代替プロテイン

カーギルがマイコプロテインの英ENOUGHと販売契約を締結

 

カーギルは今月、マイコプロテインを開発する英ENOUGHとの提携拡大を発表した。同時に、ENOUGHのシリーズCラウンドに出資し、同社マイコプロテインを使用、販売するための契約を締結したことを発表した。

提携拡大により、カーギルはENOUGHのマイコプロテイン「ABUNDA」を使用した栄養価の高い代替タンパク質製品をクライアント企業と共同開発していく。

(*)2033年までに累積100万トンのマイコプロテイン生産を目標にかかげるENOUGHにとって、カーギルとの提携拡大は世界各地での事業拡大の加速につながるものとなる。

(*)公開当初、2032年と誤表記しておりました。大変失礼いたしました。2024年6月12日修正済み。

カーギルで代替肉・乳製品部長を務めるBelgin Kose氏は、「カーギルがENOUGHとの提携を強化するのは、世界人口の増加に対応するために、より持続可能な方法で作られたより多くのタンパク質が必要とされているからです。マイコプロテインには肉のような食感、タンパク質プロファイル、拡張性、サステナビリティなど多くの利点があり、革新的な役割を持つ新素材です」と述べている。

カーギル、ユニリーバとの提携

出典:ENOUGH

ENOUGHは穀物由来の糖を菌類に供給し、ビール、ワインなどの自然な発酵プロセスでマイコプロテイン「ABUNDA」を生成している。菌類に与える主原料にはカーギルのグルコースシロップを使用し、発酵プロセスでは廃棄物は生じない。

AgFunderの報道によると、発酵で生じる廃液は、近接するカーギルのバイオエタノール施設に供給される。

ABUNDA」は植物由来肉よりもさらに資源効率が良い。大豆と比較して水の使用を29%、炭素排出量を53%削減できるほか、生産に必要な原料(飼料)も40%少ないという

カーギルとENOUGHはすでに多面的な提携を構築している。ENOUGHは2022年10月、オランダのサス・ファン・ゲントにあるカーギルの施設近くに15,000㎡の工場を建設した。この工場は初期では年間1万トンのマイコプロテイン生産能力となるが、5年以内に年産6万トンになる見込みとなる

出典:ENOUGH

ENOUGHはユニリーバとも提携している。2021年5月、ユニリーバの代替肉ブランド・ベジタリアンブッチャーに「ABUNDA」を使用するため二社は提携した

提携から2年以上たつが、ベジタリアンブッチャーの英公式サイトにはマイコプロテイン「ABUNDA」を使用した製品は確認できていないため、発売はまだのようだ。ENOUGHは過去には培養脂肪のPeace of Meatとも提携しているが、Peace of Meatは昨年4月に閉鎖されている

他社が「ABUNDA」を使用した製品を発売したというニュースも確認できていないため、商品開発のために企業向けの原料販売はしていると思われるが、「ABUNDA」を使用した製品が市場に流通するのはこれからだと思われる。

カーギルとの提携拡大により、「ABUNDA」を使用した代替肉製品がCrave Houseなどカーギルのブランドから発売されると、マイコプロテインによる代替タンパク質開発がさらに加速していくだろう。

 

参考記事

Cargill and ENOUGH expand partnership to provide consumers with innovative, sustainable protein options

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:ENOUGH/Cargill

 

関連記事

  1. 世界初!米Biomilqが細胞培養でヒトの母乳を体外で作製するこ…
  2. マイコプロテインを開発するフィンランド企業Eniferが約19億…
  3. Fooditiveが精密発酵カゼインの工業生産の実現性を実証、欧…
  4. 東大竹内研、脂肪を含む5.5cm×4cm×1.5cmの培養肉作製…
  5. 培養魚スタートアップのFinless Foodsが植物性マグロに…
  6. KFCがシンガポールで植物肉バーガーの販売を期間限定でスタート
  7. レタスを活用して乳タンパク質を開発するイスラエル企業Pigmen…
  8. 米イート・ジャスト、年内または2022年に30億ドルのIPOを目…

おすすめ記事

培養肉用の安価な食用足場を開発するエストニア企業Gelatex|事業開発部長Athanasios Garoufas氏にインタビュー

培養肉の生産では、生体内環境に似た状態を再現するために、細胞外マトリックス(EC…

植物性チキンナゲットのNowadaysが事業を停止

植物性チキンナゲットを製造販売する米Nowadaysが事業を停止したことが明らか…

Meweryが微細藻類を活用した最初の培養肉プロトタイプを発表

チェコの培養肉企業Meweryは、培養豚肉細胞と微細藻類をブレンドした培養肉のプ…

精密発酵:8ヵ月にわたる企業・政府動向の全記録【Foovo独自調査】

昨年にPerfect DayのB2Bシフトが報じられ、1月にはPerfect D…

植物細胞培養でカカオを開発するKokomodoが約1.1億円を調達

細胞培養カカオを開発するイスラエルのKokomodoが今月、イスラエル・イノベー…

植物性チーズを開発するスウェーデン企業Stockeld Dreamery、今年前半に初商品の発売へ

植物性チーズのシェアは大きくないが、代替チーズに取り組む企業は増えつつある。…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/22 13:54時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/22 23:25時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/22 03:09時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/22 19:49時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(10/22 12:07時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(10/22 22:46時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP