細胞農業に取り組むTurtleTree Scientificが、商用規模での細胞培養培地の開発でJSBiosciencesとの提携を発表した。
TurtleTree Scientificは培養母乳を開発するTurtleTree Labsの細胞農業部門として今年はじめに設立されたシンガポールのスタートアップ。
TurtleTree Scientificは培養肉の大量生産のハードルとされる増殖培地のコストダウンを目指している。今回の提携で、JSBiosciencesはTurtleTree Scientificに食品級の基礎培地と培地組成のサービスを提供する。

出典:TurtleTree Scientific
培養肉の商用化を阻む1つの要因が、生産コストとされる。
入手しやすく、低価格で、動物由来ではない増殖培地を使用できれば培養肉の生産コスト削減につながるが、多くの培養肉企業にとって、「手頃な増殖培地」は大きな課題となっている。
現在、培養肉業界全体では高コストで倫理的に問題のあるFBS(ウシ胎児血清)を使わない方向へのシフトが見られる。
培養肉のパイオニアであるモサミートは自社技術ですでに培地からFBSを除去することで生産コストを1/88に落とすことに成功しており、最初からFBSを含まない培地を使わない選択肢をとるテキサスのスタートアップ企業もいる。
こうした培養タンパク質を作るプレーヤーだけでなく、安価な培地を提供する側で最初からイノベーションに取り組む企業もいるが、そのほとんどが資金調達のフェーズにあり、商品化はまだ先という状況となる。
TurtleTree Scientificもその1社になろうとしているが、今回提携したJSBiosciencesは有望なパートナーとなりそうだ。
というのも、哺乳動物細胞用培地を大量生産している実績があるからだ。
プレスリリースによると、今回の提携により「低コストな上流工程」が確立された後、JSBiosciencesはTurtleTree Scientificがシンガポールでパイロット生産と商用生産を実現するのを支援する。
2社の提携は、TurtleTree Scientificのクライアントが、細胞農業の大量生産を実現するために完全な培地ソリューションを必要な価格で入手できるようになることを意味する。

出典:TurtleTree Labs
同社は今年になって、バイオテクノロジー企業Dyadic Internationalとの提携も発表している。
このパートナーシップでは、バイオリアクターで低コストかつ高収率で生産できる組換えタンパク質による成長因子の開発を目指している。
増殖培地に添加する成長因子は細胞の成長に欠かせないものだが、成長因子にかかる費用は培養肉全体の55-95%を占めるともいわれ、安価な成長因子が求められている。
培養肉への投資熱は高まる一方で、2020年には前年の6倍となる3億6000万ドルが培養肉企業に集中した。
先月には培養肉企業としては初めてイスラエルのMeaTechが米国上場を果たした。今年になってから3ヶ月ですでに14社が出資を受けている。
培養肉の大衆化まで5年とみる向きもあるが、TurtleTree Scientificなどによる培地、成長因子といった周辺技術の研究が加速していけば、そのタイムラインも現実味を帯びてくる。
参考記事
TurtleTree Scientific Partners With JSBiosciences to Develop Cell Culture Media at Commercial Scale
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アイキャッチ画像の出典:TurtleTree Scientific
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