カリフォルニアを拠点とするイート・ジャストが2億ドル(約219億円)という巨額の資金調達を実施した。今回の調達で、イート・ジャストの調達総額は6億5000万ドル(約712億円)となる。
鶏の代替食品に優先して取り組む米イート・ジャスト
イート・ジャストは、プラントベースの代替卵JUST Eggと、細胞培養による培養鶏肉GOOD Meatを開発するスタートアップ企業。
主力製品JUST Eggは、液体タイプと冷凍タイプの2種類で、緑豆を主成分とする。
同社の培養肉GOOD Meatは昨年シンガポールで販売許可を取得し、レストランで短期間販売された。
同社がほかの畜産食品よりも鶏由来の製品を優先するのには理由がある。
細胞農業により培養肉に取り組む企業の多くは、環境に最もダメージを与える牛肉に取り組んでいる。
しかし、畜産業による苦しみの大部分は鶏が味わっていると言われる。食用の鶏は、通常、動き回るのが難しい狭い場所に死ぬまで押し込められて飼育される。
さらに、生産期間短縮のため、鶏は体重を急速に増加させられており、慢性的な痛みを抱えている。
イート・ジャストは畜産動物の中でも鶏が最も苦しめられていると考え、ほかの肉よりも鶏肉に優先して取り組んでいる。
同社はプレスリリースで今回調達した資金を「草分けとなる商品」にあてるとしており、これは特に培養肉の開発を指していると予想される。
アメリカで不動の地位を築いたプラントベース卵ブランド
同社の代替卵はJUST Eggのブランドで、すでに2万箇所を超える小売、1000の飲食店で販売され、アメリカで代表的なプラントベース卵商品のポジションを獲得している。
これまでに1億個の卵に相当する植物性卵が販売され、今年1月には12オンス(約340mg)サイズの代替卵が記録的な小売売上を実現したとプレスリリースで発表している。
海外の小売・ファーストフードへも拡大
今年になってからは海外ニュースも続いている。
今月にはカナダのレストラン、ホテル、大学、企業食堂など外食産業や小売へ導入を発表したばかり。
プレスリリースの中で、今年はさらに拡大を展開し、「世界中の数百万箇所の」小売や飲食店に導入することを発表した。
1月には中国大手ファーストフードのDicosがJUST Eggをメニューに追加。大手ファーストフードが動物性食品を植物性食品に切り替える初の事例となった。
交換から2週間で、Dicosの切り替え商品の売上が昨年比約1.5倍になったことをCEOのジョシュ・テトリック氏がTwitterで言及している。
Dicos, one of China’s largest fast-food chains, replaced its conventional chicken egg patty with JUST Egg in breakfast sandwiches at 500+ locations.
TWO weeks after the swap, Dicos has reported a 54% increase in breakfast sandwich sales (vs last year). pic.twitter.com/X5oMWpKcGx
— Josh Tetrick (@joshtetrick) January 20, 2021
アメリカ国内ではスターバックスとPeet’sに代替卵製品が導入されている。
培養肉では世界初の快挙
もっとも注目すべき領域は、同社の培養肉開発だろう。
昨年の12月にイート・ジャストがシンガポールで世界に先駆けて培養鶏肉の販売許可を取得、培養鶏肉がレストラン1880で販売されたことは記憶に新しい。
培養肉の許認可取得も、レストランでの販売も、イート・ジャストが先陣を切る形となった。
プレスリリースの中で今後数年かけて、培養肉の生産コストを「劇的に削減」することに言及。
イート・ジャストによると、培養肉は2030年までに130億ドル市場になると予想される。同社は2030年までに畜産肉と同等価格にすることを目指すとともに、鶏肉以外の肉にも取り組む考えを明らかにしている。
今後予想される欧州進出
イート・ジャストはCNBCの取材に対し、今回の資金で製造規模の拡大、当局の承認が必要なほかの市場への進出を図ると回答している。
承認が必要な市場の1つは欧州であるのは間違いない。
欧州進出について昨年の時点では、製造、流通の準備はすでに完了しており、あとは当局の安全性承認だけだとされていた。
欧州ではヴィーガン人口が過去4年間で2倍に増えており、テトリック氏は欧州に米国以上の可能性を感じている。
EUの承認を得られ次第、ドイツ、イタリア、オランダなど西ヨーロッパで販売を開始することが予想される。
このほか、昨年にはシンガポールにアジア初となる生産工場の建設を発表。
これは北アメリカ、ドイツに次ぐ3つ目の生産工場となる予定で、2022年までの稼働を目指している。
イート・ジャストは2011年にサンフランシスコに設立されたフードテックのスタートアップ。元の社名はハンプトン・クリークだったが、のちに社名を変更した。
今回のラウンドはカタールの政府系ファンドQatar Investment Authorityが主導し、Charlesbank Capital Partners、Vulcan Capitalなどが参加した。
参考記事・書籍
Eat Just Closes $200M Funding Round
Eat Just Closes $200 Million in New Funding to Accelerate Growth
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Eat Just