのさまざまな成長因子を生産する必要がある。つまり、培養肉の大量生産を実現するうえで、成長因子のコストと供給量が障壁となっている。

2023年の上市を目指す

共同創業者兼CEOのMohammad El Hajj氏 出典:Bright Biotech

Bright Biotechは培養肉の最大のコスト要因である成長因子の価格を大幅に引き下げることで、2040年までに1160憶ドル規模のグローバル産業になる培養肉の工業化を促進できると考えている。

同社は植物の葉緑体を活用し、「最小限のコストで驚異的な収量の成長因子」を生産するという。同社によると、葉緑体発現は光駆動型で、持続可能であり、動物や微生物を介在しない。Bright Biotechの発現システムは安定しており、スケーラブルなものだという。公式サイトによると、1キログラムの葉で2-5グラムの収量となる

共同創業者兼CEOのMohammad El Hajj氏は、「私たちの技術は培養肉業界にとって非常にタイムリーなものであり、パートナーや投資家と協力して、2023年に超スケーラブルでサステナブルな技術による最初の製品を市場に投入できることを嬉しく思います」とコメントしている。

分子農業スタートアップによるタンパク質開発

出典:Bright Biotech

Bright Biotechは分子農業でタンパク質を開発するスタートアップのリストに加わった。

イスラエルのBioBetterは、タバコ植物を活用して培養肉用の成長因子を開発しており、9月にシリーズAラウンドで約14億円を調達した。BioBetterは同社技術によって、成長因子のコストを1グラムあたり1ドルに下げられる可能性があると主張している。

アイスランドのORF Geneticsは大麦由来の成長因子を開発しており、世界の主要な培養肉企業と協業している

成長因子のほかにも、植物で乳タンパク質を開発するPigmentumMiruku、キモシンやγリノレン酸、肉タンパク質を開発するMoolec Science、大豆でチーズを開発するNobell Foodsなど、さまざまな企業が登場している。

 

参考記事

Molecular farming start-up Bright Biotech raises $3.2 million to grow and scale

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Bright Biotech

 

関連記事

  1. ジャガイモで乳タンパク質を開発|イスラエルのFinally Fo…
  2. 米Algae Cooking Club、微細藻類由来の食用油を発…
  3. ひよこ豆由来のタンパク質を開発するInnovoProが約3億円を…
  4. 植物性卵・培養鶏肉を開発するイート・ジャストが新たに約219億円…
  5. 培養マグロを開発するWanda Fishが約10億円を調達
  6. オーストラリアのVowが約67億円を調達、来年始めにシンガポール…
  7. フードテックで注目|精密発酵セミナー開催のお知らせ
  8. イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが約184億円を調…

おすすめ記事

食料品店の救世主!食品廃棄を減らして売上を伸ばすShelf Engineが約44億円を調達

食料品店が直面する食品廃棄・在庫切れ問題を、AIを活用して解決するShelf E…

ジャガイモで卵白タンパク質を開発するPoLoPo、2026年の上市に向けて米国農務省(USDA)に申請

イスラエルの植物分子農業スタートアップPoLoPoは先月、遺伝子組み換えジャガイ…

分子農業スタートアップMiruku創業者に聞く「ベニバナによる乳製品生産の再構築」

植物を「ミニ工場」として特定成分を作る分子農業が注目されている。代替タン…

スイスの小売大手ミグロスがビーガンゆで卵を発売

スイスの小売大手ミグロスが植物性のゆで卵の発売を発表した。ミグロスの子会社ELS…

米サラダチェーンSweetgreenが自動レストランをオープン

アメリカのサラダ専門チェーンSweetgreenは今月10日、同社初の自動レスト…

植物食品のゲームチェンジ:Motif FoodWorksが植物性の伸びるチーズと霜降り肉技術の使用権を獲得

Motif FoodWorksは植物肉・植物チーズをより本物に近づける技術の独占…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/09 15:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/10 01:26時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/10 05:24時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/09 21:30時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/09 13:30時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/10 00:36時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP